とうもろこし用除草剤 ブルーシアフロアブルについてのレビュー

今回はとうもろこし用の除草剤(土壌処理型の除草剤ではなく茎葉処理型の除草剤)である石原バイオサイエンス㈱さんのブルーシアフロアブルについてレビューします。

ブルーシアフロアブルはトルピラレートという有効成分を10.4%含んだとうもろこし専用の除草剤です。
登録作物は2021年時点で「飼料用とうもろこし」と「とうもろこし」の2品目となります。

ブルーシアフロアブルは発売してからしばらくの間、飼料用とうもろこし専用の除草剤でした。

しかしながら、登録の拡大により未成熟とうもろこしでも使用できるようになりましたので、今回は食用のとうもろこし(未成熟とうもろこし)での使用レビューを記載してみます。

登録の内容や使い方についてはメーカーさんのHP等をよく確認して正しくお使い頂ければと思います。
メーカーさん製品HPはこちら



ブルーシアフロアブルの特徴について

ブルーシアフロアブルは茎葉処理型の除草剤です。

とうもろこしに高い選択性があり、基本的にはとうもろこしの株に頭からかかっても大丈夫という除草剤になります。

初めて使うとなると、生育期中のとうもろこしに頭から薬剤散布するという行為に対しては、かなり抵抗があると思います。


とうもろこしの除草剤というと、土壌処理型の除草剤が代表的ですね。

具体的には「ゲザノンゴールド」や「ゲザプリムフロアブル」等です。

これらは、は種後(種まき後)に処理する事で雑草を抑えます。
今出ている雑草を枯らすというよりは、これから生えてくる雑草を抑えたいという目的で使われている除草剤です。
どちらも非常に良い除草剤だと思います。

生産者の方によっては、フィールドスターP乳剤(とうもろこし出芽直前~2葉期までという登録(2021年時))を使われているかもしれません。


ブルーシアフロアブルについては、上記の薬剤とは異なるタイミングで使用する除草剤です。

2021年時の登録内容だと、とうもろこしの葉齢が3葉期~7葉期(投下薬量により葉齢が異なる)というタイミングで使用する除草剤となります。


殺草スペクトラムとしては、メヒシバやイヌビユ等の「一年生イネ科雑草」とイチビやイヌホオズキ等の「一年生広葉雑草」に効果を発揮します。

イネ科雑草と広葉雑草の両方に効果があるというのはかなり良い点だと思います。


ブルーシアフロアブルは、とうもろこしに高い選択性があるので直接薬剤がかかっても迅速に代謝・分解されます。

とうもろこしに対しての安全性はかなり高いです(一応、メーカーさんが試験確認している品種に限る)。

雑草に対する効果としては、いわゆる「白化作用」の効果がある為、日数経過とともに雑草が白く枯れ上がります。

効果の発現から枯殺までは、おおむね1~2週間くらいです。

プリグロックスLのように速効的に枯れるタイプの除草剤ではなく、じわじわと白化現象が起こり始め枯れていくといった感じの除草剤になります。



ブルーシアフロアブルを処理してみた様子①

5月の前半にゴールドラッシュに散布した様子です。

レタス後の作付けとなりますが、脇芽のレタスの他、色々な雑草が生えているタイミングです。

ブルーシアフロアブルを処理して2~3日経過してからの画像ですが、イネ科雑草はいくらか色が抜けてきているように見えますし、広葉も成長点付近の葉が同じように色抜けてきているような感じに見えます。

とうもろこしには薬害症状は見られず順調です。

Burūshia flowable shikenku1
Burūshia flowable shikenku1-1
↑雑草の色抜け、成長点の色抜け(少し黄緑色っぽい)が見られます。
Burūshia flowable shikenku1-2
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レタスも中止部分の葉先が少し黄緑色っぽく退色しているように見えます。


↑の画像から10日くらい経ってからの様子↓
rorokkusu musyoriku kosatu1
残っている草もありますが、枯れている草も目立ち処理前よりは畝間が綺麗になってきている印象です。
rorokkusu musyoriku kosatu1-1
草種により得意不得意がありそうですが、レタスを含め、最初の頃よりはかなり白化現象が進んでおり、どの雑草を見ても全体的にぐったいしている感じです。
小さい雑草はかなり枯れている状況でした。

この画像のタイミングだとスベリヒユは元気そうに見えますが、丸い葉っぱ部分を触るとポロポロと落ちる物も見られたのでそれなりに効いている様子。
ツルも心なしか痩せてきているように見えます。

レタスは効かないかな?と半信半疑な所もありましたが、かなり白化していて抑制がかかっていたので、もっと早いタイミングで処理できれば完全枯殺が狙えるかもしれません。
とうもろこしの成長スピードを考えると、ここまで効いていれば十分かなという感じもします。

2週間後くらいにはイネ科、広葉の類は完全に枯れましたので、遅効的ですが十分効果があるという印章です。



ブルーシアフロアブルを処理してみた様子②

同じく5月前半に処理した別の畑の様子。
レタス後の畑ではありませんがとうもろこしの品種は同じです。

こちらは処理して5日後くらいの様子です。
天気が良かった事もあるかもしれませんが、雑草の白化現象が進んでいるのがわかります。
Burūshia flowable shikenku2
Burūshia flowable shikenku2-1
とうもろこしの地際からはびこる広葉雑草もかなり退色が進んでいます。

こういう雑草を放置してしまうと、とうもろこしの成長に影響が出ますのでしっかり処理しておきたい所です。
作付面積が広い方は研修生等の作業項目になるのだと思いますが、人力で抜くとなると時間を要しますし時間・コストがもったいないですよね。

Burūshia flowable shikenku2-2

↑の画像から10日くらい経ってからの様子↓
rorokkusu musyoriku kosatu2
rorokkusu musyoriku kosatu2-1
rorokkusu musyoriku kosatu2-2
地際部分の雑草を含め白化現象が進んでいます。
経過観察を続けた所、白化している草は復活せずこのまま枯殺となりました。

一旦は手抜き作業等をしなくても良いくらいのレベルとなりますので、ブルーシアフロアブルを処理する事で時間を有効活用できると思います。


ブルーシアフロアブルを処理してみた様子③

画像は畝間に一般的な茎葉処理除草剤(根までは枯れない、かかったところだけ枯れる物)を処理した区画とブルーシアフロアブルを処理した区画になります。

先の画像と同じ様に処理してから10日くらい後の様子です。
Burūshia flowable shikenku3-2
とうもろこしを中心に画像左が茎葉処理除草剤の畝間処理。
右側がブルーシアフロアブルを処理した区画です。


根までは枯らさない茎葉処理除草剤区画↓
Burūshia flowable shikenku3
ブルーシアフロアブルと比較すると普通の茎葉処理除草剤の方は早く枯れますね。
畝間処理するのであれば根まで枯れないタイプの除草剤を使うのがお勧めです。
ラウンドアップのようなグリホサート系の除草剤(根まで枯れる物)は、ドリフトでの被害リスクが高い為、とうもろこしの畝間処理には向きません。


ブルーシアフロアブル区画↓
Burūshia flowable shikenku3-1
ブルーシアフロアブルは遅効性なので色抜け症状が見られますがこのタイミングでは完全枯殺とはなりません。
完全枯殺までは気象条件にもよるのかもしれませんが、やはり2週間くらいはかかる印象です。


経過を見ていて感じたのは、最初の画像を見てもらうとわかるように一般的な除草剤区画は散布ムラが出てしまうという事です。
どうしてもとうもころしにかからないようにしなければと思う分、地際付近は無防備になりがちです。
慣れない人や研修生に頼むような場合はリスクが怖いので勧めにくいというところもあるのではないでしょうか?

しっかり薬剤がかかっていない所は雑草が成長してくるので上の画像のように所々大きい雑草が目立ちます。
一方でブルーシアフロアブルの区画は、とうもろこしを気にせず除草処理をできるので、地際付近の雑草は少ない印象です。

茎葉処理除草剤で畝間処理すると、除草剤が当たった所の枯れるまでのスピードは速いのですが、根まで枯れているわけでは無いので次の雑草も早く出てきます。

メーカーさんの話だとブルーシアフロアブルの抑草作用は殆ど無く実用レベルとしては低いらしいのですが、こうやって比較してみるとブルーシアフロアブルの区画の方がもちが良いという感じも見られました。



ブルーシアフロアブルを使う際の注意点

使用上の注意点はメーカーさんのHPにも記載されていますが、雑草が大きすぎる場合は効果がブレます。

ブルーシアフロアブルは一般的な茎葉処理除草剤とは異なりますので、限界葉齢があります。
アカザの類やイネ科の類はかなり高葉齢でもイケる感じはありますが、得意不得意はありますので、基本的には雑草が高葉齢になる前に使用するのがお勧めです。

雑草にしっかりかからないと効果が出ませんので、雑草に均一に散布する事が必要です。

とうもろこしの木丈が有る場合は、ブームで頭から処理するよりは手振りで畝間に入って処理した方が薬剤がしっかり地面に落ちるので良いと思います。

また、散布後6時間以内の降雨は効果が低下するので天候に対する注意が必要です。
天候が続く時に使用するようにして下さい。


除草剤ですので、他の薬剤との混用はお勧めしません。
今回紹介している圃場は展着剤も使用していません。
混用したい薬剤によっては固まったり効力を落とす要因になります。
どうしてもという場合は個人の裁量で。
不安な所が有れば販売店さんやメーカーさんにお問い合わせ下さい。


最後にもう1つ、生産現場では起こり得る事だと思いますので、ここだけは注意して!という点を記載しておきます。

使用している時の注意点というよりは、使った後の注意点になります。

ブルーシアフロアブルは「除草剤」ですので、基本的には殺虫剤や殺菌剤を使うタンクや器具とは別にして使うようにして下さい。

ブルーシアフロアブルは、とうもろこしに対する安全性が非常に高いので、ついつい同じタンクで使用してしまいがちです。

ですが、かなりしっかり洗浄しないと他の作物に影響が出る場合が有ります。


例えば、ブルーシアフロアブルを使用した後にタンクや器具を洗浄せずにそのまま他の薬剤を投入し、とろうもころし防除を1~2回やった事でタンクを洗浄した事にしてしまうような人も居らっしゃるかもしれません。

ですが、それは洗浄ではありませんので、そのまま他の作物で使ってしまうと黄化や白化症状が起こる場合が有ります。
最悪の場合、他の作物が枯れてしまいます。

意外とブルーシアフロアブルはタンクや器具内に残っています。

除草剤ですので最低でも3回以上は洗浄した方が良いと思います。
あくまで個人的な感想なので、3回以上が正しいというわけではありません。
心配であれば二十日大根などでパッチテストを行った方が良いでしょう。

他の薬剤でも同様ですが、散布器具の劣化や破損を防ぐためにも使用した後は極力消毒器具は洗浄するようにして下さい。


まとめ

という事で今回はブルーシアフロアブルについてピックアップしてみました。

先に記載した通り、メーカーさんの話だとブルーシアフロアブルは土壌処理効果はあまり無いようなので、残効性という所についてはゲザノン剤等と比べるとかなり劣ります。

しかしながらゲザノン剤等の土壌処理型の除草剤は使える時期が限定的なので、実際に雑草に困るタイミングでは使用できません。

生育期中に使える除草剤だとラッソー乳剤がありますが、一年生イネ科雑草については生育期1~2葉期(イネ科雑草2葉期まで)・雑草茎葉散布又は全面土壌散布(ただし登録上の地域は北海道)という登録内容です(2021年時登録)。

対象雑草も限定的となりますので、作付地域やタイミングによってはちょっと使いにくいと思います。


現行の登録内容でのブルーシアフロアブルの使い方としては、抑草タイプの除草剤からの体系処理にお勧めな除草剤となりますが、上記のような抑草剤を使わない防除体系という所でも使える薬剤だと思いました。

畝間の除草作業をどれだけ行うかは生産者の方によっても異なるところだと思いますが、ブルーシアフロアブルを用いる事で1回か2回は途中の除草作業を省けるのではないかと思います(個人差有り)。

この点でもブルーシアフロアブルは使えるメリットが十分あると思います。


メーカーさんの情報としては、使えるとうもろこしの品種についても幅広いようです。
画像には有りませんが、ゴールドラッシュの他に恵ゴールド等の品種でも試してみましたが薬害症状は見られませんでした。
※使用可能品種の詳細は販売店さんやメーカーさんにお問い合わせ下さい。



ここからは余談です。
画像には有りませんが、試しに食い量のとうもろこしの約3葉期(3葉期未満も含む)と10葉期くらいの物に対して頭から処理してみましたが、どちらもとうもろこし自体には目立った薬害症状は見られませんでした。

3葉期未満のとうもろこしに対しては少し成長抑制がかかり木丈が短くなった感じがありましたが、葉焼けや生育不良といった薬害は見られず、収穫物も他の物と大差が無く甘みも乗っていたので、登録上このタイミングで使えればかなり使いやすくなると思います。

抑制具合についてはたまたま良い感じで行っただけかもしれません………
とうもろこしの葉齢や薬量を間違えると変わってくると思われます。


7葉期以降のとうもろこしについては、薬害というよりは登録上の残留の問題によるところだと思いますが、目立った薬害症状は無かったので今後の適用拡大に期待したい所です。

2021年時点の登録内容は3~7葉期までの登録内容となっていますので、3葉期未満のとうもろこしや7葉期より大きいとうもろこしに対しては登録外使用となります。
出荷を目的とする作物については、農薬の登録内容を守って正しく使うようにして下さい。




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“とうもろこし用除草剤 ブルーシアフロアブルについてのレビュー” への4件の返信

  1. こちらを拝読させて頂いて、トウモロコシの除草剤散布は畝間はプリグロツクスでトウモロコシ間や株元はブルーシアがオススメという事で宜しいでしょうか?また、ブルーシアは根までは枯れませんよね?

    • 向後様

      コメントありがとうございます。

      ご質問の件ですが、作物によって選択する除草剤が変わってきます。
      プリグロックスLの良い所は、根までは枯らせませんが、かかった部分だけを枯らすのに加え、枯らすスピードが早いという所です(温度条件に左右されない(日照があれば効果が十分出る))。

      同じく畝間で使われている除草剤としては、グリホシネート剤(バスタやザクサ等)があります。
      こちらはプリグロとは異なり温度条件等によって効果発現のスピードが変わってきます。

      どちらも根までは枯らさない除草剤となりますので、根まで枯らせる除草剤と比較すると、ドリフトしてしまった時のリスクが低減されます。

      ブルーシアフロアブルについては、とうもろこし・飼料用とうもろこしに選択制のある除草剤である為、とうもろこしの株の頭からブルーシアフロアブルを散布する事が出来ます。
      一応、メーカーで効果確認を行っている品種はOKという事になっておりますので、今後新しく出てくるような品種であったりメーカーが試験を行っていないような血筋の品種で使用される場合は一応注意して頂きたいと思います(心配な場合はメーカーサポートに問い合わせてからが良いでしょう)。

      とはいえ、一般的に作られているようなゴールドラッシュや味来(みらい)等の系統は私が見ている限り問題なく使える印象です。
      規模感にもよりますが、これまでは抑草剤としてゲザノン剤等を使い、その後に生えてきてしまった物はプリグロやバスタ等の茎葉処理除草剤を使うという方も多かったと思います。
      ただ、この畝間除草の際のドリフとで下葉や株元を痛めているケースもありました。
      傷めるリスクを懸念して地際までは十分雑草処理できていないという場合もあったかと思います。
      この点でブルーシアフロアブルはとうもろこしにかかってもOKという事で地際まで茎葉処理できます。

      使用葉齢未満のタイミングで使った場合は抑制作用が出てしまう場合は有りますが、登録幅で使う分には全く問題ない感じです。
      イネ科雑草やアカザ等、効果の発現が見やすいところも良いです。

      ブルーシアフロアブルは一年生雑草を得意とする除草剤になります。
      根までは枯れませんが、一年生雑草は株を枯らしてしまえば過度に再生する事は有りませんので雑草害(肥料食い)の対策として使うには十分実用性があると考えます。
      一方でスギナ等の地下茎の雑草や近年問題となっているオオアレチノギクの成長した株等については得意ではない印象です。

      土壌処理効果については殆どありません。ですがトウモロコシの畝間は、トウモロコシの株が伸びてくると陰になってきて草の成長も日向と比べて緩やかになりますので、ブルーシアを処理しておくと残効性が有るように見えたりします。

      畝間の状況によって対策を考える必要はあると思いますが、ブルーシア処理で一年生雑草はあらかた一掃できると思いますので、関心があれば一度使ってみては如何でしょうか?
      無マルチ栽培で作付けしているようであれば特にお勧めできると思います。
      効果は遅効的で白化するまで1~2週間の時間を要します。

      バスタやザクサ等のグリホシネート剤と比較すると、殺草のスピードはグリホシネート剤の方が早いですが、リッターコストで考えるとブルーシアは手が出しやすい茎葉処理除草剤だと思います。

    • >うんP様
      ご指摘の件、ありがとうございました。
      丁寧に拝読頂きましてありがとうございます。
      今後ともお気付きの点が有りましたらご指摘頂けますと幸いです。

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