ピーマンやパプリカ等のホオズキカメムシ被害に注意しましょう。防除対策についてのまとめ。

夏場に入ってくるとカブトムシやクワガタムシ等、子供たちが喜ぶような人気昆虫の動きが活発になってくる頃ですが、同じように農業現場で問題となるような害虫関係も動きが活発になってきます。

時期はもう少し早くから問題になる事も有りますが、果菜類ではアザミウマやチョウ目害虫の他、カメムシ等も発生が目立つ事が有ります。

今回は果菜類(ピーマンやパプリカ)を加害するカメムシ「ホオズキカメムシ」についてピックアップしてみようと思います。

ホオズキカメムシは水田の稲を加害するカメムシ類と同じくらいメジャーなカメムシの1つです。
インターネットでもよく名前や画像が上がっていますね。



ナス科植物が大好き!ホオズキカメムシ

ホオズキカメムシは、ヘリカメムシ科のカメムシで、ホオズキを含むナス科作物(ナス・トマト・ピーマン等)を好んで加害する害虫です。
サツマイモなどのヒルガオ科作物、タバコやナシ等にも寄生するカメムシで、多くの作物を加害します。


成虫の大きさは12㎜程度。
カメムシの中ではあまり大きくない部類とされていますが、農業現場では大型種なほうだと思います。

日本国内では本州、四国、九州、沖縄、一部海外などで見られる害虫で、国内の場合、地域性はありますが6月~10月頃にかけて被害が多く見られます。

雌成虫は、葉裏に10~30粒程度、まばらに産卵します。
幼虫や成虫の加害としては、茎や葉から吸汁します。

農薬防除する場合であれば、ローテーションでネオニコチノイド系の防除剤を散布しておけば、それほど問題となる害虫ではありませんが、発生頻度や発生密度が高いカメムシなので、多発させてしまうと新葉や株の萎縮が起こり、作物の成長に影響が出ます。

また、カメムシ特有の悪臭を出す為、それが果実に付いてしまうといった被害も出たりします。


ホオズキカメムシは生活環にも特徴があるカメムシで、動物でいうところの一夫多妻制のようなハレム(ハーレム)を作ります。
縄張りのようなものもあり、昆虫の行動研究学等でも取り上げられている昆虫です。

このページではその辺りについては割愛しますので、詳しく知りたいという方は、ウィキペディア等にもよく書かれていますのでチェックしてみて下さい。



ホオズキカメムシの発生は、とにかく気持ちが悪い!

カメムシは不快害虫として嫌われる事が多い昆虫かと思います。

理由としては、形が気持ち悪いとか、(個体によっては)大きいからとか、悪臭が嫌だとか…
諸々あるかと思いますが、先にも挙げたようにハレムを作る害虫なので、防除が抜けてしまったりすると、気付くと大量にわいてしまう事が有あります。

虫さん大好き!という方は別でしょうが、そうでない方の場合、集団でいるカメムシを発見してしまったら絶叫ものだと思います。


画像は消毒が抜けてしまったパプリカ(カラーピーマン)の株です。
白っぽいのは3齢幼虫くらいでしょうか。
3齢幼虫くらいになってくると活発に動き回ります。
画像の中だけでも中央付近に1匹、左下辺りの花の近くに1匹、合わせて2匹確認できますね。
パプリカ カメムシ①

ちょっと葉っぱを動かすと居るわ居るわ………
幼虫の他に、茶色っぽく褐色になったのは終齢幼虫くらいでしょうか………
パプリカ カメムシ②

更に同じ株を探ってみると、あちこちにしっかり居ついています。
パプリカ カメムシ③

いやぁ…気持ち悪い。
画像だと断片的ですが、実際はかなりびっしり付いています。
1本の株(木)に数十匹ついているような事も有ります。

これが魚釣りだったら大漁で気分最高ですが、カメムシさんは勘弁ですね。


このようにホオズキカメムシは1つの株に対して集団で発生する場合が有ります。

よくよく観察していると、動き回っている個体は少なく、葉や茎を吸汁している個体が目立ちます。



ホオズキカメムシの耕種的防除対策について

ホオズキカメムシは、他のカメムシ類と同様、近隣の雑木林や雑草等から飛来してきます。

有機無農薬栽培をしているとか、バンカープランツを利用した天敵昆虫の利用を行っている等、何かしらの特別な理由が無いようであれば、まずは施設や圃場周辺のカメムシ類の隠れ家となる場所(住処)を無くす(除草する)ようにするのが効果的です。

近くの雑木林を無くす事は困難だと思いますので、畑周りの雑草防除に重点を置きましょう。
雑草の花粉につられてカメムシ類は飛来してきます。


施設栽培の場合、施設開放部に防虫ネットを付ける(既に付いている場合は、破れや抜け穴となる場所が無いかを確認する)方法が一般的です。
他の害虫対策にもなりますので、劣化の具合などもチェックしておくと良いでしょう。

どちらかというと家庭菜園向けの内容となりますが、露地栽培でも害虫の侵入や被害が多い場合は、防虫ネットをかぶせるといった対策が有効です。

防虫ネットを設置する場合、カメムシに限った事では無いですが、卵を産み付けられる前にかけておく必要が有ります。
害虫が飛来してくる前に設置するようにしましょう。


既に発生してしまっている場合は、密度が少ないようであれば人力で駆除するという方法も有ります。
一般的な対応としては、箸でつまんで取り除いたり、ガムテープの粘着面を利用して捕虫するという方法が有ります。
直接触るとカメムシが出す悪臭が手に付いて臭いので、触らないのが無難です。


余談ですがカメムシ類にも天敵がいます。

具体的には、カエルやトカゲ、鳥等といった動物や、カマキリ、クモ、トンボ、肉食系カメムシ等といった捕食系の昆虫です。
これらの他にも、カメムシ等の卵や成虫に寄生する寄生蜂等がいます。

ですが、これらの天敵をホオズキカメムシにピンポイントでぶつける事は困難です(各々が食べやすい・寄生しやすい獲物にアタックする為)。

自分で畑を細かくチェックできる小さい圃場面積であれば、天敵(有用昆虫や動物)を増やすような栽培スタイルも良いと思いますが、実際はなかなか難しいと思いますし、細かく手入れ・調整ができないと、圃場内外がゴチャゴチャしてしまって、かえって害虫の発生が増えてしまったりします。
また、それ以上に病害が発生して虫より被害が大きくなる事もあります。

細かくチェックできない規模の圃場面積や、人の手では処理が面倒だという害虫発生状況であれば、農薬による防除を行うと良いでしょう。
ホオズキカメムシの場合、見つけてからの対処でもしっかり防除できます。



ピーマン・パプリカを加害するカメムシ類に使える農薬について

パプリカ・カラーピーマンは、大きな作物分類だと「野菜類」で登録を取っている農薬と、「ピーマン」で登録を取っている農薬が使用できます。

但し、野菜類で登録を取っている殺虫剤の場合は、どちらかというとチョウ目害虫が主体となってきますので、こちらの記事では、作物名「ピーマン」の「カメムシ類」で登録を持っている主要な薬剤リストを紹介しておきます。

以下は2020年8月時点の登録内容となりますので、お使いになる場合は最新の登録内容を確認してから使うようにして下さい。
農薬の登録内容は、不定期に登録の変更や削除をされる場合が有ります。
IRAC:〇〇というのは農薬の薬剤系統グループナンバーになります。
農薬散布する場合は、ナンバーの異なる物をローテーションして使うようにして下さい(害虫の抵抗力を引きげない為)。


●アディオン乳剤
IRAC:3(A)

●アルバリン顆粒水溶剤(JA品はスタークル顆粒水溶剤)
IRAC:4A

●ダントツ水溶剤
IRAC:4A

●マラソン粉剤3
IRAC:1(B)


作物名ピーマンのカメムシ類で農薬登録を取得している物は意外と少ないです。


IRACコード3はピレスロイド系(合成ピレスロイド系(略して合ピレ)とも呼ばれます)。
昔からある薬剤系統で、幅広い害虫に対して効果が有ります。
一部の微小害虫に対して忌避的な作用もあります。
一般家庭向けのスプレー殺虫剤(例えばキンチ〇ール)等でもこの系統の物は多いです。

IRACコード4Aはネオニコチノイド系
浸透移行性があり残効が長いといった特徴が有ります。
アブラムシやアザミウマ対策剤としても使われる薬剤系統です。
ネオニコチノイド系の中でもアルバリンやダントツはカメムシ類に対して高い効果が有ります。
カメムシ類登録はありませんが、アルバリンやダントツは粒剤も有り、生育期中に使う事が出来ます(いずれも株元散布)。

●アルバリン粒剤

●ダントツ粒剤



IRACグループ1は有機リン系
ピレスロイド系同様、昔からある薬剤系統です。
良し悪しは有りますが、いわゆる「皆殺し系」の殺虫グループです。
カメムシ類登録は有りませんが、マラソン乳剤もピーマンでは使う事ができます。

●マラソン乳剤
マラソン乳剤は浸透移行性がありますので、吸汁性害虫に対して効果が有ります。
残効が短く残留効果は比較的少ないといった特徴が有ります。


薬価としては、ピレスロイド系よりもネオニコチノイド系や有機リン系の方が安価です。
残効としては有機リン系よりネオニコチノイド系の方が長くなります。

散布剤は、一般家庭菜園向けの小さい規格商品も有りますので、上手に活用してみて下さい。
アルバリンやダントツ等は小さい規格も有り、効果もシャープです。
カメムシ以外の微小害虫(アブラムシ・アザミウマ等)に対してもある程度の効果が有りますので家庭菜園でも使いやすい農薬です。


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まとめと余談

今回はピーマンやパプリカで被害が出やすいホオズキカメムシについてピックアップしてみました。

専業で栽培している方の場合ですと、大抵の場合はアブラムシやアザミウマ剤をローテーションに組んで散布していると思いますので、画像のようにカメムシが大量に発生するというケースは少ないと思います。

今回取り上げたカメムシは、どちらかというと家庭菜園で作られている場合のほうが発生や被害が大きいのではないかな?と思います。
木にたかって気持ち悪いという話や、果実を吸汁されて変色したとか汚いとか、そういったお話をよく伺います。

ホオズキカメムシは、防除の間隔があいてしまったり、葉が密集してしまって通気性が悪いような状態で油断していると、この時期には結構わいてしまう害虫です。

農薬の場合、アルバリンやダントツあたりは専業の方も使っている薬剤ですし、家庭菜園でも結構お勧めできるカメムシ対策剤ですので、ローテーションに向いていると思います。
家庭菜園の方であまりお金をかけたくないという場合にもお勧めです。

気温の変化とともにオオタバコガ等のチョウ目害虫の侵入も増えてきますので、カメムシ類に限らず定期的な防除をお勧め致します。


余談ですが、私は実験用に自分で食べる用の作物として、いくつかの品種を作っています。
薬害の出方を見たり、わざと無農薬で害虫の発生を見たりしています。
画像で紹介したパプリカもその中の1株です。

ちなみに、今回は効果と薬害有無を見たかったので、登録外使用になりますが、水田で使われているカメムシ専門剤「キラップフロアブル」を薄く希釈して、カメムシに向けてまいてみました。

結果は?というと、散布後1日で見事にいなくなりました!
さすが水田のカメムシ専門剤!
ちなみに葉の褐変や萎縮等の薬害も無し。
夕方に散布しましたが、8月のハウス内なので日中は超高温です。
マジか…やるなキラップ!という感じでした。

キラップフロアブルはプリンス剤と同じIRACコード(IRAC:2(B))で、フェニルピラゾール系の殺虫剤です。
登録作物としては水田作物の他にだいず・枝豆・かんきつ・りんご・かき・マンゴー・茶に登録が有ります。
カンキツやリンゴではアブラムシ類の登録も持っており、一部のチョウ目害虫にも効果が有ります。

家庭菜園でかきやみかんの木を植えている方も居るかもしれませんが、カメムシ被害が有る際はおすすめです。
稲作をしながら大豆や枝豆などを作っているような方も薬剤の使いまわしができるので取り回しが良いのではないかと思います。

ただし、かんきつの場合は「施設栽培および着色始期以降での使用は、果実に薬害を生じるおそれがありますので使用しないで下さい」という注意書きと「夏マシン油との混用はさけて下さい」という注意書きが有りますので、使用タイミングや混用には注意が必要となります。
また、ミツバチにも影響が有りますので、受粉促進を目的としてミツバチ等を導入している作物が近隣に有る場合は使用を避けるようにして下さい。

ミツバチ等の訪花昆虫に対する影響は、先に挙げているアルバリンやダントツ等も含めて大きな影響が有ります。
同様に注意して頂けると幸いです。

今回は自己責任・自分が食べる用として実験例を挙げてみましたが、本来、販売目的の作物での農薬の登録外使用は絶対にNGです。

農薬は人体への安全性を担保できるよう、色々な段階を踏んで登録を取得していますので、販売や人に譲渡する作物での登録外使用は行わないようにして下さい。

上記は私的な実験ですので、そうではない場合、作物残留などをチェックされたらアウトです。
市場や直売所出し、契約栽培の方は登録外での使用は絶対にやめて下さいね。


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