殺虫剤の効果発現についてのまとめ(アファーム乳剤、コテツフロアブル、ディアナSC、トルネードエースDF、サイハロン水和剤、フェニックス顆粒水和剤)

今回は殺虫剤の効果発現について書いていこうと思います。

アファーム乳剤
コテツフロアブル

ディアナSC
トルネードエースDF
サイハロン水和剤
フェニックス顆粒水和剤

最近の薬ではありませんが、各薬剤についてと、害虫がどのようにして殺虫されるかについてのおさらい的な内容について書いていこうと思います。

薬剤選定など、防除の参考にして頂ければ幸いです。



アファーム乳剤の殺虫効果・効果発現について

アファーム乳剤は、エマメクチン安息香酸塩という成分の殺虫剤です。
薬剤系統はマクロライド系。
IRACコードは6グループです。

幅広い作物登録が有り、育苗期中でも安心して使える安全性の高い殺虫剤です。
近年はコナガ対策場面でリバイバルしていますね。


薬剤スペックとしては、ハスモンヨトウ、オオタバコガなどの大型チョウ目、老齢幼虫に対して高い効果が有ります。

また、アザミウマ類、ダニ類、ハモグリバエ類など、複数の害虫についても同時防除ができる製剤です。

浸達性もある為、葉の内部にいる害虫に対してもたたくことができます。

効果の発現としては、安楽死タイプの殺虫剤です。

餌地にアファーム乳剤1000倍処理、1日経過後。
ハスモンヨトウ幼虫に対する様子↓
アファーム1000倍処理後
幼虫が伸び切って死んでいます。
やる気なくなってグッタリ…という感じでお亡くなりになります。


アファーム乳剤は殺虫スペックとしては速効的で効果も高いですが、残効が短いというデメリットがあります。
生産現場の感覚ですと、5日~6日といった感じです。
盛夏であれば、紫外線分解もたかくなり、もう少し短いと感じるかもしれません。

速効的で単発タイプの殺虫剤となる為、脱皮促進・阻害剤(IGR系薬剤)や、長期残効タイプの殺虫剤との組合せがお勧めです。

近年は日産グレーシア等の台頭もありますが、コナガ、オオタバコガ等に対しての効果には定評があります。
使用前日数も短い為、ローテーション散布だけでなく仕上げ的な散布も有効です。


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コテツフロアブルの殺虫効果・効果発現について

コテツフロアブルの有効成分は、クロルフェナピルという成分。
ピロール系の殺虫剤で、IRACコードは13グループです。

殺虫スペクトラムが広く、チョウ目、アザミウマ目、ダニ目、カメムシ目、コウチュウ目、ハエ目等に効果を示します。

害虫の体内にコテツの有効成分は、害虫の体内で代謝活性化され害虫の呼吸系を阻害します。
同系統の殺虫剤が無い為、交差抵抗性の心配がありません。

食毒と接触毒の両方の作用がありますが、チョウ目の場合は主に食毒として作用します。

作用の症状としては、動作の緩慢、吐液、下痢の症状が出ますが、最終的に黒化します。

餌地にコテツフロアブル2000倍処理、1日経過後。
ハスモンヨトウ幼虫に対する様子↓
コテツ2000倍処理後
吐液か下痢のような汚物が見られます。
培地から離れてお亡くなりになるといった印象です。


コテツフロアブルは浸透移行性はありませんが、植物によって浸達性を示します。

注意点としては、作物と生育ステージによって葉に白化や黄化の薬害症状を起こす場合があります。
作物によっては散布後に展開する葉やその後の生育、果実に対しては影響は出ませんが、ご利用になる際は、育苗期中の散布を避けるようにし、個別の注意事項をよく確認して下さい。

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ディアナSCの殺虫効果・効果発現について

ディアナSCは、スピネトラムという成分を含有しているスピノシン系殺虫剤です。IRACコードは5グループになります。
同系統の薬剤にスピノエース顆粒水和剤等があります。

殺虫スペクトラムとしては、チョウ目、アザミウマ目、ハエ目に対して活性が有ります。
多くの作物で収穫前日まで使用する事ができ、チョウ目害虫に対して、速やかな摂食阻害活性があります。

殺虫効果としては、害虫を異常興奮させて筋けいれんを引き起こし死に至らしめるといった作用が有ります。


餌地にディアナSCを2500倍処理、1日経過後。
ハスモンヨトウ幼虫に対する様子↓
ディアナSC2500倍処理後
吐液か下痢かわかりにくいですが、汚物が散乱してかなり汚らしいです。
こちらもどちらかというと培地から離れてお亡くなりになる感じです。

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トルネードエースDFの殺虫効果・効果発現について

トルネードエースDFは、インドキサカルブという成分を含有した殺虫剤です。
オキサダイアジン系の殺虫剤で、IRACコードは22Aというグループになります。

現在はDF(ドライフロアブル)製剤ですが、以前はトルネードフロアブルという商品で国内販売をしていました。

小型チョウ目や、ハスモンヨトウ、オオタバコガ、ウワバ類などの大型チョウ目に対しても効果が有ります。
中・老齢幼虫に対しても効果が有りますが、発生初期での使用がお勧めです。

この薬は、高い摂食阻害作用があり、少量の食害で数時間後には食害意欲がなくなり、2~3日ほどマヒ状態が続き、やがて死に至ります。

個体差にもよりますが、完全に死ぬまでに数日を要します。
食害が止まっていても外観上の変化が感じられない為、圃場だと生きているように見えますが、触ってみると動かない、動きが鈍いので薬が効いているのがよくわかると思います。

残効はおおむね10日~2週間程度。
散布乾燥後は降雨の影響も受けにくいといった耐雨性があり、紫外線に対しても効果が安定しています。

餌地にトルネードエースDFを2000倍処理、1日経過後。
ハスモンヨトウ幼虫に対する様子↓
トルネードエースDF2000倍処理後
1日程度では完全に死んだ個体ばかりではないので、食害が止まった麻痺状態といった感じの個体が多いですが、比較的餌地の上でお亡くなりになる傾向です。
トルネードは、Cの字になって体が曲がった状態で死にます。
散布後の経過次第ではその場にとどまったような感じなので、ちゃんと効果が出ていても効いていないといった印象を受けがちですね。

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サイハロン水和剤の殺虫効果・効果発現について

サイハロン水和剤は、シハロトリンという成分の殺虫剤です。
薬剤系統はピレスロイド系。
IRACコードは3Aグループになります。

合成ピレスロイド剤の効果として、速効的なノックダウン効果と、強力な接触毒、食毒作用があります。

果樹から葉菜、茶など、登録作物幅が広く、チョウ目害虫、アブラムシ、コナジラミ、スリップスにも有効です。

殺虫効果としては、神経を過剰に興奮させて死に至らしめるという作用が有ります。

倍率も2000~3000倍と低濃度であっても幅広い殺虫効果があるので非常に良い薬だと思うのですが、生産現場において500L未満のタンクで使う事を考えると、水和剤という剤型は計量しにくく今一つ使い勝手が悪いです。
非常にもったいない薬剤だと思います。

顆粒タイプにするか、250g規格または166gといった規格に作り直せばもっと生産現場で使ってもらえると思うんですけどね………


餌地にサイハロン水和剤を2000倍処理、1日経過後。
ハスモンヨトウ幼虫に対する様子↓
サイハロン2000倍処理後
異常興奮という事もあり、餌地から離れてお亡くなりになる傾向です。
合ピレ剤の残効はそれほど長くありません。
移行性も期待できないので隠れている虫に対しては不向きな所が有りますが、その場に見える虫に対しては速効性もあり有効です。



フェニックス顆粒水和剤の殺虫効果・効果発現について

フェニックス顆粒水和剤は、フルベンジアミドという成分の殺虫剤です。
薬剤系統はジアミド系。
IRACコードは28グループに分類されます。

幅広いチョウ目害虫に対する効果があり、メインは幼虫ですが、成虫に対しても微弱ながら活性を持っています。
チョウ目以外の害虫ですと、ニジュウヤホシテントウ、ヤサイゾウムシといったコウチュウ目にも活性が有ります。


残効も長く(おおむね2週間程度)、天敵や蚕を除く有用昆虫に対しても安全性の高い薬剤です。

コナガの抵抗性がつくまではスーパー殺虫剤という位置付けで全国各地で連用されました。
コナガを含む一部のチョウ目において、地域性はありますが薬剤抵抗性を持つ個体が確認されています。

非常に優れた薬剤でも生産現場での無作為な連用により潰されてしまうという現状を再認識する形となり、近年はローテーション散布やRACコードの分類が非常に意識されるようになってきています。


殺虫効果としては、筋肉収縮による殺虫作用を有します。
外見上は体が縮んだ状態となります。
接触的な取り込みによる活性もありますが、主に食毒によって効果を発揮します。

作物体内への浸透移行性はありませんので、薬剤散布をする際は、展着剤等を用いて作物体にまんべんなくかかるように散布して下さい。
薬剤散布後の揮発による殺虫効果は有りません(ガス化殺虫効果は有りません)。


餌地にフェニックス顆粒水和剤を4000倍処理、1日経過後。
ハスモンヨトウ若虫に対する様子↓
フェニックス顆粒水4000倍処理後
非常によく効いています。
他の薬剤で比較するとよくわかりますが、画像左の幼虫のように一部で筋収縮も見られます。

フェニックス顆粒水和剤は新葉に対する移行性がありませんので、少し作物体が成長してきたタイミングで使うのがお勧めです。
浸達性も強くは有りませんので、浸透するような展着剤と組み合わせると葉裏の虫に対しても有る程度カバーできると思います。
結球作物の場合、定植後から結球始頃のタイミングがお勧めとなります。
果菜類の場合は、雄花抽出期頃の使用がお勧めです。


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まとめ

以上、今回は殺虫剤の効果や発現具合について紹介させて頂きました。

ジアミド系薬剤は近年沢山発売されていますが、フェニックス顆粒水和剤もまだまだ捨てたものでは無く、ハスモンヨトウ、オオタバコガに対しては定評が有ります。

キャベツ、レタス、トウモロコシ、果菜類場面においては非常に良い薬です。

ジアミド系薬剤は、コナガ、ヨトウ、シロイチモジヨトウ等、地域によっては抵抗性個体が確認されておりますので、心配な場合は各県の病害虫防除所やJA、販売店にご確認下さい。

その他の薬剤についても、地域によっては感受性の低下が確認されている物もあります。

県によっては感受性低下試験を定期的に行っておりますので、県の病害虫防除所などにご確認下さい。


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