水稲除草剤成分の雑草殺草スペクトラムについて①(主に初期除草剤に含まれる成分)

このページでは、主に水田除草剤の「初期除草剤」に用いられている成分の殺草スペクトラムについて紹介していこうと思います。

中には初中期一発剤に用いられている成分も有ります。

図表は一般小売店等が扱える商人系統の製剤チラシやJA品目の資料などから抜粋してまとめた資料になります。

成分量の多さや混合する製剤によって、殺草力や抑草力が変動したり、相乗効果を生じたりする物もあります。

メーカーさんの技術資料等では、例えば「△~〇」とか、「〇~◎」となっているような物も、ある程度まるめてあります。
空欄部分については、未確認部分となります。

メーカーさん了承のスペクトラム資料ではありませんので、あくまで一般的なスペクトラムを確認する為の目安程度にご覧いただければ幸いです。

各メーカー品は製剤の組合せでの総合評価を「薬剤効果」としておりますので、混合剤の場合、1成分のスペクトラムで欠けている物があったとしても、他の成分との補い合いで、圃場では十分効果が出ている物もあります。

詳細についてはお買いお求めの製剤の技術資料ないし、取扱店、メーカーさんに確認して下さい。



初期除草剤にも使われている「藻類対策成分ACN」の雑草殺草スペクトラムについて


表記はあくまで一例です。 スペクトラムに含まれない雑草などについては取扱店やメーカーさんへお問い合わせ下さい。


ACNは、キノン系の除草成分で、酸化力+酸化的なリン酸化力の解除と光合成の阻害で枯死させます。
藻類(アオミドロ)・表層剥離などに強いモゲトン粒剤に含まれる成分です。
スペクトラムとしては、ウリカワと藻類以外は効果としてはそれほど強くありません。

ACN製剤は、アオミドロ・ウキクサ類・表層はくり対策として使われている製剤です。

代表的な物はモゲトン粒剤
使用のタイミングとしては、①初期除草剤の処理時期②田植後10日~20日頃③中期除草剤の処理時期の3カ所が推奨されています(実際は必要最低限の処理で、やって1~2回です)。

土壌条件による影響は少ない剤ですが、極端な砂質土や極端な漏水田では使用しないよう注意点があります。


藻類を速効的にたたく製剤である為、残効が短いのも特徴です。

ACNの効果の発現から完了までは、おおむね3~4日程度です。
普通の一発除草剤のように幅広い拡散性は無い為、ある程度均一に処理する事が必要となります。

モゲトン粒剤の場合は、藻類が発生しているところにパラパラと落としたり、ある程度水田全面に均一に散布する習慣があるのでクレームは少ないですが、モゲトンジャンボを使う場合は拡散性が非常に悪い為、使い方に注意が必用となります。
製品チラシ等にも書かれていますが、わかりにくいという場合はお取引先やメーカーさんに頼ってみて下さい。

近年は温暖化等に伴い、早い内から藻類(アオミドロ)が発生するケースが増えており、ACN含有の初期剤を用いる地域も増えてきています。
ACNを含有する製剤としては、ブタクロールとの混合剤である「アークエース粒剤」やペントキサゾンとの混合剤である「クリアホープフロアブル」といった初期剤があります。

これらの初期剤もACNの効果(発現から完了まで)は、3日~4日程度です。
これでしっかり効果が出るのか?と疑問に思われる方も居ると思いますが、水田に水を張ると、圃場条件にもよりますが、比較的早い段階から藻類は発生しています。
目に見えない子供の状態というイメージですね。

その目に見えない状態の藻類を早めにたたいておくと、次の藻類の発生まで、おおむね2週間程度を要します。

ですので、残効の短いACN剤であっても、初期剤として必要となる残効(10日~2週間程度)は、ある程度保証される状態となります。

注意点としては、暖地であるほど草も藻類も発生が早い為、たたいてからの次発生が早くなるという点です。
そして、暖地でなくても麦あとに田植を行うような地域の場合は、麦作で残っている肥料成分+稲作に用いられる肥料成分で肥料濃度が高くなりがちで、かつ田植の時期も遅れる(暖かくなってくる)為、藻類が発生しやすくなります。
このようなケースだと、圃場条件にもよりますが、ACN含有の初期剤で担保される残効は2週間は持たない場合があります。

アオミドロの発生が多い圃場の場合は、ACN含有初期剤の後に、ピラクロニルやジメタメトリン等の成分を含む初中期一発剤につなぐと、藻類の抑制効果が延長されます。



ブタクロールの殺草殺草スペクトラムについて


ブタクロールは、酸アミド系の成分で、たんぱく質の合成阻害によって生育抑制を示し、雑草を枯殺する成分です。
一年生の広葉雑草や一部のカヤツリ科の雑草に効果を示します。

具体的に挙げると、SU抵抗性のアゼナ類、ホタルイ等に有効です。
また、ノビエ等の一年生雑草、マツバイ、ホタルイ、ミズカヤツリ、ヘラオモダカへの効果も高い成分となっています。
雑草発生前に処理しておく事で効果を発揮します。

ブタクロールが用いられている初期除草剤としては、
アークエース粒剤(ACN+ブタクロール)
マーシェット乳剤・マーシェット粒剤(ブタクロール単剤)
クラールEW・クラール粒剤(ジメタメトリン+ブタクロール)
サキドリEW・イネゼットEW・シンウチEW・シンウチ粒剤(ブタクロール+ペントキサゾン)
デルカット乳剤(オキサジアゾン+ブタクロール)

などの商品があります。

ブタクロール剤の代表的な商品としては、マーシェット乳剤が挙げられますが、植代直後の濁り水状態で直接散布できる登録と、は乾田直播の入水前10日~2日という登録を持っているのが特長です。



プレチラクロールの殺草殺草スペクトラムについて


プレチラクロールは酸アミド系の除草成分で、たんぱく質の合成阻害により雑草の生育抑制と枯殺を行います。
雑草が発芽するタイミングで最も強く効果を示します。

一年生の広葉雑草やカヤツリ科の雑草に効果のある成分です。
具体的には、ノビエ、抵抗性のアゼナ類、マツバイ、ホタルイ等に高い効果を示します。

プレチラクロールを含む初期除草剤としては、
エリジャン乳剤・エリジャンジャンボ・ソルネット粒剤(プレチラクロール単剤)
かねつぐ粒剤(プレチラクロール+シクロスルファムロン)
シング乳剤(ピリブチカルブ+プレチラクロール)
マキシーMX粒剤(プレチラクロール+メソトリオン)
農将軍フロアブル(JA品 ジメタメトリン+ピリブチカルブ+プレチラクロール)
パデホープ粒剤(JA品 ダイムロン+プレチラクロール)
ボンバード粒剤(JA品 シメトリン+ピラゾキシフェン+プレチラクロール)
ユニハーブフロアブル(JA品 プレチラクロール+ベンゾフェナップ)

などがあります。

プレチラクロールの代表剤を挙げると、エリジャンやソルネットあたりになるでしょう。
気象条件等に左右される事が少ない初期除草剤です。
体系防除のスタート剤といった位置づけとなっています。

近年は温暖化により雑草の出始めが早くなっている為、幅広い草種に対応できるよう、2成分以上の初期剤が好まれる傾向にありますが、コストパフォーマンス的には1成分剤の方が割安だったりします。

プレチラクロールを含む初期剤以外の水稲除草剤としては、
アピログロウMX剤(ピリフタリド+メソトリオン+プレチラクロール+ピラゾスルフロンエチル)
スラッシャ粒剤(ジメタメトリン+ピラゾレート+プレチラクロール+ブロモブチド)
ホクト粒剤(シハロホップブチル+ジメタメトリン+ピラゾスルフロンエチル+プレチラクロール)
カミオンMX(プレチラクロール+ピラゾレート+メソトリオン)
などの薬剤が有ります。



ペントキサゾンの殺草殺草スペクトラムについて


ペントキサゾンは、科研製薬㈱が開発したオキサゾリジンジオン系の除草成分で、プロトックス阻害剤(光要求型)です。
日照条件が良ければ(光がある下では)雑草に対して即効的な褐変・壊死症状をもたらします。
極発生始期の一年生雑草にも効果を示します。

得意とする雑草は、ノビエ、コナギ、広葉雑草、ウリカワなど。
オモダカ、クログワイ、マツバイ、アゼナなどにも効果が有ります。

ペントキサゾンを含有する初期除草剤としては、
スウィープフロアブル(ピラゾレート+ペントキサゾン)
スピンフロアブル(テニルクロール+ペントキサゾン)
ベアス粒剤・ベアスフロアブル・サインヨシフロアブル(ペントキサゾン単剤)
メテオ粒剤・メテオフロアブル(JA品 ペントキサゾン単剤)
イネショット粒剤(ペントキサゾン+ブロモブチド)
クサブエフロアブル・クサブエジャンボ(クミルロン+ペントキサゾン)
クリアホープフロアブル(ペントキサゾン+ACN)
サキドリEW・ショキニーフロアブル・シンウチ粒剤・シンウチフロアブル(ブタクロール+ペントキサゾン)
ダッシュワン粒剤・テマカットフロアブル(JA品 ダイムロン+ペントキサゾン)などといった物が有ります。

コストパフォーマンス的には、ペントキサゾンの含有量が少ないベアス辺りが使い勝手が良いと思います。
圃場の条件によっては2週間の残効は厳しいかもしれませんが、1週間から10日程度の残効は担保されていると思いますので、作付のタイミングが見合えば使い勝手の良い薬剤です。
JA品だと少し含有量の高いメテオ剤当たりが扱いやすい剤だと思います。

ペントキサゾンは1成分で幅広い草種に対応してくれるところが良いですね。

ですが1成分では弱い草種もあるので、より幅広く抑草したい場合は2成分以上の初期除草剤の使用をお勧めします。


ペントキサゾンを含む、初期除草剤以外の水稲除草剤としては、
クサスウィープ粒剤(ピラゾレート+ベンゾビシクロン+ペントキサゾン)
ヨシキタ剤(イマゾスルフロン+ブロモブチド+ペントキサゾン)
ゲキテツ剤(JA品 ピラゾスルフロンエチル+ベンチオカーブ+ペントキサゾン)
トップガンGT剤(JA品 ピリミノバックメチル+ブロモブチド+ベンスルフロンメチル+ペントキサゾン)
フォーマット剤(JA品 ダイムロン+ピリミノバックメチル+ベンスルフロンメチル+ペントキサゾン)
等の薬剤が有ります。



ピラクロニルの雑草殺草スペクトラムについて


ピラクロニルは、ドイツのシューリングAG社(現在のバイエル)によって発見されたピラゾリルピラゾール環を有する化合物で、八洲化学工業㈱(現在の協友アグリ㈱)に譲渡され開発されました。
ピラゾリルピラゾール骨格を持つダイアゾール系の化合物で、プロトックス阻害剤(光要求型)。
光のもとであれば、雑草に対して即効的な褐変、壊死症状を起こします。

スルホニルウレア系除草剤に抵抗を持ってしまったSU抵抗性雑草に対しても効果が有ります。
効果の発現が非常に早く、温度による効果変動が少ないのも特徴です。

特にノビエに対して高い効果があり、広葉雑草、カヤツリグサ科の雑草にも効果を示します。
藻類に対しては発生抑制効果があり、初中期一発剤にも広く用いられている成分です。

ピラクロニルを含有する初期除草剤としては、
兆粒剤・兆フロアブル・兆ジャンボ(ピラクロニル単剤)
ピラクロン粒剤・ピラクロンフロアブル(JA品 ピラクロニル単剤)など。

初期剤よりは一発剤で用いられる事が多い成分です。



テニルクロールの雑草殺草スペクトラムについて


テニルクロールは酸アミド系の除草成分で、たんぱく質の合成阻害により雑草の生育抑制を示します。

具体的には、ノビエをはじめとした一先生雑草とマツバイに対して高い効果が有ります。

テニルクロールを含有する初期除草剤としては、
ショッカーフロアブル(ダイムロン+テニルクロール)
スピンフロアブル(テニルクロール+ペントキサゾン)
ホットコンビフロアブル・ホットコンビ粒剤・ホットコンビジャンボ(テニルクロール+ベンゾビシクロン)
マットタブジャンボ(クミルロン+テニルクロール)
ワンベストフロアブル(テニルクロール+ピラゾキシフェン+ブロモブチド)
アルハーブフロアブル(JA品 テニルクロール単剤)など。

昔から定評のある薬剤だとワンベストフロアブルあたりが使われていますが、近年は比較的残効が長く赤米対策としても定評のあるホットコンビ剤も人気です。
また、タブ状発泡タイプで拡散性が高く、半量処理だと初期剤並みの効果・残効、全量処理だと初期一発剤なみの効果・残効と使い分けができるマットタブジャンボも効果面と使い勝手の良さで人気があります。




ジメタメトリンの雑草殺草スペクトラムについて


ジメタメトリンは初中期一発剤でも用いられている成分です。
トリアジン系の吸収移行性の除草成分で、雑草の根部、茎葉部(特に幼芽部)から速やかに吸収され、光合成、特にヒル反応を阻害する事で雑草を枯殺します。

藻類や表層剥離を抑制する製剤としても有名で、近年は初期剤でも用いられています。

ジメタメトリンを含有する初期除草剤としては、
クラールEW・クラール粒剤(ジメタメトリン+ブタクロール)
農将軍フロアブル(JA品 ジメタメトリン+ピリブチカルブ+プレチラクロール)があります。

ACNのようにその場にいる藻類の子供を最初に叩くことで一時的に水田をクリアな状態にする物と異なり、ピラクロニルやジメタメトリンは藻類を抑制する成分となります。

ジメタメトリンは藻類に対しては強い抑制力がありますが、一方でノビエには心もとない面もあり、バランス的には偏りが有ります。
ノビエよりもアオミドロ!という圃場には向いているかもしれませんが、ACNやピラクロニルが劣っているというわけでもないので、圃場の状態や作付ペース、どんな草に困っているかによって選択して頂くのが良いと思います。

ジメタメトリンを含有する初期剤以外の水稲除草剤としては、
スラッシャ粒剤(ジメタメトリン+ピラゾレート+プレチラクロール+ブロモブチド)
ウリホス粒剤(ジメタメトリン+ピラゾレート+プレチラクロール+ベンフレレセート)
クサホープD粒剤(ジメタメトリン+ピラゾレート+プレチラクロール)
ホクト粒剤(シハロホップブチル+ジメタメトリン+ピラゾスルフロンエチル+プレチラクロール)
キクトモ粒剤(カフェンストロール+ジメタメトリン+ダイムロン+ベンゾビシクロン)
シリウスターボ剤(JA品 オキサジクロメホン+ジメタメトリン+ピラゾスルフロンエチル+ベンゾビシクロン)
スパークスター粒剤(JA品 エスプロカルブ+ジメタメトリン+ピラゾスルフロンエチル+プレチラクロール)
などの薬剤があります。



ダイムロンの雑草殺草スペクトラムについて


ダイムロンは尿素系の除草成分で、一般的には混合相手となる成分の薬害軽減剤として知られていますが、イヌホタルイ、マツバイ等のカヤツリグサ科雑草に対しての除草補強成分としても用いられています。
成分の効果としては、雑草発芽抑制、生育抑制作用があります。

初中期一発剤等に用いられる事が多い成分ですが、ダイムロンを含む初期除草剤としては、
ショッカーフロアブル(ダイムロン+テニルクロール)
ダッシュワン粒剤・ダッシュワンフロアブル・テマカットフロアブル(JA品 ダイムロン+ペントキサゾン)があります。



ピラゾキシフェンの雑草殺草スペクトラムについて


ピラゾキシフェンはピラゾール系の除草成分で、雑草の茎葉部、根部から吸収され、白化現象を起こして枯死させます。

ピラゾール系の除草成分としては、ピラゾールやベンゾフェナップといった成分がありますが、どれも白化剤という位置付けです。
ノビエ、コナギ、ウリカワなどに対して効果が有ります。
カヤツリグサ科の雑草に対しても効果を示します。

ピラゾキシフェンを含む初期除草剤としては、
プレキープ粒剤・プレキープフロアブル(直播剤としても使われています。 ピラゾキシフェン+ベンゾビシクロン)
ワンベストフロアブル(テニルクロール+ピラゾキシフェン+ブロモブチド)
ボンバード粒剤(JA品 シメトリン+ピラゾキシフェン+プレチラクロール)があります。

ピラゾキシフェンは石原産業(株)の化合物という事もあって、直播剤としても使われているプレキープ剤が代表格です。
ちなみに上記3品目は全て石原品となります。

成分の特徴として、水稲に対する薬害がなく、一年生および多年生の水稲雑草の同時防除に卓効を示すといった特徴があります。



クミルロンの雑草殺草スペクトラムについて


クミルロンは日本カーリット㈱と丸紅㈱によって共同開発された尿素系の除草成分です。
一年生のカヤツリグサ科雑草、マツバイ、ホタルイ、クログワイ、ミズカヤツリ、シズイなどの多年生カヤツリグサ科雑草に対しての除草効果を有します。

作用機構は十分に理解されていませんが、雑草の基部・根部から吸収され、根部の細胞分裂および細胞伸長を阻害する事により、雑草の発芽抑制、根部伸長阻害、生育抑制によって枯死するものと考えられています。

クミルロンを含有する水稲除草剤としては、

マットタブジャンボ(初期剤 クミルロン+テニルクロール)
クサブエ剤(クミルロン+ペントキサゾン)

初期剤として用いられる事が多い成分で、クミルロンを含入する水稲除草剤はほとんどありません。



まとめ

今回は水稲除草剤の雑草殺草スペクトラム①という事で、主に初期除草剤に用いられている除草剤成分についてピックアップしてみました。

最初に挙げたように、除草剤の成分量や組合せによって効果面は異なりますし、相乗効果が出る場合が有ります。

圃場の条件や作付のタイミング、困っている雑草の草種を見て除草剤を選択して頂ければ幸いです。

表記のスペクトラム資料は、ある程度、各メーカーの商品資料等を参考にしたものとなっていますが、メーカー了承の資料ではありませんので、参考程度に活用頂ければ幸いです。


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