2020年~トレンド水稲除草剤6選(初中期一発剤)

さて、今回は今年のトレンドと言える水稲除草剤(初中期一発剤)をピックアップしてみようと思います。

地域性はあると思いますが、近年の温暖化現象により、雑草の生育が例年より早くなってきている関係で、ここ1~2年は特に高葉齢のノビエ登録をもったハイスペックな水稲除草剤が増えてきました。

これまでは「ノビエ2.5葉期」までの物が主流だった初中期一発剤も、近年はノビエ「3葉期以上」の除草剤が増えています。

従来のノビエ2.5葉期スペックから比べると3葉期以上のスペック品は成分コンテンツの都合上、いくらか割高になってしまいますが、ノビエを中心とした重要雑草の取りこぼしを抑えるのには非常に貢献してくれると思います。

それぞれの薬剤の特性は有りますが、ハズレの無い薬剤です。



カウンシルコンプリート剤の特徴と効果、登録内容について

カウンシルコンプリート剤は、バイエルクロップサイエンス㈱の商品。
テフリルトリオンとトリアファモンの2成分剤です。
剤型は、粒剤・フロアブル剤・ジャンボ剤の3規格があり、それぞれ大型規格があります。

カウンシルコンプリートは、高葉齢のノビエや難防除雑草を得意とした初中期一発除草剤です。
白化剤のテフリルトリオンと、ALS阻害剤のトリアファモンを組み合わせる事で、ノビエだけでなく、クログワイ、オモダカ、コウキヤガラにも高い除草効果と残効性を有します。
また、クログワイ等の塊茎の形成抑制効果もあります。
この他にも、アシカキ、エゾノカヤヌカグサ、キシュウスズメノヒエ等の多年生のイネ科雑草や、クサネム、イボクサ等の特殊雑草にも活性があります。

粒剤は同時処理が可能です(移植時または移植直後~ノビエ3.5葉期)。
フロアブルは移植後5日~ノビエ3.5葉期。
ジャンボ剤は移植後5日~ノビエ3葉期。

直播水稲についても登録が有ります。

粒剤は、は種時・は種直後~ノビエ3.5葉期ただし収穫90日前まで。
フロアブル剤は、は種直後~ノビエ3.5葉期ただし、収穫90日前まで。
ジャンボ剤は、稲1葉期~ノビエ3葉期ただし、収穫90日前まで。

カウンシルコンプリート成分スペクトラム
※カウンシルコンプリート技術資料より抜粋



カウンシルエナジー剤の特徴と効果、登録内容について

カウンシルエナジー剤は、バイエルクロップサイエンス㈱の商品。
トリアファモン、フェントラザミド、フェンキノトリオンの3種混合剤。

剤型は、カウンシルコンプリートと同様、粒剤・フロアブル剤・ジャンボ剤の3規格が有り、それぞれ大型規格があります。


カウンシルコンプリートでも十分な殺草スペクトラムを有していますが、カウンシルコンプリートでは少し弱いとされていた草種をカバーしています。

カウンシルコンプリートと同様、高葉齢のノビエに対する効果や長期残効性もあり、クログワイ、オモダカ、コウキヤガラ、キシュウスズメノヒエ、エゾノサヤヌカグサ等に対しての除草効果も十分有ります。
また、SU抵抗性雑草であるホタルイ、コナギ、アゼナ類、ミズアオイ等に対しても高い除草力を持っています。

テフリルトリオンではないフェンキノトリオン(エフィーダ)という新しい白化剤を用いる事で、イネに対する安全性がアップしているのも特徴です。

これまでの4-HPPD阻害剤に対して感受性のあった品種に対しても安心して使えます。
自分の圃場の隣でこういった感受性品種を作付けしている場合、降雨等によるオーバーフローで隣の水田に薬害を起こしてしまうリスクがありますが、フェンキノトリオン剤はこの点で心配いりません。
また、フェントラザミドを含有している事で、雑草イネに対しても有効です。


■フェンキノトリオン(エフィーダ)の安全性が確認されている水稲品種

●多収米品種
やまだわら、とよめき、ふくおこし、あきだわら、どんとこい
●酒米
秋田酒こまち、美山錦、兵庫夢錦、兵庫北錦、五百万石、フクノハナ、山田錦、白鶴錦
●飼料用稲
タカナリ、おどろきもち、モミロマン、ミズホチカラ、ハバタキ、べこあおば、夢あおば、ホシアオバ、リーフスター、クサノホシ、ミナミユタカ、モグモグあおば


■カウンシルエナジーの登録内容

粒剤・フロアブル剤
移植水稲:移植時・移植直後~ノビエ3.5葉期
直播水稲:稲1葉期~ノビエ3葉期ただし、収穫90日前まで

ジャンボ剤
移植水稲:移植直後~ノビエ3葉期
直播水稲:稲1葉期~ノビエ3葉期ただし、収穫90日前まで

カウンシルエナジー成分スペクトラム
※カウンシルエナジーの技術資料より抜粋



ジャンダルムMX剤の特徴と効果、登録内容について

ジャンダルムMX剤はシンジェンタジャパン㈱の商品。
ピリフタリド・ピリミスルファン・メソトリオンの3成分剤です。
剤型は、粒剤・ジャンボ剤・豆つぶ剤の3規格となります。
それぞれの剤型で大型規格もあります。

これまでJAの専売特許だった豆つぶ剤でしたが、一般小売店でも扱える商材として登場しました。
移植時からノビエ3葉期以上の登録を持っており、漏水田対策としても有効な土壌吸着力の高いピリフタリドを含有。
ノビエの他に、SU抵抗性雑草等に対しても高い効果が有ります。


■ジャンダルムMX剤の登録内容について

粒剤
移植水稲:移植時・移植直後~ノビエ3.5葉期ただし、移植後30日まで
直播水稲:稲1葉期~ノビエ3.5葉期ただし、収穫90日前まで

ジャンボ剤・豆つぶ剤
移植水稲:移植後3日~ノビエ3.5葉期 ただし、移植後30日まで
直播水稲:稲1葉期~ノビエ3.5葉期 ただし、収穫90日前まで

ジャンダルムMX剤は、無人航空機でも使う事ができ、DJI等のドローンを用いた散布試験等も実施しています。

豆つぶ剤は、切り口が2つあり、フロアブル剤のように畦畔から処理する方法と、バケツなどにあけてひしゃくで飛ばす方法と2通りの処理方法を選べます。

ジャンダルムMX剤 参考スペクトラム①
※メーカー了承の内容ではありませんが、ジャンダルムMX剤の参考スペクトラムになります。

ノビエ3.5葉期のハイスペック商品ですが、安定した防除効果を高める為には、移植時または移植直後のタイミングよりは、もう少し後ろにずらして使用するのが効果的です。
初期剤との体系防除も非常に有効です。



ドリフ粒剤の特徴と効果、登録内容について

ドリフ粒剤はバイエルクロップサイエンス㈱の初中期一発水稲除草剤です。
トリアファモン・フェントラザミド・エトキシスルフロン+クロメプロップの4成分剤。

製品規格は4Kg粒剤のみ。
剤型を増やさず規格を1つに絞る事で、ハイスペックながらコストパフォーマンスに優れる製剤となっています。

それぞれの製剤の特徴としては…

トリアファモンはノビエの他に、多年生雑草のクログワイ・オモダカ・コウキヤガラ、多年生イネ科雑草のキシュウスズメノヒエに対して高い効果が有ります。

フェントラザミドはノビエや一年生の広葉雑草に高い除草効果が有ります。

エトキシスルフロンは広葉雑草やオモダカ科雑草に対して高い除草効果が有ります。

クロメプロップはSU抵抗性雑草を含む一年生広葉雑草やホタルイに対して高い除草効果が有ります。

■ドリフ粒剤の登録内容

移植水稲:移植時からノビエ3葉期まで ただし、移植後30日まで
直播水稲:稲1葉期~ノビエ3葉期 ただし、収穫90日前まで

稲に対する安全性が高いので、直播水稲や、WCS用イネ(稲発酵粗飼料)にも使用できます。
ドリフ粒剤 参考スペクトラム
※ドリフ粒剤の技術資料より抜粋



マスラオ剤の特徴と効果、登録内容について

マスラオ剤は、住友化学㈱が販売する初中期一発水稲除草剤。
イマゾスルフロン+ピリミノバックメチル+フェンキノトリオンの3成分剤です。

最近まで直播専門剤として販売されていたオサキニ粒剤(イマゾスルフロン+ピリミノバックメチル+ブロモブチド)の後継薬剤になります。

ノビエに対しては遅効的といった特徴があるものの、直播水稲の場合、は種時処理しても多くの場合ノビエは発生しますが、発芽後に強い抑制がかかる為、2葉期前後には枯死します。
直播水稲については、表面は種・土中は種・乾田直播に使用できます。

フェンキノトリオンを含有する事で、イマゾスルフロンでは抑えきれないSU抵抗性雑草を含むホタルイ、コナギ、ミズアオイ、オモダカに対して高い除草効果を発揮します。


■マスラオ剤の登録内容について

●粒剤
移植水稲:移植時・移植直後~ノビエ3葉期ただし、移植後30日まで
直播水稲:は種時・は種直後~ノビエ3葉期ただし、収穫90日前まで

●フロアブル剤
移植水稲:移植直後~ノビエ3葉期ただし、移植後30日まで
直播水稲:稲1葉期~ノビエ3葉期ただし、収穫90日前まで

●ジャンボ剤
移植水稲:移植直後~ノビエ3葉期 ただし、移植後30日まで
直播水稲:稲1葉期~ノビエ3葉期ただし、収穫90日前まで

マスラオ剤 参考スペクトラム①
※メーカー了承の内容ではありませんが、マスラオ剤の参考スペクトラムになります。



天空剤の特徴と効果、登録内容について

天空剤は、日産化学㈱の水稲初中期一発除草剤。
フェントラザミド、ベンゾビシクロン、メタゾスルフロンの3成分剤です。

剤型は、粒剤・フロアブル剤・ジャンボ剤の3剤型が有り、粒剤・フロアブル剤については大型規格があります。

メタゾスルフロン(アルテア)は、新しいタイプのALS阻害剤で、SU抵抗性雑草に対して高い除草効果があります。
また、地上部の枯殺だけでなく、地下部についても効果があり、クログワイ等の地下茎分株抑制や、塊茎形成の抑制効果もあります。

フェントラザミドについては、ノビエに対する効果持続力があり、後発生のノビエ対策としても有効な成分です。

ベンゾビシクロンは、SU抵抗性雑草に強い成分であり、匍匐雑草のイボクサ等に対しても有効な成分となっています。
天空剤はベンゾビシクロンの含有量が増量されており、効果の持続性が補強されています。

■天空剤の登録内容について

●粒剤
移植水稲:移植時・移植直後~ノビエ3葉期ただし、移植後30日まで
直播水稲:稲1葉期~ノビエ3葉期ただし、収穫90日前まで

●フロアブル剤
移植水稲:移植時・移植直後~ノビエ3葉期 ただし、移植後30日まで
直播水稲:稲1葉期~ノビエ3葉期 ただし、収穫90日前まで

●ジャンボ剤
移植水稲:移植後1日~ノビエ3葉期 ただし、移植後30日まで
直播水稲:稲1葉期~ノビエ3葉期 ただし、収穫90日前まで

天空剤 参考スペクトラム
※メーカー了承の内容ではありませんが、天空剤の参考スペクトラムになります。
メーカーHPにも参考資料が出ていますので、関心のある方はチェックして下さい。



まとめ

今回は水稲除草剤(初中期一発剤)にスポットを当てて紹介してみました。

ノビエ3葉期以上の初中期一発除草剤は、今後もメーカーによって発売が予定されており、主力となってくると思われます。

ひとつ注意ですが、ノビエ2.5葉期の商材がダメというわけではありません。
田植、散布時期が有っていればこれまでと同様、問題なく使えますし、今後も十分有効です。

水稲生産者の集約化に伴い、作付時期や管理の具合などを考慮すると、どうしてもやりきれない場面が出てきてしまうという現状があります。
取りこぼしリスクを抑えるという点では、ノビエ3葉期以上のスペックというのは、やはり魅力があると言えるでしょう。

除草剤選定の参考になれば幸いです。


スポンサーリンク
Amazon:水田除草剤 検索



コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です

*