今回はキャベツのべと病についてスポットを当てていきます。
病害についての生態、感染しやすい条件についてピックアップし、登録農薬情報などについて紹介していきます。
目次
キャベツ・べと病について
キャベツのべと病は、糸状菌(かび)によって引き起こされる病害です。
べと病菌は、カビの中でも絶対寄生菌というくくりの菌で、生きた野菜の細胞にのみ寄生します。
キャベツのべと病を侵すのは、Peronospora parasitica(ペロノスポラ パラシティカ)という糸状菌で、この菌は、ブロッコリーやカリフラワーなども侵します。
べと病菌にはいくつかの種類がありますが、例えば、はくさいを侵すべと病菌「Peronospora parasitica(ペロノスポラ パラシティカ)」は、カブやコマツナ等を侵しますが、キャベツ、ブロッコリー、カリフラワーにはあまり発生しないといった特徴が有ります。
キャベツのべと病は、種子伝染する事も考えられています。
キャベツのべと病は、育苗期間中から結球後まで、条件さえマッチすれば、作物の生育時期を問わず発生し問題となります。
発生経路は、主に外葉や下葉など、土壌に近い部分から感染します(結球葉にも感染する事が有ります)。
育苗期間中の感染は病害の進展が早い為、特に注意が必用です。
苗に寄生した場合は、葉の表面の汚れたような症状や葉裏に灰色がかったカビを生じる為、目視でも判断が付きやすいです。
育苗期間中のべと病感染は、生育が著しく阻害される為、注意が必用です。
発芽直後の苗が感染すると枯れる事もあります。
生育期間中のべと病については、淡黄褐色や黒褐色で、葉脈にそった病斑が特長的です。
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キャベツ・べと病が発生しやすい条件について
キャベツのべと病菌は、被害株中での菌糸状態、土壌中での卵胞子状態で越年し、気温が3℃~25℃で降雨があると分生胞子を作り出し空気伝染します。
分生胞子は7~13℃で発芽しやすくなり、葉の気候や表皮細胞の合わせ目から侵入し被害が拡大していきます。
一般的には、発病適温は10℃~15℃くらいで日中の気温が24℃以下、夜間温度が8℃~16℃くらいの時に発病が多くなるとされています。
発病条件としては、比較的低温で、降雨が続くような時。
施設内やビニール等の被覆資材内であれば湿度がかかる時。
ひとつの目安ですが、上記の条件下で9時間以上葉面が濡れているような状況が続くと発病が助長される為注意が必用です。
長く降雨が予定されるような時や、降雨後に少しモヤっとした時などは発病リスクがありますので、前後での農薬防除を行うようにして下さい。
また、結球終期に肥料切れになると発病が助長されるので、肥料過多はダメですが、肥料バランスにも注意が必用です。
キャベツ・べと病対策について
■育苗期間中の対策について
●過潅水を避けるようにしましょう。
過剰な水やりは、根腐れや立枯れ病など、他の病害を引き起こす原因にもなりますので過剰には与えないように配慮して下さい。
●換気に注意する
セルトレイ栽培の場合、密植状態となりますので、風通しや換気には特に注意して下さい。
●怪しい株を見つけ次第除去し、農薬による防除を行う
既に胞子が飛んでいる可能性がありますので、被害が拡大する前に農薬による防除を行って下さい。
育苗期間中は発病前の予防的防除が重要です。
■定植前後から収穫期までの対策について
●圃場施肥は、窒素過多にならないよう注意する。
他の病害を引き起こす原因になりますので、基本的に窒素過多はNGです。
●換気に注意する。
ハウス内、トンネル展開中は空間内が蒸れる為、葉面の濡れが続く原因になります。
適度な換気を行って葉面の濡れが続かないようにしましょう。
●怪しい株を見つけ次第除去し、農薬による防除を行う。
治療効果のある薬剤を主体とした散布を行って下さい。
●肥料切れに注意する
株の生育低下につながり病害を引き起こす原因となります。
追肥を行うなどの対策をとりましょう。
■収穫後の対策について
●被害株や残渣の除去を行う
べと病菌は被害残渣や土壌に残って越年します。
可能な限り圃場外で処分するよう配慮して下さい。
●土壌消毒、菌体資材の投入を行い圃場メンテナンスを行う
他の病原菌対策にもなりますので、被害が大きかった圃場については、これらの対策をとることをお勧めします。
キャベツ・べと病に対する登録農薬について
※農薬登録は変更または抹消される場合が有りますので、ご使用の際は、メーカーHPなどで最新の農薬情報をご確認下さい。
表記の予防または治療は、病気の進展をおさえる目安程度にご参照下さい。
■キャベツ・べと病 主要登録薬剤について
●オロンディスウルトラSC(2000倍/7日前/2回以内 オキサチアピプロリン(F:49)+マンジプロパミド(F:40))予防+治療
オロンディスウルトラSCは別記事でも紹介しています。
●カンパネラ水和剤(JA品 750~1000倍/30日前/2回以内 ベンチアバリカルブイソプロピル(F:40)+マンゼブ(F:M03))予防+治療
●シグナムWDG(1500~2000倍/7日前/2回以内 ピラクロストロビン(F:11)+ボスカリド(F:7))予防+治療
●シトラーノフロアブル(1000~1200倍/14日前/2回以内 有機銅(F:M01)+TPN(F:M05))予防
●ジマンダイセン水和剤(400~600倍/30日前/3回以内 マンゼブ(F:M03))予防
●ダコニール1000(1000倍/14日前/2回以内 TPN(F:M05))予防
●ピシロックフロアブル(1000倍/前日/3回以内 ピカルブトラゾクス(F:U17))予防
ピシロッックフロアブルは別記事でも紹介しています。
●フェスティバル水和剤(JA品 2000倍/前日/3回以内 ジメトモルフ(F:40))予防+治療
●フォリオゴールド(800~1000倍/14日前/2回以内 メタラキシルM(F:4)・TPN(F:M05))予防+治療
●プロポーズ顆粒水和剤(JA品 1000倍/14日前/2回以内 ベンチアバリカルブイソプロピル(F:40)+TPN(F:M05))予防+治療
●ベジセイバー(1000倍/14日前/2回以内 ペンチオピラド(F:7)・TPN(F:M05))予防+治療
●ベネセット水和剤(750~1000倍/30日前/2回以内 ベンチアバリカルブイソプロピル(F:40)+マンゼブ(F:M03))予防+治療
●ベフドー水和剤(500倍/14日前/3回以内 イミノクタジン酢酸塩(F:M07)+無機銅(F:M01))予防+治療
●ペンコゼブフロアブル(500~600倍/30日前/3回以内 マンゼブ(F:M03))予防
●メジャーフロアブル( 2000倍/3日前/3回以内 ピコキシストロビン(F:11))予防+治療
●ヨネポン水和剤(500倍/7日前/5回以内 有機銅(F:M01))予防
●ライメイフロアブル(2000~3000倍/7日前/4回以内 アミスルブロム(F:21))予防
●ランマンフロアブル(2000倍/3日前/4回以内 シアゾファミド(F:21))予防
●リドミルゴールドMZ(1000倍/30日前/3回以内 マンゼブ(F:M03)+メタラキシルM(F:4))予防+治療
●レーバスフロアブル(2000倍/7日前/3回以内 マンジプロパミド(F:40))予防
■野菜類登録薬剤にもべと病登録があります。
●ゼットボルドー水和剤(500倍/-/- 無機銅(F:M01))予防
●クプロシールド(1000~2000倍/-/- 無機銅(F:M01))予防
まとめと薬剤に対する補足
今回は、キャベツのべと病にスポットを当てて紹介させて頂きました。
少しでも防除の参考になればありがたい限りです。
■薬剤に対する補足として
育苗期間中の初期防除剤としては、フォリオゴールドあたりが一般的です。
オロンディスウルトラSCは、予防治療に優れますが、メタラキシル剤と比べると移行性がゆっくりなので、生育が旺盛な初期段階に使うよりは、少し葉が進展しからの使用がお勧めとなります。
ベンチアバリカルブ剤についても病気に対するパンチ力があります。
定植後の防除では非常に有効な薬剤です。
予防主体の薬剤ではありますが、ピシロックフロアブル、ランマンフロアブル等もポイント防除に有効な薬剤です。
ストロビルリン系薬剤(F:11グループ)は、育苗期間中の使用は薬害リスクが有る為、避けるようにしてください。
どちらかというと生育中後期の使用がお勧めです。
高温時の散布や、いつまでも葉面が濡れた状態が続くと薬害リスクが高くなりますので、散布する際は涼しい時間を選んで、散布後は早めに乾燥するよう換気に注意して下さい。
銅剤の類については、結球後に使用すると汚れや薬害リスクがありますので、結球前までの使用に留めるのが無難です。
こちらもいつまでも葉面が濡れたような状態が続くと、銅イオンの放出で葉焼け等の薬害を生じる場合が有ります。
できるだけ早く乾くよう換気に注意しましょう。
また、無機銅剤などを殺虫剤と混用する場合、物によっては混用後すぐ薬散しないとタンク内で化学変化し、相手の薬剤効果を落とす原因にもなります。
混用施用する際は、タンク内に放置せず、できるだけ早く使うようにして下さい。
変わり種の銅剤としてはヨネポン水和剤があります。
銅成分の予防効果に加えて、成分内にカルシウムを相当量含んでいる為、作物の健全化にも貢献します。
展着性もあり、他の銅水和剤と比べると比較的汚れにくい製剤となっています。
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