キャベツやブロッコリー定植時期の必需品、フィールドスターP乳剤の上手な使い方について

フィールドスターP乳剤は土壌処理型の除草剤です。

登録作物は、「キャベツ、ブロッコリー、たまねぎ、えだまめ、だいず、とうもろこし、飼料用とうもろこし、てんさい」があります。
最新の登録内容についてはメーカーHPをご参照下さい。


薬剤の特徴としては、草種によって30日~40日以上の残効性があります(目安として)。
特にイネ科雑草、カヤツリグサ、スベリヒユ、イヌビユ等に対して高い抑草効果が有る除草剤です。

登録を取っている作物においては、基本的に作物の上から散布する事ができる除草剤ですが、圃場条件や散布タイミングによっては効果不足や生育遅延を招く事が有りますので、扱い方には注意が必用です。

今回はフィールドスターP乳剤の上手な使い方という事で、製剤についての特徴と使い方のポイントについて紹介していこうと思います。

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フィールドスターP乳剤の特徴と除草スペクトラムについて。

フィールドスターP乳剤は、酸アミド系の除草成分であるジメテナミドPを64.0%含有した土壌処理型の除草剤です。

ジメテナミドP剤は、だいずの雑草対策用除草剤(土壌処理型除草剤)の「エコトップP乳剤」や「プロールプラス」等にも用いられている除草剤成分です。

土壌処理型の除草剤は、抑草剤や抑制剤とも言われていたりします。

既に生えている雑草を枯らす物(雑草に直接薬剤を散布する茎葉処理除草剤)とは異なり、雑草が発生する前に土壌に除草剤を散布する事で効果を発揮するタイプの除草剤です。

何も処理されていない土壌であれば、普通に雑草が生えてきます。
放置すれば更に雑草がはびこってきて草だらけです。

土壌処理型の除草剤は、土壌地表面に散布する事で、土壌表面に除草成分の層を作ります。
この「層」の事を、一般的に「(除草成分)処理層」と言います。

「発芽したばかりの雑草の芽が処理層に触れる事で成長することなく枯れる」というのが土壌処理型除草剤の特徴です。

フィールドスターP乳剤は、雑草発生後の散布では十分な除草効果が発揮できませんので、必ず雑草発生前に使うようにして下さい。


フィールドスターP乳剤は、ノビエ、メヒシバ、オヒシバ、スズメノカタビラ等の一年生のイネ科雑草や、カヤツリグサや、スベリヒユ・ヒユ類等の一部の広葉雑草に高い除草効果があります。
一応の目安とはなりますが、一年生のイネ科雑草に対しては40日以上、広葉雑草に対しては、30日程度の残効を有します。

非常に扱いやすく便利ですが、全ての雑草・草種に対して有効というわけではありません。
この手の除草剤にはどうしてもスペクトラムに得意不得意があります。
ただし、フィールドスターP乳剤はこの手の除草剤の中では非常にスペクトラムが広い除草剤になりますので上手に活用してもらいたい所です。

■フィールドスターP乳剤の除草スペクトラムについて(技術資料より抜粋)
フィールドスターP乳剤の除草スペクトラム
↑BASFさんのフィールドスターP乳剤の技術資料より抜粋した内容。

●カヤツリグサはカヤツリグサ科カヤツリグサ属の一年生雑草。
●ハコベはナデシコ科ハコベ属の雑草。
●スベリヒユはスベリヒユ科スベリヒユ属の一年生雑草。
●ノボロギクはキク科の一年生雑草。
●ハキダメギクはキク科コゴメギク属の一年生雑草。
●タカサブロウはキクっぽい名前ではありませんが、こちらもキク科タカサブロウ属の一年生雑草で、水田雑草としても名前が通っています。

フィールドスターP乳剤は、キク科雑草に対して活性が有りますので、レタス系の作物にはドリフト(飛散)だけでも大きな影響があります。
近隣で作付けしている場合は注意して下さい。


●ナズナはアブラナ科ナズナ族の越年草で、ぺんぺん草とも呼ばれます。
ハート形の小さい葉っぱが特長的です。
●スカシタゴボウはアブラナ科イヌガラシ属の雑草です。
●オオイヌノフグリはオオバコ科クワガタソウ属の越年草。
●シロザはアカザ科アカザ属の一年雑草。
名前と葉の形が似ているアカザという野草(雑草)がありますが、こちらもアカザ科アカザ属の一年草となります。
細かい違いはありますが、簡単な見分け方として、新芽の赤い物をアカザ、白い物をシロザと呼びます。
APG体系(Angiosperm Phylogeny Group体系・被子植物系統グループ)では、シロザもアカザもヒユ科のくくりとなっています。
●イヌビユはヒユ科ヒユ族の一年生雑草。
●ツユクサはツユクサ科ツユクサ属の一年生雑草。
朝咲いた花が昼になるとしぼむ為、朝露を連想させるという事で露草(ツユクサ)と名付けられたという説があります。
●イチビはアオイ科イチビ属の一年生雑草でインド原産の雑草。

フィールドスターP乳剤は、誤ってハクサイ(アブラナ科)にかけてしまうと成長阻害(遅延)を起こしますので、こちらについてもドリフトには注意しましょう。


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キャベツやブロッコリーでのフィールドスターP乳剤の上手な使い方について

■キャベツやブロッコリーに対してフィールドスターP乳剤を効果的に使う為のポイントについて

①雑草発生前に使用する
雑草発生後の散布では効果が劣りますので、必ず雑草が発生する前に処理するようにして下さい。

②砕土、整地は丁寧に行う
細かく砕土する事で綺麗なフィールドスターP乳剤の処理層を作る事ができます。

③砂土での使用を避ける
フィールドスターP乳剤は、土壌中の移行性が比較的大きいので砂土での使用は避けましょう。

④散布前の土壌水分を確認する
散布したい圃場の土を手に持って軽く握ってみて下さい。
手のひらで軽く握ると塊ができ、簡単に崩せるくらいの水分状態がベストです。
ビチャビチャした状態は薬害リスクが高くなりますので、土壌水分が多すぎる場合は散布ベストな状況になるまで散布は控えて下さい。

⑤定植した苗が活着してから処理する
苗が活着すると、作物の根が土壌の水分や養分をしっかり吸収できるようになるので、定植時と比べて葉の萎れが回復してきます。
フィールドスターP乳剤を散布する際は、天候条件にもよりますが、目安としては定植3日~5日程度経ってからの散布がお勧めです。

⑥処理薬量を必ず守る
登録ラベル通りの薬量を処理して下さい。
キャベツやブロッコリーの使用薬量は50~75ml/10a、水量は100L/10aです。
砂質がかった土壌や礫(つぶて)が多い圃場では根当たりのリスクが有る為、低目の薬量で使用しましょう。

⑦処理する時の天候に注意する
散布直後の降雨は薬害の恐れがあるので、降雨が予想される時には散布を避けましょう。
キャベツで薬害が起きてしまった場合は、生育抑制や縮葉(萎縮したような状態)といった症状が起こります。
定植前後2日以内に多雨が予想される場合は散布しないようにして下さい。

また、直射日光が強い炎天下等での使用もお勧めできません。
乳剤という性質上、葉焼け等のリスクが高まります(最悪の場合は枯死します)。
フィールドスターP乳剤はブロッコリーに対してはキャベツより薬害が出にく為、キャベツよりも散布適期が長い登録内容となっていますが、ブロッコリーで使用する場合についても、高温時の散布では薬害を生じる恐れが有りますので、高温時での使用は避けるようにして下さい。
高温時散布を避けるというのは、農薬散布時の絶対条件です。
夏場の散布は、明け方くらいの涼しい時間帯か、夕方遅めの気温が下がってきたタイミングでの処理を推奨します。

⑧散布後の過度な灌水や、頻繁な灌水はしない
⑦の補足的な内容となりますが、除草剤の処理層が壊れる原因となります。
散布直後の場合は、処理層が土中に沈み込んでしまう為、薬害が助長されます(根当たりする・除草成分を吸い上げてしまう)。

処理層が壊れてしまうと雑草の出芽を止める事が難しくなります(効果不足を招く)。
定植前後2日以上は灌水も控えるようにして下さい。



土壌が乾いている場合の効果は?対策は??

降雨が無い状況が続いたり、酷暑などによって圃場水分が少ない場合にフィールドスターP乳剤を散布すると、除草剤の処理層を作る事はできますが、適度な土壌水分がある状態と比べると、除草剤の処理層は表層部分に薄く形成される形となります(薄っぺらな処理層となります)。

土壌が乾きすぎていると、土壌のヒビ割れや強風等によって土壌表面が吹き飛ばされてしまうといった事がある為、フィールドスターP乳剤の効果としては不安定なものとなります。

カラカラな土壌条件よりは、適度に水分が有った方が良いので、過度に乾燥している場合は、土壌散水してからフィールドスターP乳剤を使うといった事もお勧めです。
但しその場合は、土壌水分が多すぎると薬害リスクが高くなりますので、土を手に取ってみて水分量を見るようにして下さい。


誤って使用(ドリフトを含む)してしまった場合は?

残念ながらフィールドスターP乳剤を中和する農薬等は有りません。

作物によっては生育の遅れは出るものの、有効成分の効力切れと共に回復する場合も有ります。

ただし、初期成育に影響(成長阻害)が出てしまった場合、その後の成長に影響が出る場合が多いです。
具体的には、うまく肥大してくれなかったり十分結球しないといった弊害を生じます。

また、記中にも挙げたレタス等は、ドリフトしただけでも取返しがつかない薬害を起こしますので、特に注意が必用です。


フィールドスターP乳剤の残効は、先にも挙げておりますが、おおむね1カ月程度有ります。
現状の畝を壊してイチからやり直したいところですが、フィールドスターP乳剤は一度使用した圃場に対して2回処理ができません。
登録の問題も有りますが、2回処理をしてしまうと薬害を助長してしまう場合が有ります。

ですので、苗に余裕が有り、定植のタイミングが間に合うようであれば、思い切って植え直す圃場を変えるか、変えられない場合は、現在の畝の植穴を少し大きめに掘り起こして植え直すという対応をして下さい。
コストを考えた場合、現在の圃場を用いるのが一番効率が良いです。

フィールドスターP乳剤は、有効成分が一度土壌に吸着してしまえば、よほどの大雨や灌水などが無い限り、作物への影響は少なくなります。
処理層が完成されている為、圃場全体としては雑草抑草効果もあります。

但し同じ圃場の畝に植え直す場合は、植え直した株元の付近の除草剤処理層は崩れた状態になる為、株元付近だけ雑草が生えやすくなります。
後々雑草が生えたら抜き取る等の対応が必要となります。


よくある失敗例としては、フィールドスターP乳剤を使った散布器具を洗わずに次の農薬散布をしてしまう場合です。
薬剤が残っていないから大丈夫だろうという安易な判断でタンクやホースを充分洗わずに次の薬剤散布に使ってしまうと、ドリフトした時と同じような症状が起こります。

大抵の場合は除草剤用の散布器具と殺虫殺菌剤用の散布器具は使い分けている方が多いと思いますが、そうでない場合は特に注意して下さい。

フィールドスターP乳剤に限らず、除草剤を使ったタンクやホースは最低3回くらいはしっかり洗っておくのが無難です。

他の除草剤にも共通するところですが、散布後すぐに洗浄するのが鉄則です。
一旦乾かしてしまうと洗浄してもうまく洗えていないような事が多々あります。
面倒でも使用後直ぐに洗浄するよう心がけて頂けると後作の失敗リスクは減ると思います。


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まとめ

今回はフィールドスターPについてピックアップしてみました。

土壌処理型の除草剤はいくつか種類が有り、効果のある草種についても異なりますが、薬剤散布した後は、どれも降雨や灌水には注意が必用です。

お使いになる際は、間違った使い方やドリフトをしないように十分注意して下さい。


メーカーさん(日本曹達さん)の製品ページでは、フィールドスターP乳剤の上手な使い方として、特設ページが設けられています。
こちらも合わせてチェックをお勧めします。


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