緑化用ディプテレックス乳剤が生産・販売終了。ケムシ類対策の代替として使える農薬についてまとめてみます。

2021年3月をもって、緑化用ディプテレックス乳剤が廃盤となりました。

廃盤の理由としては、緑化用ディプテレックス乳剤の原体(農薬に含まれる有効成分)を委託している中国の工場において、近年の中国政府による化学工場への環境規制強化に伴い製造中止を余儀なくされた事が理由となっています。

メーカー側としては代替供給先の探索や事業継続の検討をしたそうですが、ディプテレックス乳剤の原体製造の見通しが立たなかった為、廃盤する事になったようです。


今回は、改めてディプテレックス乳剤がどんな農薬なのか?という点についての紹介と、全く同じ成分の農薬は無いので、代替品として使えるであろう農薬をいくつかピックアップしてみようと思います。

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緑化用ディプテレックス乳剤について

緑化用ディプテレックス乳剤は、IRACグループ:1(B)に分類されます。
農薬の薬剤系統としては、有機リン系の殺虫剤です。

緑化用ディプテレックス乳剤の有効成分はDEP(トリクロルホン)で50%を含有しています。

緑化用ディプテレックス乳剤は、元々は緑化用ではなく園芸用殺虫剤として販売していた時期もありました。

蚕やミツバチ、有用昆虫に対して影響がある原体ではありますが、殺虫スペクトラムは幅広く、扱いやすい価格帯で使い勝手の良い薬剤でした。
ちなみに当時のディプテレックス乳剤のDEP含有量は緑化用と同等になります。
旧ディプテレックス乳剤も含め、本来は登録外使用でNGとなりますが、魚類のイカリムシ病対策にも用いられていたりします…

ディプテレックス乳剤は、元々はバイエル社が製造した農薬になりますが、現在はUPLジャパン㈱に権限譲渡されています。

製品の特長としては、浸透移行性があり、接触毒、食毒、ガス毒の諸作用で広範囲の害虫を防除できる薬剤ですが、特にチョウ目等に卓効を示す殺虫剤です。

緑化用になってからは、樹木類のケムシ類対策剤等としてよく用いられている農薬です。



緑化用ディプテレックス乳剤の登録内容について

サンケイ化学さんのホームページでも確認できますが、一応以下に抜粋・紹介しておきます。

↓↓↓2021年3月時点の緑化用ディプテレックス乳剤の登録内容↓↓↓

使用上の注意事項については以下のような記載となっています。

●使用量にあわせ薬液を調製し、使い切ってください。
●石灰硫黄合剤、ボルドー液等アルカリ性薬剤との混用はしないでください。
●芝のスジキリヨトウ防除に使用する場合は、本剤の所定希釈液を1㎡当り1〜1.5ℓ芝の上からじょうろ等により全面 に潅注してください。
●桑の害虫に対する散布の場合、老令幼虫に対しては効果が不十分な場合もあるので、若令幼虫を主体に使用してくださ い。なお、養蚕地帯、稚蚕飼育場等の周辺では飼育期間中の使用は避けてください。
●自動車に散布液がかかると変色するおそれがあるので、散布液がかからないように注意してください。
●かぶれやすい体質の人は取扱いに十分注意してください。
●適用作物群に属する作物又はその新品種に本剤をはじめて使用する場合は、使用者の責任において事前に薬害の有無 を十分確認してから使用してください。なお、病害虫防除所等関係機関の指導を受けてください。
●蚕に対して影響があるので、桑に使用後14日間は蚕に桑葉を給餌しないでください。
●ミツバチに対して影響があるので、以下のことに注意してください。
①ミツバチの巣箱及びその周辺に飛散するおそれがある場合には使用しないでください。
②養蜂が行われている地区では都道府県の畜産部局と連絡する等、周辺への飛散に注意し、ミツバチの危害防止に努 めてください。
●本剤は眼に対して刺激性があるので、薬液調製時には保護眼鏡を着用して薬剤が眼に入らないように注意してくださ い。眼に入った場合には直ちに水洗し、眼科医の手当を受けてください。



緑化用ディプテレックス乳剤の代替はあるのか?

さて、ここからは緑化用ディプテレックス乳剤がの需要が高い「樹木類登録のケムシ類」にスポットを当てて、他の登録薬剤について見てみようと思います。

最初に記載しておきますが、ディプテレックス乳剤と全く同等の代替品は有りません。

理由としては主成分や登録内容が異なる為です。
しかしながら、物によっては十分代用できる農薬も有ります。

緑化ディプテレックスの剤型は「乳剤」ですので、今回は希釈散布できるような剤型(水和剤や乳剤、フロアブル剤等)の農薬を中心にピックアップしてみようと思います。

農薬の登録内容は不定期に登録の抹消や変更が起こり得ますので、以下の内容は2021年4月時点の内容となります。
希釈倍数や水量等の詳細については別途メーカーHP等をご参照下さい。


各農薬は登録作物に対して個別に注意点等が明記されている場合がありますので、お使いになる際は事前に使用倍率や使い方、注意点等についてご参照頂ければと思います。


画像左側の青色の網掛け部分は、緑化用ディプテレックス乳剤の登録作物(植物)です。
これをベースとして、右に掲げるピンクの網掛け部分の薬剤がどのような登録内容を持っているか?という早見表になります。

アクセルフロアブルの登録内容は、さくらを除く樹木類に対しての登録内容となっており、ケムシ類については発生初期の登録となっています。

ちなみに「さくら」については別途登録となっていますが、ケムシ類についての登録は同じく発生初期です。

アクセルフロアブルは近年問題となっている特定外来生物の「クビアカツヤカミキリ」にも登録が拡大しており、クビアカツヤカミキリ対策としてはマストな1剤となっています。

アタブロンSCはIGR系統の殺虫剤で、チョウ目幼虫の脱皮を阻害する作用があります。
ケムシ類に対してはアクセルフロアブルと同じく発生初期の登録内容となっています。
脱皮阻害効果という事もあり、遅効的な薬剤です。
ハマキムシ類との同時防除ができる薬剤となっています。

アディオン乳剤についても発生初期の登録内容となっています。
ピレスロイド系の農薬という事もあり、微小害虫からカメムシ、チョウ目害虫と幅広い殺虫スペクトラムを持っています。
殺虫効果としては接触毒作用もあり速効的です。
発生している害虫の種類によってはピレスロイド系薬剤の選択も有りでしょう。


アルバリン顆粒水溶剤はネオニコチノイド系の殺虫剤で浸透移行性のある薬剤です。
つつじ類やつばき類は別途登録となっていますが、ケムシ類に対しては発生初期の登録内容となっています。
スペクトラムとしては微小害虫やカメムシ類等にも効果がある為、発生状況によってはピレスロイド系薬剤と同じ様に使い勝手の良い薬剤です。

エスマルクDFはBT剤でチョウ目幼虫を主体とした登録内容となっていますが、こちらについても発生初期の登録となっています。

ウッドスターは散布薬剤では無く樹幹注入農薬となりますが、主成分はアルバリンの成分(ジノテフラン8.0%)です。
登録上は「幼虫発生前~発生初期但し新葉展開後」の登録となっています。
樹幹に注入しておく事でチョウ目幼虫等の対策を行う薬剤です。

別登録の「さくら」については、アクセルフロアブルと同様、クビアカツヤカミキリの登録も持っており、「新葉展開後~落葉前まで」という登録内容になっています。
こちらの薬剤もクビアカツヤカミキリ防除としてはマストな1剤となっています。


カルホス乳剤は有機リン系の殺虫剤で、JAのスプラサイド剤と同じく春のカイガラムシ防除等に用いられる事も多い薬剤ですが、アメリカシロヒトリ等にも効果が有ります。
幅広い殺虫スペクトラムがあり、接触毒と食毒両方の作用が有ります。
吸収移行性は有りませんので、しっかり薬剤散布する事が重要です。

サブリナフロアブルはBT剤で「フロアブル製剤」といった特徴のある農薬ですが、登録内容については他の薬剤と同じく発生初期登録となっています。

スピノエース顆粒水和剤の登録についても発生初期となっています。
食毒が主体となりますが、接触毒作用もあります。


スプラサイドはJA専門の農薬で一般小売店等での購入はできません。
ケムシ類に対する登録内容は発生初期となっていますが、カルホス同様、春のカイガラムシ対策等で使われる事が多い薬剤です。

スミチオン乳剤は有機リン系の殺虫剤です。
接触毒と食毒の両方の作用があります。
スペクトラムの広さとコスト等を考えると、スミチオン辺りが一番代替品として用いられるのではないかな?と思います。

ゼンターリ顆粒水和剤はBT剤。
登録内容は発生初期となっています。


ダイアジノン水和剤34については、スプラサイドやスミチオン等と同じく有機リン系の殺虫剤です。
登録はケムシ類ではなく、アメリカシロヒトリの登録です。

ディアナSCについては、樹木類の「ハマキムシ類登録」となっており、他の登録作物を含め、ケムシ類登録薬剤ではありません。
ディアナSCはスピノエースと同じ薬剤系統となっています。

薬剤の一般的な効果としては、アザミウマやハモグリバエ等の微小害虫にも効果が有りつつ、チョウ目幼虫に対しても効果が有ります。
チョウ目幼虫に対しては速やかな摂食阻害作用が有る為、食害の侵攻を止める事も期待できる薬剤です。
通常は畑場面で使われる事が多い薬剤です。

デミリン水和剤については、IGR系統の脱皮阻害剤です。
樹木類の登録内容は、ケムシ類(若~中齢幼虫)となっています。
IGR系統の薬剤は、効能を充分発揮させる為にも、基本的には発生初期までの内に使用する事が望ましいです。


テルスター水和剤はピレスロイド系の殺虫剤です。
ケムシ類登録が有り、発生初期登録となっています。

トレボン乳剤・EWについても同様にピレスロイド系の殺虫剤です。
トレボン剤は適用作物や害虫の幅が広く、速効的なノックダウン作用があります。
各種の樹木に対して安全性が高いという特長も有ります。


トレボンMCは、トレボンの成分をマイクロカプセル化した物になります。
コストは少しかかりますが、マイクロカプセル化した事で、初期効力や残効性が向上するというメリットが有ります。
ケムシ類に対しては他の製剤と同じく発生初期です。

マツグリーン液剤2は、ネオニコチノイド系の殺虫剤で、用途としてはマツノマダラカミキリ対策として使われる事が多い薬剤です。
マツノマダラカミキリの成虫の他、各種の害虫も同時防除するような殺虫剤となっています。
浸達性があり耐雨性の高い殺虫剤です。
樹木類の登録害虫に対しては発生初期の登録となっています。

マトリックフロアブルはIGR系統の薬剤ですが、脱皮の阻害ではなく促進させる作用と、食害を阻害する作用(摂食阻害)を持った殺虫剤です。
同じく発生初期登録となっています。


モスピラン顆粒水溶剤はネオニコチノイド系の殺虫剤です。
速効性と強い浸透移行性を併せ持っています。
樹木類の登録害虫は「まつ、やなぎ、さくらを除く」となっており、グンバイムシ類の登録のみとなっていますが、りんごの登録内容にケムシ類が含まれています。

りんご・うめ・おうとう・さくら・すもも・もも・小粒核果類(うめ、すももを除く)においては、クビアカツヤカミキリの登録も持っています。

ディプテレックス乳剤と登録内容は異なりますが、「まつ」の登録や、「食用カーネーション」といった登録も持った殺虫剤です。


ヨーバルフロアブルはジアミド系の殺虫剤です。
ケムシ類に対する登録内容は発生初期となっています。
多くの作物で使える事ができる殺虫剤で使い勝手の良い殺虫剤です。
畑作物を主体としたヨーバルフロアブルについての別記事はこちらをご参照下さい。

ロックオンは、ヨーバルフロアブルと同じくジアミド系の殺虫剤になります。
有効主成分はフェニックス顆粒水和剤と同じフルベンジアミドです。
ケムシ類に対する登録内容は発生初期となっています。

フェニックス顆粒水和剤に含まれるフルベンジアミドの成分量は20.0%。
フェニックス顆粒水和剤には樹木類登録は有りませんが、大抵の作物が2000~4000倍の登録内容となっています。
一方でロックオンフロアブルの有効成分量は5.0%。
成分量が薄いなと思われるところですが、登録内容は1000倍希釈となっています。

ロックオンフロアブルの特徴としては、樹木のケムシ類害虫に対して食害活動を停止させる効果が有り、気象条件や害虫の発生状況、密度で効果期間は変動するものの、樹木のチョウ目害虫に対して散布後最大で約3カ月の効果が期待できるとされています。
臭いがほとんど無いのも特徴となっており、造園屋さん等が使うのにも向いている薬剤です。

同じメーカーさんの商品で、芝や樹木対策として「スティンガーフロアブル」という商品も扱われていますが、樹木類のケムシ類対策としては、ロックオンが代替品として普及されています。
ロックオンの詳細はメーカーさんのHP(製品ページ)でご確認下さい。

残効についてはメーカーさんが言うほどあるものなのか?
実際にそこまでの効果があるのかわかりかねる所ですが、個人的には以前庭木にフェニックス顆粒水和剤を散布した事が有りまして、かなりの数の毛虫がボトボトと落ちるのを確認した事があります。
フェニックス(フルベンジアミド)剤はケムシにも良く効く!という印章が有ります。

ディプテレックス乳剤をケムシ類対策農薬として見た場合、個人的にはこのロックオンも代替剤として勧められる薬剤だと思います。


ロムダンフロアブルはIGR系統の薬剤で脱皮の促進作用のある薬剤です。
登録はケムシ類の発生初期となっています。



まとめ

という事で、今回は緑化用ディプテレックス乳剤の代替品についてピックアップしてみました。

同じ薬剤系統で見るならカルホスやスミチオン等。
違う薬剤系統で見るならロックオン等といった所が私的にはお勧めかなと思います。

IGR系統の薬剤は薬の性質から少し時間を要しますので、若齢の内(小さい内)から処理しておくのが良いでしょう。

どの農薬についても基本的には「発生初期」の登録内容となっています。
老齢(大きくなってから)だと防除が困難になりますので、幼虫が小さい内(弱い内)に叩くのが鉄則です。
発生しやすい時期に入ってきたら防除を意識するようにして頂ければと思います。

普段からよく観察できるようであれば、葉っぱをよく見て穴が開いているか?とか、葉や枝を見た時に虫が居るか?等について確かめてみて下さい。

虫の発見に気付いたら速やかに薬剤散布を行いましょう。

幼虫が成長してくると食害量が増えるので排泄物(フン)の量も増えてきます。
下がアスファルトのような場所だと、樹木の下に黒いツブツブしたフンが落ちているなんていう光景もよく見られると思いますので、そういったところからも虫の発生に気付く事ができると思います。


また、樹木類(あるいは観葉植物等)の登録農薬は、「樹木類」あるいは「観葉植物」で登録を取っている物と、「樹木類(○○を除く)、観葉植物(〇〇を除く)」といった登録内容になっていて、「○○」の物は個別に登録を取得していたりします。

樹木類(あるいは観葉植物)となっていても、全ての樹木・観葉植物対して完全に安全ですという物ではなく、代表的な樹木・観葉植物を対象としている場合が有ります。

人間が食べる物では無いので、登録の取り方も結構アバウトです。
ですので、ちょっと心配だなと思われるような樹木・観葉植物が有れば、メーカーさん等に問い合わせてみた方が良いでしょう。

データが無いという場合も有り得ますので、登録農薬を使う場合は一気に全面に薬剤散布せずに、少しだけ使ってみるというパッチテストをするのがお勧めです。

使い方や条件が悪かったりすると、葉っぱが落ちてしまったり焼けてしまったりという薬害を起こす場合が有りますので、十分注意してお使い下さい。


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