綺麗な「ほうれんそう」を育てよう!「べと病」対策と登録農薬について紹介します。

緑黄色野菜の代表格である「ほうれんそう」は、中央アジアが原産のアカザ科の作物です。

土壌の酸度はpH6.5~7.0を好み、生育・発芽の適温は、15℃~20℃とされています。

ほうれんそうは冷涼な気候を好み、マイナス10℃の低温に耐える一方で(5℃以下になると成長がとまって甘みが増すとされています)、暑さにはめっぽう弱く、25℃以上になると発芽・生育不良やべと病などの病気が発生しやすくなります。

今回は、春先以降の露地栽培や晩秋の生育後期に発生しやすい「ほうれんそう」の重要病害である「べと病」にスポットを当てて、病害についての生態、発生しやすい条件、防除対策、農薬情報等について紹介していきます。

関心のある項目が有りましたら目次よりご覧ください。



ほうれんそう・べと病の生態・発生サイクル・発生条件等について

ほうれんそうのべと病は、糸状菌(かび)による病害です。
具体的には、Peronospora farinosa f.sp. spinaciae(ペロノスポラ・ファリノーサ・分化型・スピナシアエ)という糸状菌(鞭毛菌類)になります。
※2011年の12月より「Peronospora effusa (Greville) Cesati 」という学名から変更となっています。


■被害の出方や特徴について

葉、葉柄、茎、胞果に発生する病害ですが、よく見られる症状としては葉に発生する事が多い病害です。

葉が感染した場合、葉の表面に蒼白色または黄色の境界が不鮮明な小斑点が発生し、次第に病斑が拡大して淡黄色や淡紅色の不正形病斑となり、葉の大部分が淡黄色となって、最終的に枯死乾燥します。

ほうれんそうのべと病は、はっきりした病斑が出ている葉裏を見ると、灰色がかったカビの胞子(分生子)が発生しているので目視でもわかりやすいといった特徴があります。

展開した外葉、下位葉に発生する事が多い病害ですが、成長点に発生する事もあり、そのような場合は、葉が肥大萎縮する奇形症状を起こしたりします。
また、幼苗期にべと病に感染すると、枯死、乾燥して消失する場合が有ります。


病害発生例  葉表
ホウレンソウ病害①
葉裏
ホウレンソウ病害②
葉裏
ホウレンソウ病害④
ほうれんそうべと病は、本葉4枚くらいになると感染しやすいと言われています。
画像のような症状が見られるのは本葉8枚目くらいからが多いです。


■病源菌の伝染方法について

風などによって胞子が付着すると感染します。

病源菌は感染した葉の組織内で繁殖し、形成された卵胞子が土壌中で越年し、第一次伝染源となります。
また、ほうれんそうのべと病菌は菌糸の形で被害株に付いて越冬します。
この越冬した菌は、冬の期間は一時的に進展が見られなくなりますが、気温の上昇とともに分生子を形成して第一次伝染源となります。

ほうれんそう・べと病菌は、分生胞子と卵胞子をつくりますが、そのどちらも直接発芽し、発芽管を出して侵入します。
その後、病斑上に分生子を形成し、形成された分生子が風等によって飛散する事で第二次感染が行われます(感染が広がります)。

また、当病害は種子伝染を起こす可能性もあり(一部の県の病害虫防除資料等には種子伝染するとの明記も有ります)、発病した株から採取した種子の組織内部に菌糸、表面に卵胞子が認められることが有ります。


■発病と伝染の好適温度条件について

分生胞子が形成する為の適温はおおむね7℃~15℃で、分生子の発芽適温は5℃~20℃とされています。
また、ほうれんそうのべと病は、平均気温が10℃内外に達すると発病しますが、感染好適温は8℃~18℃とされており、平均気温が8℃~18℃で多湿条件が続くと発生が多くなります。
特に昼夜の気温差がある春・秋、冷涼な地域で発生が多く見られる病害です。
気温が下がってくると発生しやすいので注意!


関東の場合、主に秋播きの秋冬取りの作型、9月中旬~12月下旬頃にかけてと、春播き春取りの作型、2月後半~5月頃が発生ピークとなる事が多い病害です。


春または晩秋に、天候不順で降雨が多い時や曇天が続くような時には急激に蔓延する事がある為、注意が必用です。

多肥栽培などによる軟弱徒長している状態や、厚まきによる密植栽培(過繁茂な状態)、排水不良、湿度過多条件になると発生が助長されます。



ほうれんそう・べと病の防除対策(耕種的防除方法)について

ここでは、ほうれんそう栽培においての耕種的防除について紹介していきます。

■防虫ネットや寒冷紗等を利用する。

カビの胞子は風などによって作物体に付着・伝染する為、風よけを作る事が大切です。
防虫ネットや関連者をトンネル掛けする事で、風の勢いが抑えられます。
風を抑える事で、作物体に胞子が付きにくくなります。


■間引き収穫を行う

密植状態はべと病を多発させる原因になります。
取り遅れ等がないように生育状況に合わせて収穫するようにします。


■被害残渣はそのまますき込みせずに圃場外に持ち出して処分する。

冒頭書いたように、ほうれんそうのべと病菌は、菌糸の形で被害株に付いて越冬します。
そのまますき込んでしまうと土壌中の病原菌密度が増える事になりますので、被害残渣は外に持ち出して処分するようにして下さい。


■必ず抵抗性品種を用いるようにする。

ほうれんそうのべと病は、いくつかの菌系統(以下「レース」と呼びます)があります。

例えばAという品種を作付けしていて、今まではべと病にかかったことが無いのに、ある日突然べと病菌に侵されるという場合が有ります。
このように特定のレースに対して弱くなってしまった場合、種苗メーカーは、新し抵抗性品種Bを作ります。
この関係は人間の病気のようにいたちごっこなのですが、品種を選ぶ際には、できるだけ沢山のレース抵抗性を持っている品種を選ぶようにすると、病気に感染するリスクを減らすことができます。

レースについては地域性もありますので、地域の農業普及センターやJA、または種苗小売店などに確認を取ると良いでしょう。
種子伝染も有りとされる病害の為、消毒済の種子を使用する事をお勧めします。


■早播きや厚播きにならないようにする。

葉が軟弱になったり、過繁茂な生育環境になると病害が起こりやすくなりますので避けるようにして下さい。


■多肥栽培にならないよう、肥料施肥に注意する。

他の病害を含め、多肥栽培(特に窒素過多)は病気の発生を助長します。
たい肥を入れる場合は、完熟たい肥を用いるようにしましょう。
施設栽培の場合は、土壌の塩類集積による土壌pH異常にも注意が必用です。


■多湿条件や極端な乾燥条件にならないよう配慮する。

具体的にはマルチを敷くといった方法となります。
何も無い状況と比べると、マルチを敷くと土の湿度が安定します。
地温のコントロールにもなります。
作物は乾燥条件になると、環境ストレスにより光合成で得たエネルギーを成長に回せなくなります。
このような弊害を減らす意味でもマルチングは有効です。


■排水環境・湿度環境に注意する。

露地栽培の場合ですと、圃場の排水対策が最重要となります。
特に近年はゲリラ豪雨等により、圃場が水没するという事も多々あります。

排水対策としては、畝立て機を用いるなどして、高さ10㎝~15㎝の畝をしっかり作るといった対策が一般的です。
長期間雨が降った後や、万一水没してしまった場合は、M.O.X等の酸素供給資材を活用して、土がしまった状態を改善するなどの対策を取って下さい。
また、施設栽培の場合は湿度コントロールが重要となりますので、換気に注意するようにして下さい。


■生育中に発見した病害株は、圃場外へ持ち出して処分する。

被害残渣の処分理由と同様の理由です。
見つけ次第抜き取って圃場外で処分するようにして下さい。


ほうれんそう・べと病の防除対策(農薬による防除)について

農薬を用いた防除を行う場合は、登録内容を守って使うようにして下さい。
農薬の登録内容は変更になったり抹消される事があります。
ご利用になる前にメーカーのHP等で登録内容について確認してから使うようにしましょう。


■ほうれんそう・べと病の主要登録薬剤について

時々間違われますが、農薬分類上における「ほうれんそう」は、「非結球アブラナ科葉菜類」ではありません。
野菜類の中の「ヒユ科葉菜類」というグループの中に入ります。

2020年時点では、ヒユ科葉菜類登録の農薬は有りませんので、ほうれんそうに使う農薬を選ぶ時は、野菜類登録農薬か、ほうれんそう登録農薬を選ぶようにして下さい。

ちなみに、ヒユ科葉菜類に該当する作物としては、ほうれんそう以外の作物だと、「アマランサス(茎葉)、おかひじき、ふだんそう」があります。


※以下は2020年時の登録内容になります。

●ユニフォーム粒剤 FRAC:11・4(アミスター+リドミル) 予防+治療
●アリエッティ水和剤 FRAC:P07/予防+治療
●コサイド3000水和剤 FRAC:M01/無機銅剤/予防
●ピシロックフロアブル FRAC:U17/予防
●フェスティバル水和剤 JA品目 FRAC:40/予防+治療
●ヨネポン水和剤 FRAC:M01/有機銅剤/予防
●ライメイフロアブル FRAC:21/予防
●ランマンフロアブル FRAC:21/予防
●レーバスフロアブル FRAC:40/予防


■野菜類登録の殺菌剤で「べと病」登録のある薬剤も活用できます。

●クプロシールド FRAC:M01/無機銅剤/予防
●Zボルドー水和剤 FRAC:M01/無機銅剤/予防



薬価は高いですが、初期の内にユニフォーム粒剤を用いるのは非常に効果的です。
生育中の散布剤については、予防剤を主体としたローテーション散布を行うようにして下さい。
ピシロック等の、予防効果の高い薬剤の利用もお勧めです。

銅成分を含む殺菌剤関係は、細菌性病害対策としても有効です。
治療効果は期待できませんが、初期の内から「予防主体」で用いる事で、幅広い病害予防対策になります。
中でもヨネポン水和剤は、 石灰分(カルシウム)が相当量含まれているので、初期の内から使っておくと、作物体が健全に育つのを助けてくれます。


表記の予防・治療の表記はあくまで目安です。
多発条件下で治療作用のある薬剤を散布しても、病害の侵攻を止められない場合が有ります。
基本的にはどの薬剤も予防的に用いる事が重要です。


アリエッティ水和剤(注意事項:ほうれんそう、わけぎに使用する場合、誤って高濃度で散布すると薬害を生ずることがありますので、所定濃度を厳守し、重複散布を避けて下さい。)のように、個別に注意事項がある商材も有ります。
ご利用前に注意事項の変更が無いか確認するようにしましょう。

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まとめ

今回はほうれんそうの重要病害である「べと病」にフォーカスして書かせていただきました。

ほうれんそうの重要病害または重要病害中にはいくつかありますが、べと病は非常に発生しやすい病気ですので、耕種防除と薬剤防除の2本軸で対策をとって頂ければ幸いです。


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