新規殺虫剤・ブロフレアSCが登録取得。製剤についての特徴や使いどころについて考察します。

2020年9月14日、三井化学アグロ㈱の新規殺虫剤「ブロフレアSC」がついに登録取得となりました。

本来は日産グレーシア乳剤より先に発売する予定だったブロフレアSCですが、登録取得が遅れに遅れ、この度ようやく登録取得となりました。

メーカーさん情報では、発売は来年3月を予定しているとの事です。

今回は登録取得レビューという事で、ブロフレアSCについて取り上げてみようと思います。
今後、紹介できる内容がそろってきましたら、少しずつ更新をかけていこうと思いますが、製剤スペックはとても高い薬剤だと思いますので、発売した際はぜひ使ってみてはいかがでしょうか?



ブロフレアSCの主成分、商標、対象害虫について

ブロフレアSCは、ブロフラニリドという主成分を5.0%含有する殺虫剤となります。

有効成分であるブロフラニリドは、「テネベナール」という商標をとっています。

近年はジェネリック対策で商標を付けるメーカーさんが多いですね。

例えばトランスフォームフロアブルの有効成分「スルホキサフロル」は「イソクラスト」なんて呼ばれていたり、ベリマークSC等の有効成分「シアントラニリプロール」は「サイアジピル」という通称で呼ばれていたりします。
水稲除草剤分野では除草剤成分の「メタゾスルフロン」が「アルテア」なんて呼ばれていたり。

挙げれば他にもいくつかありますが、ブロフレアSCの有効成分は「テネベナール」と呼ばれるようです。

得意とする害虫は、チョウ目とハムシだそうで、各県や地域で問題となっているコナガやシロイチモジヨトウ等の抵抗性害虫に対しても有効とされています。


ハムシに対しては成虫に対する効果となりますが、成虫密度が減れば土中の幼虫被害も少なくなりますので、有効な剤が増えるというのは良いですね。
ブロフレアSCは、キスジノミハムシやダイコンサルハムシ、カブラハバチにも効果があるとの事です。
だいこんやハクサイ、非結球アブラナ科葉菜類を栽培されている方には魅力的な薬剤だと思います。



ブロフレアSCはIRACグループ30の新規殺虫剤

ブロフレアSCは、害虫の「GABA(ギャバ)受容体」に作用する事で殺虫する薬剤です。
簡単に言うと、神経に作用する事で殺虫します。

専門用語を用いると、「主要グループと1次作用部位」としては、「GABA作動性塩素イオンアロステリックモジュレーター」というくくりになっており、IRACグループとしては30に該当します。

主成分のブロフラニリドがGABA受容体に付くと、GABA受容体が堅くなって神経伝達物質が通りにくくなります。
人間でいう所の「動脈硬化」に例えられる事も有りますが、神経伝達が正しく行われなる為、害虫は興奮を鎮める事が出来なくなり殺虫効果が発揮されます。


このグループの特徴としては、体液を激しく吐き出しながらビクンビクンと痙攣をおこしながら死ぬといった特徴が有ります。

↓ハスモンヨトウ 水で濡れたような部分が体液。



神経に作用する殺虫剤としては、「GABA作動性塩素イオンチャネルブロッカー」であるIRACグループ2Bのエチプロール(キラップ)やフィプロニル(プリンス)がありますが、こちらはGABA受容体の神経伝達物質が通る部分を詰まらせるといった作用で殺虫するタイプのグループです。
人間で言う所の「血栓」に例えられたりします。


同じ神経系に作用する殺虫剤でもアタックの仕方が異なるというのが面白いですね。



IRACグループ30でも薬剤系統は異なります。

数年後、他社メーカーからもIRACグループ30に該当する薬剤は出てくる予定はあるようですが、2020年9月現在、IRACグループ30「GABA作動性塩素イオンアロステリックモジュレーター」に該当する薬剤は、ブロフレアSCとグレーシア乳剤の2剤です。

しかしながらこの2剤は化合物骨格が異なる為、薬剤系統も異なるといった特徴が有ります。

●ブロフレアSC(成分:ブロフラニリド)→メタジアミド系
●グレーシア乳剤(成分:フルキサメタミド)→イソオキサゾリン系

ジアミド系??という部分でビビビッと来る方もいらっしゃるかと思いますが、フェニックスやプレバソン、ベネビア、ヨーバル等といった「ジアミド系」とは異なります。

これらのジアミド系は筋肉に作用するグループ(IRAC28グループ)に該当する為、アタックポイントが全く異なります。


話を戻しますが、ブロフレアSCは、同じIRACグループ30でもグレーシア乳剤と全く同じというわけではありませんので、生産現場では使い分けされる場面も出てくるのではないかな?と思います。

但し、使用する場合はアタックポイントが同じですので、グレーシア乳剤からのブロフレアSC(あるいはその逆)といった同じグループでの連用散布は避けましょう。



ブロフレアSCの初期登録ラベルについて

2020年9月現在の登録内容です。

以下の作物において、希釈倍数は2000~4000倍。
使用液量は100~300L/10aで、使用回数は3回以内です。
使用時期は、「きく」のみ発生初期、きく以外は「収穫前日まで」という登録内容となっています。


●キャベツ
【適用害虫名】
コナガ・アオムシ・ハスモンヨトウ・ヨトウムシ・オオタバコガ・ウワバ類・ハイマダラノメイガ

●はくさい
【適用害虫名】
コナガ・アオムシ・ハスモンヨトウ・ヨトウムシ・オオタバコガ・ハイマダラノメイガ

●だいこん
【適用害虫名】
コナガ・ヨトウムシ・ハイマダラノメイガ・キスジノミハムシ・カブラハバチ・アオムシ

●かぶ
【適用害虫名】
コナガ

●ブロッコリー
【適用害虫名】
コナガ・アオムシ・ハスモンヨトウ・ヨトウムシ・オオタバコガ

●カリフラワー
【適用害虫名】
コナガ・アオムシ

●非結球アブラナ科葉菜類
【適用害虫名】
コナガ・アオムシ・キスジノミハムシ

●レタス・非結球レタス
【適用害虫名】
ハスモンヨトウ・ヨトウムシ・オオタバコガ・ウワバ類

●ねぎ
【適用害虫名】
ネギコガ・シロイチモジヨトウ

●えだまめ
【適用害虫名】
ハスモンヨトウ・オオタバコガ

●かんしょ
【適用害虫名】
ハスモンヨトウ・ナガジロシタバ

●きく
【適用害虫名】
ハスモンヨトウ・オオタバコガ


よく質問を受ける事があるのですが、このブロフレアSCのように、キャベツにはウワバ類の登録が有るのに、はくさいには登録がないというような場合が有ります。

この場合、はくさいにつくウワバ類にもしっかり効果はあります(同じ種類の虫なので)。
大抵は農薬登録を取得する都合による物ですので、場合によっては後から登録を取得する事もあります。
仮に登録表記が無かったとしても、他の作物で登録を取っていればOKです。


ブロフレアSCの登録ラベルの話に戻しますが、今回のブロフレアSCの登録ラベルを見ると、グレーシア乳剤では登録の有るハダニ類、アザミウマ類、ハモグリバエ類等の登録は有りません。

ブロフレアSCの成分は、衛生害虫の分野(ゴキブリ、ハエ、白アリ等)では効果があるとされているようですが、初回ラベルで取得していない所をみると、効果としてはあまり期待できないのかもしれませんね。
また、ブロフレアSCはハチに対しての影響が高いという事で、果菜類の登録はとらないようです。

登録内容やターゲットによっては、グレーシア乳剤とブロフレアSCとの差別化が図られると思います。



ブロフレアSCの殺卵活性の有無について

ブロフレアCSには、直接的な殺卵活性は有りません。

しかしながらブロフレアSCは、残効が長く耐雨性も高い薬剤である為、直接的な殺卵作用が無くても2日後には孵化幼虫の生存率はゼロになるというデータが有ります。

グレーシア乳剤やフェニックス剤等も水溶解度が低い為、耐雨性が高い薬剤です。
ブロフレア並みでは無いかもしれませんが、薬効があるうちは同じような作用は有ります。

ただし、これらの薬剤は移行性はありませんので、卵に直接薬剤がかかっている(食い破る時に死ぬ)、もしくは薬剤がかかった葉を食害してくれれば効果はありますが、薬剤がかかっていない部分については無防備となります。

ですのでブロフレアSCの圃場レベルにおいての考察としては、生育が進んでいる時期(新葉展開時期)は、薬液がかかっていない葉に産卵される可能性もある為、薬液がかかった葉に移動して食べれば死ぬと思いますが、そうではない場合、2日以降でも孵化した幼虫が動き回っているというケースは有り得ます。

メーカーさんの試験データは、薬液がかかっている事が前提となりますので、実際の圃場では散布のタイミングや回数が重要となってくるでしょう。



ブロフレアSCの耐雨性・残効日数について

ブロフレアSCは水溶解度が低い殺虫剤である為、降雨による影響を受けにくい製剤となっています。

散布30分後~4時間後の人工降雨試験においても殺虫力のブレはほとんど見られないようです。

紫外線分解の有無までは何ともわかりかねますが、「耐雨性が高い=薬液が長期間葉に留まる」という事になりますので、天候による影響を受けにくいとも言えます。

ブロフレアSCの残効については、3週間の残効をうたっています。

コナガ3齢、ハスモンヨトウ3齢に対して、薬液がかかった葉を食わせるという試験で3週間後でも効果があるというデータを取っています。
圃場レベルでは散布のやり方(丁寧か否か)、タイミングによってもブレが出ると思いますが、メーカーさんの圃場試験においても2週間以上の残効はありそうなので、長期残効かつ前日まで使えるというのは生産者にとっては魅力的だと思います。



ブロフレアSCの使いどころや使い方についての考察

関東では2020年現在、コナガ以外の抵抗性チョウ目害虫についてはまだ目立っておりませんが、生産現場ではいくらかそういった特定の虫に対してブレが出ている、残ってしまうといった話も出ている節が有ります。

関西方面や九州方面ではコナガだけでなくシロイチモジヨトウ等の薬剤抵抗性害虫の話がありますね。
近いうちに関東でもコナガ以上に注意が必要になるかもしれません。


ブロフレアSCは薬剤系統もこれまでの物とは異なりますので、これらの害虫に対して非常に有効な製剤となると思います。


同じIRAC30グループで先行販売しているグレーシア乳剤も非常に良い薬ですが、特にウワバやタバコガ等といった一部の害虫に対しての効果や安定感については、圃場レベルだと厳しい、またはちょっと足りないかな…と思われる場面もあるようです。

ヨトウムシ類に対してはそれなりに効いている印象はありますが、葉物野菜においては、ここ最近は「コナガ専用剤」という位置付けになりそうな雰囲気さえあります。

スペクトラムが広くハンドリングの良い一級品薬剤だと思いますが、残効面についても圃場レベルだと短いという印章も有り、一長一短なんだろうなという感じです。

グレーシア乳剤は使い勝手も効果も高い薬剤だと思いますが、移行性が乏しい為、食い込んでくる虫に対しては評価が分かれるのだと思います。
散布タイミングがズレていたり、散布ムラ等が原因となっているのかもしれません。

一方で、ブロフレアSCについても、先に挙げたように浸達性や移行性が期待できない薬剤ですので、グレーシアと同じ様な事が言えます。
散布タイミングや散布ムラに対しては、グレーシア乳剤より注意が必要になるでしょう。

私の個人的な使い方の考察としては、結球作物のチョウ目被害を想定した場合は、定植後2回~3回目くらいの防除タイミングで1回、結球始期頃に1回というタイミングで用いるのが良いのではないかなと思います。

植物成長が激しい時期はどうしても薬液がかからない部分が出てしまいますが、初期の害虫加害は生育にも影響が出ますので、できるだけ綺麗な状態を保っておきたい所です。

結球するまでのタイミングで虫の被害を減らしておけば、害虫に食い込まれるリスクも減ります。

結球後の散布や仕上げ散布での使用も良いと思いますが、結球作物の場合は結球するまでの飛込対策が超重要です。


ブロフレアSCは、ハムシに対しても効果が高い薬剤となっています。
キスジノミハムシ等は、年間で3~4世代のサイクルがあるアブラナ科野菜を特に好む害虫です。

成虫は、葉に対して針で突いたような穴を開けますが、幼虫はウジのような状態で根部を加害します。
キャベツ、はくさい、だいこん、カブ、コマツナ等は好んで寄生してくるので注意が必要な害虫です。

ブロフレアSCは、成虫にのみ効果のある殺虫剤となります。
散布時はハムシ類は飛び出して逃げてしまいますが、この薬は「待ち伏せ型」の薬である為、舞い戻ってきた成虫が薬液の付いた葉を体内に取り込むことで殺虫します。

キスジノミハムシやダイコンサルハムシがブロフレアSCの成分を体内に取り込むと、触っても飛び出したり跳ねたりせずに死ぬといった特徴が有ります。

成虫を減らす事で産卵させる機会を減らします。
成虫の密度が減ると、土中の幼虫密度も後追いで減ってくる為、だいこん等の場合は根部の食害被害を減らす事にも貢献します。

実際はフォース粒剤等と併用する形となりますが、ハムシの成虫に対して効果が高いというのは非常に良い薬剤です。

使うタイミングとしては、残効が長いので発生前からの使用でも良いと思いますし、成虫の飛込が見えだした位からでも良いでしょう。



製剤特長についてのまとめ

以下、ブロフレアSCについての製剤特長をまとめてみます。

●主成分はブロフラニリド5.0%製剤(有効成分名はテネベナール)
●新規作用のIRAC30グループ薬剤
●グレーシア乳剤とは化合物骨格が異なる(薬剤系統が異なる)
●チョウ目、ハムシに対しての効果が高い
●速効的に作用する(摂取2時間後には効果発現・1日後には死に至る)
●残効が長い(メーカーさん情報では3週間)
●耐雨性が高い(水溶解度が低い為、降雨による影響を受けにくい)
●抵抗性害虫に対して有効(コナガやシロイチモジヨトウ等)
●接触よりも食毒による効果が高い
●食害作用はすぐに止まる
●浸達性や浸透移行性は低い為、新葉展開時期や害虫が食入している場合は注意が必要
●単剤高倍率でも薬害リスクが低い

混用可否薬剤については発売以降、順次わかってくると思いますが、使い勝手の良い薬剤となりそうです。

スポンサーリンク
Amazon:農薬 殺虫剤 検索
Amazon:農薬 殺菌剤 検索
Amazon:展着剤 検索



“新規殺虫剤・ブロフレアSCが登録取得。製剤についての特徴や使いどころについて考察します。” への2件の返信

    • 菊池磯八 様
      コメントありがとうございます。
      私が聞いている限りでは250mlと500ml規格で発売を予定しているようです。
      入り目については500mlは20本だと思いますが250mlは大箱20本になるのか40本になるのかまだわかりません。

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 * が付いている欄は必須項目です

*