専業農家の方で決まった大きさのタンクに農薬や液肥を作り慣れている方はそれほど気にならないかもしれませんが、初めて農薬や液肥を扱う人や普段使い慣れていない方にとっては計算するのが面倒ですし、とっつきにくいと思います。
とはいえ、日本国内において農薬や液肥を全く使わずに農業をやるのは至難の業です。
ものすごく小面積で、時間と手間暇をかけられるなら無農薬も有りですが、虫の対処はできたとしても病気の対処ができなかったりします。
その逆のパターンも有るでしょう。
より状態の良い作物を作る為には液肥の利用もお勧めしたいところです。
簡単な資料ではありますが、今回はタンク水量、希釈倍数、使用液量についての早見表についてピックアップしていこうと思います。
目次
タンク水量・希釈倍数・使用薬量の関係について①
以下の表は小数点以下第二位を四捨五入した物となります。
表の左側のタンク容量は、自分の散布器具に入る水の量(自分が作りたい水量)です。
例えば、1Lの散布液を作りたい場合、農薬また液肥の登録が100倍だとすると、1Lの水に対して、液体の製品であれば10mlを入れます。
水和剤や顆粒水和剤の製品であれば、10gを入れます。
計算方法としては、1L(1000ml)÷100(倍)=10(mlまたはg)です。
25倍・50倍・100倍あたりの希釈倍数は、畑や道路わき、道端等の雑草を枯らすのに使う茎葉処理型の除草剤で用いられるような希釈倍数です。
例えば、バスタ液剤、ザクサ液剤、プリグロックスL、ラウンドアップ、タッチダウンIQ、草枯らし、サンダーボルト007等の除草剤を使う際に用いられるような希釈倍数になります。
一般的な草種であれば100倍~200倍くらいが基本ベースで、枯れにくい物は25倍~50倍くらいの希釈倍数で散布します。
「自分はしっかり除草剤を入れたけど枯れなかった!」という話を時々伺いますが、水量に対する投入液量が間違っている場合も有りますので、除草剤の希釈倍数については各製品のHPや製品ラベルをご確認下さい。
但し、除草剤関連は10アール当たりの投下薬量がベースとなっていますので、倍率や容量は有っているのにうまく枯れないという場合は、10アール当たりに散布する水量から自分が散布したい面積に置き換えた分を散布するようにしましょう。
抵抗性雑草の問題も有りますが、そうでない場合は倍率や水量が間違っているか、投下薬量が間違っているか、あるいは雑草処理のタイミングがズレているかといった所を疑って頂ければ良いと思います。
タンク水量・希釈倍数・使用薬量の関係について②
次に下の表についてですが、こちらは農薬(殺虫剤や殺菌剤)に用いられるような希釈倍数になります。
家庭菜園の方の場合、ハンドスプレーで消毒する方もいらっしゃいますが、500mlくらいのハンドスプレーで希釈液を作る場合だと、御覧の通り滅茶苦茶はかりにくいです。
小面積栽培の場合、殺虫剤や殺菌剤を散布するような場合は、最低でも5Lくらいの噴霧器があると扱いやすいと思います。
もしくは5~10L程度の計量バケツを用意して希釈液を作り、それをハンドスプレーボトルに入れ替えて使うといった方法が良いと思います。
小型の噴霧器で希釈液を作る場合は、スポイトやマイクロピペット、食品の粉物等を図るデジタルスケール等が有るとかなり便利です。
手持ちのタンクが大きかったとしても、例えば500gの製品で希釈倍数が1500倍といった中途半端な規格の場合、製品1袋で作れる希釈水量は750L分となります。
500Lタンクに薬剤を投入する場合は333.3gと中途半端な投入薬量となりますので、しっかり薬液を作りたいという方は、デジタルスケール等をご利用下さい。
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中途半端な希釈倍数製品の早見表
バリダシン液剤やフォリオゴールド、ベネセット水和剤、アリエッティ水和剤、ジマンダイセン水和剤等、中途半端な希釈倍数の製品がいくつかあります。
一応、参考用としてこれらの中途半端な希釈倍数についても早見表をアップしておきます。
ジベレリンやフルメット剤の希釈水量計算について(早見表)
植物成長調整剤のジベレリン・フルメット関係。
「ppmって何!?」となる方も多いと思いますが、メーカーさんの方で参考資料を作っていたりします。
以下はごくごく一般的に扱われるであろう内容をベースとした表です。
■ジベレリン粉末1包で作れる希釈水量について
ジベレリン粉末1包(50mg)の製品を5ppmの濃度に合わせて作る場合は、10Lの水に溶かしてくださいという内容になります。
登録作物によってppm濃度が異なりますので、そういった場合の早見表です。
■水量を2Lとした場合のジベレリン「粉末」の投下量
こちらは水量2Lを基準にした場合の投下薬量(使用する薬量)になります。
1Lの水量で作りたい場合は、下の投入量を÷2にして計算して下さい。
例えば、水量1L分だけジベレリン粉末を希釈したいという時は、25ppmだと1袋のうちの半分になります。
ジベレリン粉末の登録内容については、住友化学㈱のジベレリン粉末農薬ガイドページをご参照下さい。
■ジベレリン液剤1本で作れる希釈水量について
こちらはジベレリン液剤1本に対して、表記のppm濃度で使う場合、何リットルの水を用意したら良いか?という表になります。
登録作物が100ppmの登録内容だった場合、ジベレリン液剤40ml製品1本を丸々投入する水量は2Lという計算になります。
ジベレリン液剤の登録内容については、住友化学㈱のジベレリン液剤農薬ガイドページをご参照下さい。
■水量を2Lとした場合のフルメット液剤の投下量
こちらも同じように、表は2L基準の早見表なので、水量1Lで使いたい場合は÷2にして計算して下さい。
フルメット液剤の登録内容については、住友化学㈱のフルメット液剤農薬ガイドページをご参照下さい。
余談ですが、ジベレリンとフルメットについて、混用した場合の希釈液はどのくらい置いておけるのか?といった相談を受ける事が有ります。
メーカーさんの回答としては、化学反応が始まってしまう為、当日中もしくは遅くとも翌日くらいまでに使い切るようにして下さいという指導になっています。
例えばぶどうに対して使用するような場合、1回目の薬剤処理で余った希釈液は、2回目の処理(おおむね10日くらい)まで持たないという見解です。
効果を充分発揮させる為にも薬液はフレッシュな状態を保つようにして下さい。
中途半端な希釈倍数の場合、投下薬量を増やしたり減らしたりしても良いのか?
よく聞かれる話ですが、例えばこんなパターンです。
●800倍希釈の物を1000倍希釈にして薬液を作っても良いのか?
●600倍希釈の物を500倍希釈にして薬液を作っても良いのか?
上記のような場合、既定の希釈倍数より濃かったり薄かったりするわけですが、農薬については大抵の場合、メーカーさんで倍量試験等を行っていますので、既定の範囲よりちょっとくらい濃く入ってしまったくらいではまず薬害は出ません(但し、単剤利用で高温条件下や育苗期中等の薬害が起こりやすいような条件下でない場合に限ります…)。
ですが、農薬は残留性や安全性を担保する為に既定の倍率や使用方法を定めておりますので、厳密には規定外の使用はお勧めできません。
確実に薬害が起こらないという保証もできませんので、規定使用量より濃く使用したいという場合は、自家用・自己責任での使用となります。
また、既定の希釈倍数より薄く使ってしまった場合は、十分な薬効が得られない場合が有ります。
例えばゼットボルドーのような無機銅剤を使う際に、病気の予防と薬害リスクを避ける為に薄くマメに散布するという使い方をされる場合が有りますが、こういった剤は銅イオンでコーティングする事で予防効果を発揮する薬剤となりますので、発病していない状況下等、状況によっては有りです。
ただ、耐性菌が出やすい病害、例えばうどんこ病やべと病等のカビによる病害や、細菌性の病害を対象にしている薬剤については、過度に倍率を落とすと病源菌の取りこぼしが増えるので耐性菌リスクが高まります。
基本的には殺虫剤も殺菌剤も、いい加減な濃度で使うと耐性が出てしまう原因となりますので、過度に濃くしたり薄くしたりしないようにして下さい。
既定の倍率がベストです。
混用して使う場合は、それぞれの製剤でチェックが必要です。
農薬混用の一般的な注意点として、他の薬剤や金属成分などを含む液肥等と混合して使う場合は、タンク内で化学変化が起きる場合があります。
倍率や条件の有無問わず、絶対に害が出ないという保証はありません。
薬量の濃さ問わず、製剤同士の相性が悪くて固まってしまったり、ダマになってしまったり、ドロドロしてしまったりする場合も有りますし、沈殿してしまう場合も有ります。
また、混用する事で製剤の骨格が崩れて効果を落とす場合も有ります。
コストもかかりますしリスクも有りますので、少量かつ小面積で試してから全面利用するようにして下さい。
まとめ
という事で今回は、農薬や液肥の使用量や希釈倍数の計算が苦手な方の為の早見表という事でピックアップしてみました。
農薬を作る順番については、展着剤→フロアブル剤→乳剤→水和剤(テフニス)の順番で作っていきます。
但し、シリコーン系の展着剤を可溶する場合は、先に投入してしまうと泡立ちが激しくなり薬液を作りにくくなってしまう為、一番最後に投入するようにしましょう。
具体的には「まくぴか」や「ブレイクスルー」等の展着剤です。
ジベレリン液剤やフルメット液剤をご利用になる際は、1回で使い切るようにして下さい。
希釈液についても作り置きはしないようにしましょう。
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