春先に見られるネギの葉枯症状や斑点を伴う病害症状等の防除対策について。

春先から初夏に向かうような季節にネギ圃場を見ると、葉先が枯れていたり斑点症状やネギの外葉あたりがポキポキと折れているような株を目にすると思います。

葉枯症状については色々な要因があるので病気によるものかどうか判断が難しいですが、ポキポキと折れているような状態については、トンネルのビニールに当たって折れたのかな?なんて思いがちですね。

ですが、よく見てみるとこれらの症状も虫による食害か病気なのか、よくわからないような痕が付いていたりします。

ネギの表皮に斑点を伴うような症状が起こる病害はいくつか種類があり、症状が進んでいたりすると複数の病害が混ざってしまう事もある為、目視ではなかなか病害を特定しにくかったりします。

地域の農業普及センターや園芸研究所等に持ち込めば、菌の培養や電子顕微鏡等の利用で病害の特定ができるのではないか?と思いますが、そういった時間が取れない場合、ある程度病害虫を予測して予応急処置的な対策を打たなければなりません。

今回は、このようなネギの病害に幾つかスポットを当ててつつ、対策案を検討してみようと思います。


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ネギの葉枯病について

先に挙げたようにネギの葉枯症状は色々あるので一概に病害とは言えませんが、ここでは病害にスポットを当ててみようと思います。

葉枯病の類は葉先だけが枯れていると思われる方もいらっしゃると思いますが、葉先だけとは限りません。

ネギ葉枯病は、糸状菌(かび)によって発生します。

病源菌にはいくつかの種類が有ります。

Pleospora allii (プレオスポラ・アーリー)・不完全世代(分生子時代 Stemphylium vesicarium(ステムフィリウム・ベシカリウム))
Pleospora herbarum(プレオスポラ・ハーバルム)・不完全世代(Stemphylium herbarum(ステムフィリウム・ハーバルム))
Stemphylium botryosum(ステムフィリウム・ボトリオサム)

これらの菌による病気の特徴としては、葉先枯れ症状、葉身部に黒班病のような斑点病斑(黒斑病のような同心円輪紋症状とは異なる)、葉身部の黄色斑紋病斑に区別できるとされています。


病源菌は被害作物上で「偽の子のう核」を作り越冬する事ができ、分生子を作り飛散します(空気伝染します)。

発病しやすい条件としては、多雨・多湿の時期に発生しやすく、梅雨時期や秋雨時期といった長雨が続く時期に多発する傾向が有ります。

また、窒素過多による作付けや土壌pHが低い圃場での作付けも発生が助長される傾向にありますし、密植による風通しの悪さや肥料切れ等により草勢が衰えた株についても病害が発生しやすくなります。

病害の発生としては病原菌の単独感染もありますが、べと病やさび病の発生後の二次的感染として発生が見られる事が多い病害です。



ボトリチス属菌による葉枯症状。

葉枯病害の中でも圃場で確認する事が多い病害に「ボトリチス属菌による葉枯症状」があります。

ボトリチス属菌による代表的な病害としては、タマネギの主要病害である白斑葉枯という病害症状が有りますが、これらの葉枯症状は複数のボトリチス属菌が作物に寄生して色々な病徴を示す病害です。

関東に限らず北海道から九州といった広域で発生している病害で、白斑葉枯病と呼ばれたりボトリチス葉枯病と呼ばれたり、単純に葉枯病と呼ばれていたりもします。


ボトリチス属菌による葉枯症状は、ネギでも発生する病害です。

病斑は色々な症状が有り、ハモグリバエの成虫に刺されたような丸く凹んだ白い斑点症状や、斑点が繋がって広がったような症状、アザミウマに加害されたようなかすり状の症状や、短いすじ状の場合もあれば線上に繋がったような症状になる事も有ります。

病斑は拡大しない場合も有り、1~2mm程度の大きさで止まってしまっている物などもあり、初期の段階で病害かどうかを判別するのは難しいです。

一本ネギの場合は市場に出す際(製品にする際)に大抵は葉身部分(青葉部分)をカットしてしまうのであまり重要視されないかもしれませんが、葉ねぎや小ねぎ等、青葉の部分を含めて出荷するような場合は重要病害となります。


ボトリチス属菌には色々な種類が有り、たまねぎやネギ以外の作物の病害としては灰色かび病や腐敗病などの病害もあります。


タマネギやネギ等の代表的なボトリチス属菌は主に4種類と言われています。

具体的には、Botrytis cinerea(ボトリチス・シネリア菌)、 Botrytis squamosa(ボトリチス・スカモサー菌)、Botrytis byssoidea(ボトリチス・バイソイディア菌)、Botrytis allii(ボトリチス・アーリー菌)

※この中でシネリア菌とスカモー菌については幅広い野菜を加害する菌とされている。


ボトリチス属菌による病害の伝染方法としては、空気伝染のほかに被害部分に菌核を形成する事で広がっていきます。
密播・密植栽培、軟弱な生育状態だと多発して葉先枯れ症状を起こしたり、生育の後半になると斑点症状が出たりします。

菌の発育適温は5~6℃くらいの低温から30℃くらいと高温と幅広く、その中でも20℃~25℃くらいが好適温とされています。
伝染源となる胞子の形成温度は15℃前後くらいが好適温となります。

一本ネギの場合これらの病害症状は注目される事は少ないと思いますが、病源菌は菌核や胞子、菌糸などの状態で夏を越します。

病原菌は春先の降水日数や冬場から翌春にかけての気象条件(温暖で雨が多い)場合に発生が多くなり、被害も大きくなる事が多いです。


防除対策としては、主に以下のような対策方法が有ります。

●施肥管理に注意する(肥料切れ等による草勢の衰えは発病を助長するので、定期的な追肥を行う必要があります)。
●雨除け対策を行う(降雨による影響を受けやすい為)。
●適用のある農薬で防除を行う。

この病害は降雨による影響を受けやすい病害ですので、雨よけができれば発生が軽減しますが、露地栽培の場合はなかなか難しいと思いますので、対応できる薬剤での定期的な防除が必要です。



ネギ小菌核腐敗病もボトリチス属菌病害。

ネギの小菌核腐敗病は黒腐菌核病と同じくらいメジャーな病害だと思いますが、この小菌核腐敗病も実はボトリチス属菌による病害です。

ネギ小菌核腐敗病の病源菌は、前述したBotrytis squamosa(ボトリチス・スカモサー菌)。

葉身部分(青葉部分)には白色の小斑点が発生したり、発病初期の内は葉鞘(土の中の白身の部分)の表面に淡褐色の小斑点が生じ、被害が拡大していくと外葉から腐敗していきます。

最初の感染経路は土壌中にある菌核で、地表面で発芽し分生子を作って広がります。
他にも被害作物上で成長した菌糸から分生子が作られて広がったり、菌核から直接菌糸が伸びてネギを侵す事もあります。

葉身部分(青葉部分)の斑点症状や土中部分の腐敗や菌核症状が代表的な病害です。

気温が10℃~15℃くらいの涼しい時期に雨が続いたりすると発生が多くなる傾向があるので、予防的な薬剤散布はもちろんの事、特に降雨後の薬剤防除が重要となります。


防除対策としては、主に以下のような対策方法が有ります。

●連作を避ける事。
●被害残渣は極力圃場内に残さない事。
●発生してしまった圃場は土壌消毒を行、未熟な有機物肥料等の投入を避ける事。
●耐病性品種を作付けする事。
●軟弱な生育状況にならないよう施肥管理に注意する事(多肥栽培を避ける)。
●発生してしまった葉や株を速やかに除去し圃場外で処分する。
●適用のある農薬で防除を行う(展着剤を活用し株元にしっかり薬液が付着するように散布、株元処理を行ってから土寄せする)。
●降雨後には速やかに薬剤処理を行う。



小菌核病という病害もある。

一本ネギの場合、小菌核腐敗病の方が代表的だと思いますが、ネギやタマネギを侵す病害として「小菌核病」という病害もあります。

病源菌は糸状菌(かび)によるもので、ciborinia allii(シボリニア・アーリー)


ネギの病害症状としては、葉の先端部分や外葉の真ん中あたりから発病症状が見られ、斑点症状が現れます。

病斑は急速に拡大してつながり、不鮮明な縦長の病斑になります。

更に症状が進んで病斑が葉の全体に広がってしまうと、病斑から上位の部分は黄白色から灰白色となって枯れあがり折れてしまいます。
枯死していなくても降雨が多いと被害部の内側に白色の綿毛状の菌糸が発生します。

感染した葉や葉鞘組織には黒色の小菌核が発生し、この菌核は被害組織から剥落しにくいといった特徴があります。

病原菌の発育適温は5℃~30℃くらいと幅広いですが、最適温度は25℃くらいとされています。


被害残渣等に作られた菌核は、春と秋に子のう盤を形成し胞子を飛散させて感染していきます。
子のう盤は15℃前後の気温で雨が多いと胞子を飛散させます(多発する)。

逆に高温時で雨が少ない乾燥状況下では発生しにくい病害です。


防除対策としては、主に以下のような対策方法が有ります。

●同じ圃場での連作を避ける。
●収穫後の残渣は極力圃場内に残さない。
●発生してしまった圃場は緑肥作物等を導入する。
●老化苗は発病を助長する為、軟弱に育てない。
●苗に病害が発生した場合は速やかに処分する。
●適切な施肥管理を行う(多肥栽培を避け、追肥は少なく回数を多くする)。
●土寄せに注意する(断根はネギの抵抗力が低下する為、できるだけ1回の土寄せ量を少なくし、回数を増やす)。
●発病株は速やかに除去し、圃場外で処分する。
●発生圃場ではできるだけ早く出荷し取り遅れを避ける。
●対応できる薬剤を用いて定期的なローテーション散布を行う。



ネギ小菌核病の具体的な被害としては、成長力の高い新葉部分ではなく外葉に現れる事が多いです。
他の病害対策を含めた通常のローテーション防除を行っていれば、大きな被害になる事は少ない病害ですので、上記の対策を含めて対応して下さい。



圃場の被害状況を見て病害を検討する。

さて、ここからは一例になりますが、この時期の圃場でよく見られるネギの状況を見て病害を検討してみようと思います。

冒頭記載しました通り、何の病害かを確定をするのが困難な場合、とりあえず何かしらの対策を検討しなければなりません。
圃場のネギの様子を見て、ある程度予測した中で薬剤を選択し被害の拡大を防ぎます。


下の画像は4月頃のトンネルを外してからのネギの状態です。
赤矢印部分等を見るとわかる通り、葉先枯れや外葉の折れ等の症状が見られます。
ネギの折れている部分はトンネルに当たって折れる事もありますが、必ずしもそれとは限りませんので、しっかりと観察する事が必要です。


ネギアザミウマの被害と思われるかすり状の被害痕も見られますが、外葉の中心辺りから折れ曲がり斑紋が見られる葉も混ざっていたりします。


虫による加害痕の影響でポッキリと折れてしまうような場合も有りますが、目立った害虫が見られない場合は病害を疑います。

他の葉を見てみると白い小斑点が発生しているような株もあったりします。


これら3点の画像から予測できる事としては、発生している時期や温度等を考慮して、葉枯病(ボトリチス属菌を含む)、小菌核腐敗病または小菌核病あたりが疑わしいと判断します。


同じ圃場の中にはべと病も確認できました。
5月頃になってくるとべと病等の発生も出てきますので、薬剤防除を検討する必要が出てきます。
べと病については別記事でも紹介していますので関心があればこちらへ。

天候等の影響も有るかもしれませんが、土寄せにより根が傷むと作物抵抗力が落ちますので、べと病等の発生も見られる場合が有ります。
土寄せ後はケイ酸資材や発根剤等の活用もお勧めです。



予測した病害に対して薬剤防除する。

こちらでは、先に挙げた病害に対しての薬剤をピックアップしておきます。

登録薬剤は2021年現在の内容となります。
農薬の登録内容は変わる場合が有りますので、ご利用になる場合は最新の登録内容を確認するようにして下さい。( )内の効果は薬剤スペックの目安です。
治療となっていても病斑部分を治す訳ではありません。
病害の侵攻を阻害させるような作用のあるものを治療としています。
基本的には予防を主体とした防除が重要となりますので、病斑が見られる前からローテーション防除を行うようにして下さい。

FRACとは、農薬の薬剤系統を簡略化したような分類コードとなっています。
このコードが連用されないよう薬剤防除を行うと薬剤抵抗性回避にもつながりますので上手に活用して下さい。


■ネギ葉枯病 登録薬剤

●アフェットフロアブル FRAC:7(予防+治療)
●アミスター20FL FRAC:11(予防+治療)
●アミスターオプティフロアブル FRAC:11・M05(予防+治療)
●ジオゼット水和剤 FRAC:19(予防+治療)
●ダコニール1000  FRAC:M05(予防主体)
●テーク水和剤 FRAC:F3・M03(予防+治療)
●パレード20FL FRAC:7(予防+治療)
●ファンタジスタ顆粒水和剤 FRAC:11(予防+治療)
●プロポーズ顆粒水和剤(JA商品) FRAC:40・M05(予防+治療)
●ベジセイバー FRAC:7・M05(予防+治療)
●ベルクート水和剤 FRAC:M07(予防+治療)
●メジャーフロアブル FRAC:7(予防+治療)
●ロブラール水和剤(ボトリチス葉枯病登録)FRAC:2(予防+治療)


■ネギ小菌核腐敗病 登録薬剤

●アフェットフロアブル
●アミスターオプティフロアブル
●スミレックス水和剤 FRAC:2(予防+治療)
●セイビアフロアブル20 FRAC:12(予防主体)
●ダコニール1000
●トップジンM水和剤 FRAC:1(予防+治療)
●パレード20FL
●ファンタジスタ顆粒水和剤
●フルピカフロアブル FRAC:9(予防主体)
●フロンサイド粉剤 FRAC:29(予防主体)
●ベジセイバー
●ベンレート水和剤 FRAC:1(予防+治療)
●モンガリット粒剤 FRAC:3(予防+治療)
●ロブラール水和剤

■ネギべと病 登録薬剤

●アミスター20FL
●アミスターオプティフロアブル
●アリエッティ水和剤 FRAC:P07(予防+治療)
●オキシラン水和剤 FRAC:M04・M01(予防主体)
●オロンディスウルトラSC FRAC:49・40(予防+治療)
●カーニバル水和剤(JA商品)FRAC:40・M05(予防+治療)
●カンパネラ水和剤(JA商品)FRAC:40・M03(予防+治療)
●ザンプロDMフロアブル FRAC:45・40(予防+治療)
●シグナムWDG FRAC:11・7(予防+治療)
●ジマンダイセン水和剤 FRAC:M03(予防主体)
●ダイナモ顆粒水和剤 FRAC:21・27(予防+治療)
●ダコニール1000
●テーク水和剤
●ドーシャスフロアブル FRAC:21・M05(予防+治療)
●ピシロックフロアブル FRAC:U17(予防主体)
●フェスティバルM水和剤(JA商品)FRAC:40・M03(予防+治療)
●フェスティバル水和剤(JA商品)FRAC:40(予防+治療)
●フォリオゴールド FRAC:4・M05(予防+治療)
●プロポーズ顆粒水和剤(JA商品)
●ベジセイバー
●ベトファイター顆粒水和剤 FRAC:27・40(予防+治療)
●ベネセット水和剤 FRAC:40・M03(予防+治療)
●メジャーフロアブル
●ユニフォーム粒剤 FRAC:11・4(予防+治療)
●ヨネポン水和剤 FRAC:M01(予防主体)
●ランマンフロアブル FRAC:21(予防+治療)
●リドミルゴールドMZ FRAC:M03・4(予防+治療)
●レーバスフロアブル FRAC:40(予防主体)



2021年現在だと、タマネギの場合は小菌核病の登録薬剤が有りますが、ネギの場合は小菌核病の登録薬剤が有りません。

こちらについては、アフェットフロアブル、カナメフロアブル、シグナムWDG、スミレックス水和剤、セイビアフロアブル20、トップジンM水和剤、パレード20フロアブル、ファンタジスタ顆粒水和剤、ベジセイバー、ベルクート水和剤、ポリオキシンAL水和剤、メジャーフロアブル等の薬剤でカバーする事ができます。


野菜類登録薬剤の銅剤関係(Zボルドー、クプロシールド)なども上手に活用しましょう。



まとめ

という事で今回は春先のネギ圃場で見られる症状にスポットを当てて対策を検討してみました。

画像は関東某所の4月頃の圃場の様子を撮ったものです。

その年の気象条件や地域等によっても病害の発生状況は変わってくると思いますが、参考例として見て頂ければ幸いです。

5月以降はべと病やさび病、温度条件が進んでくれば細菌性病害を含めた他の病害の発生も増えていきます。


被害をしっかり特定したいという場合には、普及所や園芸研究所等に相談してみて下さい。
あるいは種苗メーカーに問い合わせるといった事も有効だと思います。

多くの場合は病害が見えてからのレスキュー散布をするような場面が多いかと思いますが、基本的には予防主体(病害を出さないようにする薬剤散布)が大切です。


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