ツマジロクサヨトウの蔓延防止の為の対策状況について(2019年~)

以前にもこのブログで取り上げた事があります問題害虫のツマジロクサヨトウについて、年度も変わりましたので、改めて2019年度からの対策状況についてレビューしていこうと思います。

以前書いたツマジロクサヨトウ関連の記事はこちらを参照下さい。



ツマジロクサヨトウの国内発生の経緯と発生状況について

ツマジロクサヨトウは2019年1月に中国で初確認され、6月には台湾、次いで韓国で発見されました。
この時点で農林水産省は国内の都道府県に対して注意喚起の通知を出しておりましたが、7月に鹿児島県の南九州市で発生が確認されました。

発生作物と被害地域の広がりを把握する為、各都道府県で発生調査を実施しましたが、これにより2019年の10月時現在で、20府県108市町村の飼料用トウモロコシ、スイートコーン、ソルガム、サトウキビ等で発生が確認されました。

全国の発生調査では、47都道府県11038圃場で調査が行われ、17県139圃場で発生が確認されています。

当初はツマジロクサヨトウは越冬しないだろうという見方をされていたようですが、今後も継続して飛来する事が考えられるのと、南西諸島など暖地では越冬する可能性も考えられる為、温暖化の問題もある昨今、今後も発生に対する注意と対応の検討が必要という状況です。

最新の情報は農林水産省のHPをご参照下さい。


ツマジロクサヨトウ蔓延防止のための植物防疫当局の対応について

植物防疫当局としての対応としては、発生状況の調査を行った後、その圃場での初動防除を行います。

発生に広がりがあれば、地域や品目を指定して追加的に防除を指導します。

しかしながら、ツマジロクサヨトウについては国内で初めて発生・確認された害虫である為、防除マニュアルが未確定という現状です。
今後の防除マニュアルの立案と対策が求められている状況となります。


植物防疫当局の追加的な防除を行う地域や品目についての内訳について

①畜産農家(飼料作物)について

原則としては殺虫剤の散布を行いますが、速やかに散布できない場合は刈取りといった対策を行います。
粗飼料確保緊急対策(Alic事業)で支援する形となります。


■殺虫剤散布を行う場合
・殺虫剤を購入
・散布機を購入
・散布作業を委託

■刈り取ってサイレージする場合
・発酵促進剤の購入
・飼料の分析

※サイレージ
サイレージ とは家畜用飼料の一種。
飼料作物をサイロなどで発酵させたもの。
青刈りした牧草を発酵させた物を指す。


②野菜等の耕種農家について

殺虫剤散布又は残渣処分で防除対応し、持続的に生産強化対策での支援を行います。
■殺虫剤散布を行う場合
・殺虫剤を購入
・散布作業を委託

■収穫した後の残渣を持ち出し処分
・残渣処理費用


これらの追加的な防除で発生密度を抑え、その間に防除マニュアルを確立し、普及させるといった対応施策をとっていますが、ツマジロクサヨトウについては防除マニュアルについては確率されていないのが現状です。



2019年8月時点の粗飼料確保緊急対策事業について

上記内容に準ずる内容となりますが、2019年8月時に粗飼料確保緊急対策事業として、以下のツマジロクサヨトウ被害の蔓延防止対策を行っています。

①ツマジロクサヨトウの防除作業支援

生産者集団等が、ツマジロクサヨトウの防除を行う際に必要な機械の導入や薬剤等の資材の購入、防除作業の委託費用の一部を支援。
※補助率2分の1以内

生産者集団などが防除した飼料作物の薬剤残留を確認する場合の分析費用を支援。
※補助率定額


②飼料作物の早期刈り取り対策支援

生産者集団等が、早期刈取りした飼料作物をサイレージにする際に、発酵促進剤等を共同購入により確保する場合に購入経費の一部を支援。
※補助率2分の1以内

生産者集団などが早期刈取りにより硝酸体窒素量を確認する必要がある場合の分析などの経費や飼料作物の撤去費用を支援。
※補助率定額

③代替粗飼料等の確保対策

生産者集団等が代替えとなる粗飼料および濃厚飼料を共同購入により確保する場合に、購入経費の一部を支援。
※補助率定額(5千円/t以内)


ツマジロクサヨトウの蔓延を防止する為、防除作業のかかわる経費や飼料作物の早期刈取りを行う際の発酵促進剤、飼料分析等の費用、防除する事で不足する粗飼料や濃厚飼料の代替え飼料の共同購入等への支援対策をとりました。



ツマジロクサヨトウの防除農薬について

農林水産省のHP上に「ツマジロクサヨトウに関する情報」がまとまっていますので、関心のある方はチェックしてみて下さい。

掲載されている内容は、農薬名称ではなく成分名称となっている物が多いです。
成分名で個別に検索をかけて下さい。

現在問題となっている作物が飼料用トウモロコシ、トウモロコシ、スイートコーン、ソルガム等のイネ科作物である為、これらの作物で使う事が出来て、大型チョウ目に登録のある農薬が防除の主軸となってくると思われます。

また、ツマジロクサヨトウは上記以外の作物を加害しないわけではありませんので、今後も被害が拡大しないかどうか、それぞれの生産現場においても注意が必用となります。

ツマジロクサヨトウは、とうもろこし、さとうきび、稲、豆類、いも類、野菜類といった広範囲な作物に被害を与える害虫です。

主食の好みはあるにせよ、ヨトウムシ類ですので、ツマジロクサヨトウが好む作物の近くにある農作物については被害が拡大しないよう注意する必要が有ります。

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各地域のツマジロクサヨトウに対する取組等について

2020年1月時、宮崎大学農学部のHP上にて、ツマジロクサヨトウの防除飼料生産マニュアルと対策ポスターが紹介されています。

このポスターは害虫の特徴が非常にわかりやすい内容になっていますので、関心がある方はチェックしてみて下さい。

宮崎大学農学部畜産草地化学科「ツマジロクサヨトウ対策ポスター」

こういった資料が手元にあると判別に役立つので良いですね。



まとめ

という事で、振り返りとなりますがツマジロクサヨトウについてのレビューでした。

鹿児島で発見され、半年も経たないうちにあっという間に関東圏にも侵入してしまったツマジロクサヨトウですが、今後の分布拡大、被害作物の影響、越冬有無等についても気になる所です。

正式な防除マニュアルは整っていない状況ですが、防除マニュアル案の検討や消費・安全対策交付金による都道府県・生産者団体等に対する支援策については検討が進められている状況です。
地域によっては既に取り組みが始まっています。

気になる方は農林水産省のHPや、被害地域のHP、普及センター等の情報をチェックして頂ければと思います。

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