今回は、BASFより新発売となった「アクサーフロアブル」について紹介していこうと思います。
アクサーフロアブルはBASFで開発された新規のSDHI系統の有効成分に、既存剤であるスコアの有効成分を混合した殺菌剤となります。
2つの有効成分によって、りんご・なし・ももなどの果樹病害に対して幅広い抗菌スペクトラムを有するとともに、高い浸達性と治療的な効果も有します。
目次
アクサーフロアブルの有効成分について
冒頭ご紹介したように、アクサーフロアブルは2つの有効成分を持った殺菌剤です。
近年、外資系から発売される殺菌剤の多くは、薬剤抵抗性リスクを回避する為、混合剤での発売が多くなってきました。
ジフェノコナゾールは、スコア顆粒水和剤の有効成分です。
FRACグループとしては、3グループに分類されます。
ジフェノコナゾールは浸透移行性があり、茎葉部から速やかに植物体に取り込まれ、高い防除効果を有します。
ジフェノコナゾールは、りんごやなしの黒星病菌(Venturia)に対して卓効で、胞子形成の防止作用(予防効果)と、菌糸生育の阻止作用・病斑形成の阻止作用(治療効果)を有します。
ゼミウム(フルキサピロキサド)は、コハク酸脱水素酵素阻害剤(SDHI)であり、FRACコードは7に分類されます。
ゼミウム(フルキサピロキサド)は高い浸達性を有し、速やかに植物体内に取り込まれます。
葉面に有効成分が付着すると、ワックス層に吸収されて葉内へ移行します。
有効成分が植物体内に入り込む為、病原菌の感染から葉を保護するとともに、葉内での治療効果も発揮します。
葉に付着した有効成分は、吸収され葉内の上方へ移行していきます。
病原菌の生活環とアクサーフロアブルの作用について
画像は、アクサーフロアブルの「りんごの黒星病」を対象とした際の作用についての画像です。
生活環の文字が小さい為、①~⑧まで番号を振ってみました。
①胞子飛散、②胞子付着、③胞子発芽、④発芽管の伸長・付着器形成、⑤侵入、⑥菌糸伸長、⑦発病、⑧分生胞子形成
アクサーフロアブルの有効成分が抑えるポイントは、③~⑧の部分になります。
ジフェノコナゾールとゼミウムの両方が強く阻害できるポイントとしては、菌糸伸長と病斑形成の阻害です。
アクサーフロアブルの病原菌に対する抗菌スペクトラムについて
2つの有効成分の総合評価で「+」の数が多いほど防除効果が高いという表記になっています。
総合評価では、りんご・なし・ももで問題となる黒星病についても「+++」表記となっていますので、防除効果としては高い薬剤という事がデータ上からわかります。
アクサーフロアブルの「なし黒星病」の使いどころについて
関東圏にはリンゴ栽培が盛んな地域が有りませんので、ここでは「なしの黒星病」を例に紹介しようと思います。
関東圏の梨の主要エリアですと、黒星病の防除薬剤は、全ての期間で導入されています。
地域によって導入時期が異なるかもしれませんが、一部の地域の全農監修の防除暦ですと、おおむね4月中旬あたりの落花期(受粉終了直後)の黒星病対策でスコア顆粒水和剤が導入されています。
また、7月下旬の収穫前時期ではフルーツセイバー(アフェット+ダコニール)等も導入されていますので、この辺りに当てがって使ってみても良い薬剤です。
予防+治療効果がありますが、発病してからの防除ではなく、基本的には予防主体で使う事をお勧めします。
予防先行で防除しておく事で、仮に発病したとしても発病率は減らせる可能性が高くなるからです。
アクサーフロアブルの登録内容について
2019年現在、アクサーフロアブルの登録内容は下記内容となっています。
農薬の登録内容は、変更になる事が有りますので、ご利用になる際はメーカーHP等で最新の登録内容をチェックするようにしてください。
まとめ・追記
以上、アクサーフロアブルについて紹介させて頂きました。
最後に薬剤の安全性についてBASFの資料をもとに紹介しておきます。
アクサーフロアブルは、有用昆虫に対する影響も少ない製剤となっています。
セイヨウミツバチ(原体)・ミヤコカブリダニ(製剤)・キイロタマゴバチ(製剤)・ナミテントウ(製剤)・蚕(製剤)について、影響が少ないとなっています。
また、それぞれの作物に対しての安全性も確認されています。
≪りんごの場合≫
ふじ・つがる・王林・さんさ・紅玉・あかね・彩果・さんたろう・シナノゴールド・シナノスイート・ジョナゴールド・スターキングデリシャス・北斗・秋田紅ほっぺ・きおう・トキ・千秋・ゆめあかり
≪なしの場合≫
香水・豊水・長十郎・二十世紀・あきずき・おさゴールド・ラ・フランス
≪ももの場合≫
川中島白桃・あかつき・なつっこ・紅晩夏・夢しずく・早生白鳳・橋場白鳳・なつおとめ・白秋・黄金桃・紅国見・ゆうぞら・日川白鳳・さくら白桃
あくまで単剤で処理した場合の安全性です。
農薬は時折、メーカーで安全性が確認されている作物でも、温度条件や環境条件の不一致で稀に薬害が確認される場合も有りますので、初めて使われる場合は多重混合は避けて単剤での処理をお勧めします。
関心が有りましたらご利用になってみて下さい。
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