今回はロロックス水和剤を長ネギで使う場合にスポットを当ててみようと思います。
ロロックス水和剤は、長ネギ(根深ネギ)に対して使用する事ができる除草剤で、主に広葉雑草を対象としています。
ネギに限らず、生産現場で扱われる事が多い除草剤の1つです。
個別に作物登録を取っており、作物によっては全面散布する事ができる除草剤という事で扱いやすく重宝されています。
ですがロロックス水和剤は「除草剤」というくくりになりますので、やはり注意が必要な薬剤です。
今回はロロックス水和剤のネギ登録についてのおさらいと、雑草スペクトラム、ロロックス水和剤と他の農薬を混用散布した際の薬害症状について紹介してみようと思います。
目次
ロロックス水和剤の露地ネギ登録内容について
ロロックス水和剤の露地栽培ネギの登録内容は2021年時点では以下のような登録内容になっています。
他の作物を含めた詳細はメーカーさんのHPをご参照下さい。
●一年生雑草に対して
定植後 但し、収穫30日前まで(雑草発生前)
投下薬量は100~150g/10a
水量は70~150L/10a
使用方法は「畝間土壌散布」
使用回数は1回
●一年生広葉雑草に対して
定植30日後以降 中耕培土後 但し、収穫30日前まで(雑草発生揃期)
投下薬量は75~150g/10a
水量は100L/10a
使用方法は「雑草茎葉散布または全面散布」
使用回数は1回
ちなみに、主成分のリニュロンを含む農薬の総使用回数は1回となっていますので、どちらかのパターンで1回しか使えません。
ネギでロロックス水和剤を使用する場合は、定植から収穫まで60日以下の作型品種(葉ネギ等)や、中耕培土をしない作型では使う事ができません。
ロロックス水和剤のネギ登録・注意点について
2021年時点の登録内容において、ロロックス水和剤をネギに使用する際に、安全に使う為に必ず注意しなければならない事があります。
製品HPやチラシ等にも書かれている事ですが、ついつい無視されてしまうところなので、注意して取り扱い頂ければと思います。
①長ネギ(根深ネギ)でしか使用できません。
薬害や残留の問題などから長ネギ(根深ネギ)以外のネギには使用できない登録となっています。
ロロックス水和剤の薬害症状は、主に黄化症状と黄化が進んだ後の枯症状です。
長ネギは製品化する時に加工する(葉先等をカットしてしまう)ので問題ありませんが、葉ネギはそういうわけにはいきません。
商品価値が落ちてしまいますので使用はNGです。
長ネギについても土寄せ前の状態や一定の太さが無いような状態(葉ネギような太さのネギ)に使用してしまうとかなり深刻なダメージが出る場合が有ります。
②ロロックス水和剤は使用できるタイミングが限定されています。
先にも挙げた通り、ロロックス水和剤は「畝間散布が可能な期間」と「全面散布が可能な期間」があります。
登録上はどちらか一方のタイミングでしか使用する事ができません。
定植から定植後30日未満で土寄せ前のタイミングのネギには使えませんし、収穫30日前より後のタイミングにおいても使用できません。
薬害リスクや農薬の残留を避ける為に必ず守るようにしましょう。
③他の農薬と混用しない。
基本的には展着剤、殺虫剤、殺菌剤すべてダメです。
液肥についてはそもそも事例が有りませんので一応避けた方が良いでしょう。
メーカーさんの話では、ロロックス水和剤は比較的粒子が荒いので作物にピッタリ付きにくいといった特徴から、作物によって過剰な薬害が出にくい製剤となっているそうです(薬害が出ないというわけでは無く、作物の種類や散布状況によっても異なる)。
ですので、界面活性剤等が含まれるような物と混用してしまうと、ロロックス水和剤の成分が作物にもしっかり付着してしまう事になり薬害リスクが高くなってしまいます。
展着剤は特にダメです。
作業の事を考えると殺虫殺菌剤は入れたくなりますし、雑草にしっかりロロックスの成分を付けたいとなると展着剤も入れたい所ですが、最悪取り返しがつかなくなりますので、混用するのはやめておきましょう。
④他の農薬との近接散布は7日以上あける。
他の農薬を散布した後にロロックス水和剤を処理する場合は7日以上あけて下さい。
理由は③に近い状況となり得る為です。
薬害リスクが高くなりますので避けるようにしましょう。
⑤使用する際は除草剤ノズルを使って均一に散布する。
ロロックス水和剤は草種によって土壌処理効果も有りますので均一に散布する事がお勧めです。
ですが、過潅水にならないように注意して散布して下さい。
他の土壌処理型の抑草剤にも言える事ですが、砂質で水はけの良い畑の場合は薬量を控えめにして下さい。
砂土の場合や激しい降雨が予想される時は使用を避けましょう。
理由としては作物の根に当たる可能性が高くなり、成育に影響が出るリスクが高くなるからです。
過湿などにより生育状況の悪い時での使用も薬害を生じる恐れが有りますので避けるようにして下さい。
製品の注意事項には有りませんが、土寄せ直後の使用はあまりお勧めしません。
タイミングにもよると思いますが土寄せは根が切れるのでネギ自体の生育が一時的に衰えます。
作業的にはすぐ処理したい所ですが、薬害リスクやネギの事を考えるのであれば少し樹勢が回復してからの方が良いです。
ロロックス水和剤の雑草スペクトラムについて①
ロロックス水和剤は、抑草作用と茎葉処理作用の2つの効能が有ります。
※以下はメーカーさんの製品チラシに書かれている内容ですので、販売店さんやメーカーさんにお願いすれば入手できると思います。
雑草発生前150g/10aで処理した場合、以下の雑草に対して活性が期待できます。
スペクトラム的には×・△・〇でみた所の「〇」に該当する草種としては以下の物が挙げられます。
●ヒユ科の雑草
アオゲイトウ・アカザ・イヌビユ・ゴウシュウアリタソウ・シロザ
●タデ科の雑草
イヌタデ・タニソバ
●ナス科の雑草
イヌホオズキ・ヒロハフウリンホウズキ
●ナデシコ科の雑草
オオツメクサ・ハコベ
●トウダイグサ科の雑草
コニシキソウ
●アブラナ科の雑草
スカシタゴボウ・タネツケバナ・ナズナ
●スベリヒユ科の雑草
スベリヒユ
●キク科の雑草
タカサブロウ・ノボロギク・ハキダメギク
●イネ科の雑草
ヒメイヌビエ
上記の使用方法で、活性は有って効果にムラが出てしまう雑草としては以下の草種が挙げられます。
●ヒルガオ科の雑草
アメリカアサガオ・ホシアサガオ・マメアサガオ・マルバルコウ
●キク科の雑草
アメリカセンダングサ
●アブラナ科の雑草
イヌガラシ
●トウダイグサ科の雑草
エノキグサ
●カヤツリグサ科の雑草
カヤツリグサ
●イネ科の雑草
イヌビエ・エノコログサ・オヒシバ・スズメノテッポウ・メヒシバ
雑草発生前処理では効果が期待できない雑草としては以下の草種が挙げられます。
●アオイ科の雑草
イチビ
●オオバコ科の雑草
オオイヌノフグリ
●キク科の雑草
オオオナモミ
●ツユクサ科の雑草
ツユクサ
●シソ科の雑草
ホトケノザ
ロロックス水和剤の雑草スペクトラムについて②
次に雑草生育期中の処理についてですが、草丈10㎝以下の雑草対して薬量150g/10aの時の活性例になります。
スペクトラムとしては以下のような感じとなります。
スペクトラム効果「〇」の雑草としては以下の草種が挙げられます。
●ヒユ科の雑草
アオゲイトウ・アカザ・イヌビユ・ゴウシュウアリタソウ・シロザ
●ヒルガオ科の雑草
アメリカアサガオ(子葉期まで)・ホシアサガオ(子葉期まで)・マメアサガオ(子葉期まで)・マルバルコウ(子葉期まで)
これ等は雑草発生前処理では効果がブレる草ですが、子葉期までの茎葉処理に対しては、スペクトラム表記が「〇」となっています。
●キク科の雑草
アメリカセンダングサ・アワユキセンダングサ・ウスベニニガナ・オオオナモミ・タカサブロウ・ハキダメギク
オオオナモミは雑草発生前処理ではほとんど効果が有りませんが、雑草生育期の処理だとスペクトラムは「〇」となります。
●アオイ科の雑草
イチビ
イチビは雑草発生前の処理だと十分な効果が発揮できませんが、雑草生育期中の処理だとスペクトラムは「〇」となります。
●アブラナ科の雑草
イヌガラシ・スカシタゴボウ・タネツケバナ・ナズナ
●タデ科の雑草
イヌタデ・タニソバ
●ナス科の雑草
イヌホオズキ・ヒロハフウリンホオウズキ
●トウダイグサ科
エノキグサ
エノキグサも雑草発生前の処理だと十分な効果が発揮できませんが、雑草生育期中の処理だとスペクトラムは「〇」となります。
●ナデシコ科の雑草
オオツメクサ・ハコベ
●クワ科の雑草
クワクサ
●スベリヒユ科の雑草
スベリヒユ
●シソ科の雑草
ホトケノザ
ホトケノザは雑草発生前では効果が出ませんが、雑草生育期中の処理だとスペクトラムは「〇」になります。
雑草生育期(草丈10㎝以下)の処理では効果が期待できない雑草としては以下の草種が挙げられます。
●オオバコ科
オオイヌノフグリ
オオイヌノフグリは雑草発生前の処理も効果が期待できない草種となっています。
●カヤツリグサ科
カヤツリグサ
雑草発生前処理もブレがある為、あまり得意な草種では無いようです。
●ツユクサ科
ツユクサこちらも雑草発生前処理では効果が無いという草になります。
●キク科の雑草
ノボロギクノボロギク・ヒメジョオン
ノボロギクは雑草発生前だと効果「〇」ですが、成育期中の処理は効果が期待できません。ヒメジョオンも生育期中の処理は効果が期待できない草種となります。
ロロックス水和剤の茎葉処理効果は比較的遅効的です。
効果の完成までは、おおむね1~2週間程度かかります。
じわじわと黄化して枯れていくようなイメージです。
ロロックス水和剤・混用薬害事例
先にも挙げた通り、ロロックス水和剤を処理する時は他の農薬との混用は避けましょう。
具体的には以下の画像のような状況となります。
よく広がるタイプの展着剤や殺虫剤を入れてしまった状態で、処理するタイミングも少し早い状況です。
処理後数日でネギの異常が顕著に現れます。
ネギ全体の色が一気に薄くなり葉先もよじれ、外葉が倒れ枯れていきます。
画像は5月頃の様子。
この状態のネギより細い物に使うともっと症状が深刻化しますので、間違っても定植して間もないネギなどでは使わないようにして下さい。
樹勢が衰えているのが素人目にもわかるくらい元気が無い感じです。
日数が経過しても色抜けた状態は続きます。
よじれていた葉先は外葉からどんどん枯れていきます。
日を追うごとに薬害症状が進行しているように見えます。
画像は1週間以上経過した様子ですが、激しく成長抑制がかかっています。
ちなみに処理していない所はこんな状況↓
もう少し寄ってみた様子↓
全体の比較↓ 左:無処理区、右:ロロックス+農薬処理区
当たり前ですが「ロロックス+農薬」処理区と無処理区を比較すると、無処理区の方が色味は濃いですし、葉先もしっかり立っており健全です。
成長も順調。
ネギの品種はどちらも同じですが、薬害症状はここまで差が出る場合が有ります。
まとめ
という事で、今回はロロックス水和剤のネギ登録についてピックアップしてみました。
ロロックス水和剤は「除草剤」になりますので、使うタイミングや使い方等については他の除草剤と同様に十分注意してお使い頂ければと思います。
不安な点があれば販売店んさんやメーカーさんにお問い合わせ下さい。
ちなみに、今回の記事で紹介した「ロロックス+農薬処理区画」はこの色抜けた生育不良状態がしばらく続きましたが最終的に回復しています。
ネギは強いなぁという印章です。
※もちろん、全てのパターンでこうなるというわけではありません。
ロロックス水和剤の効果の完成目安はおおむね2週間くらいなので、2週間を経過して症状の悪化・進行が見られなければ、とりあえずピークは達したかな?という判断ができます(雑草についても同じことが言えると思います)。
ですが、混用していた農薬の種類や薬量、処理した時のタイミングによっては回復が難しい場合もありますし、仮に回復できたとしても本来出荷したいタイミングでは出せなくなってしまいますので、やはり使用する際は注意が必要です。
非常に使い勝手の良い薬剤ですが、注意点も多々ありますので、登録内容を守って上手にご活用頂ければ幸いです。
その他、過去記事
●ネギアザミウマについての過去記事
●ネギ黒腐菌核病についての過去記事
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