なし・リンゴの黒星病(赤星病も同時防除)、ネギのさび病等の専門剤「カナメフロアブル」

今回は、2020年3月に発売されたカナメフロアブルについて紹介していこうと思います。

各メーカーさんで色んな広告を作ってますが、最近のメーカーさんのチラシは独創的ですよね。
生産者以外もターゲットに入っているのかしら?と思ってしまうようなデザインです。

名前は短くてキャッチーだと思うので近年の農薬としては覚えやすいかな?なんて個人的には思います。

さて、話を主線に戻しましょう。

このカナメフロアブルは、近年流行りのSDHI剤です。
SDHI剤は各メーカーから販売されており、その特徴は色々ありますが、おそらくこのカナメフロアブルが最後の口になるのではないかなと思います。

古い剤だとカンタスDF、2000年以降はアフェット、オルフィン、パレード、ネクスター、ケンジャ等、正直SDHI剤はもうおなかいっぱいだよ!という方も多いと思いますが、他の製剤と丸被り!というわけでは無く、お勧めできるポイントがいくつか有りますので、ローテーションの参考にして頂ければと思います。



カナメフロアブル・インピルフルキサムについて

カナメフロアブルは、住友化学が開発した「インピルフルキサム」という新規殺菌成分を含有したフロアブル製剤です。



FRACコードは7に分類されます。
病原菌のエネルギー生産の過程を阻害する作用を持つ「コハク酸脱水酵素阻害剤(SDHI剤)」です。

近年の殺菌剤では珍しく、医薬用害劇物という分類になります。

商品規格は125mlボトル。
登録倍率は4000~8000倍という事ですが、生産現場では防除効果を安定・高める為、4000倍使用(500Lタンクに1本目安)が推奨倍率になっていくと思います。



カナメフロアブルの登録内容について

カナメフロアブルは1剤で幅広い作物をカバーし、多くの作物で前日登録を有します。

■りんご
黒星病・すす点病・すす斑病・斑点落葉病
4000倍・使用量200~700L/10a・散布
収穫前日まで・使用回数3回以内

■なし
黒星病・赤星病
4000~8000倍・使用量200~700L/10a・散布
収穫前日まで・使用回数3回以内
黒斑病
4000倍・使用量200~700L/10a・散布
収穫前日まで・使用回数3回以内

■もも・ネクタリン
灰星病
4000~8000倍・使用量200~700L/10a・散布
収穫前日まで・使用回数3回以内

■ぶどう
黒とう病・さび病
4000倍・使用量200~700L/10a・散布
収穫前日まで・使用回数3回以内
灰色かび病
4000~8000倍・使用量200~700L/10a・散布
収穫前日まで・使用回数3回以内

■かんきつ
灰色かび病
4000~8000倍・使用量200~700L/10a・散布
収穫前日まで・使用回数3回以内
そうか病
4000倍・使用量200~700L/10a・散布
収穫前日まで・使用回数3回以内

■かき
うどんこ病
4000倍・使用量200~700L/10a・散布
収穫前日まで・使用回数3回以内

■たまねぎ
灰色かび病・小菌核病
4000倍・使用量100~300L/10a・散布
収穫前日まで・使用回数4回以内
灰色腐敗病
4000~8000倍・使用量100~300L/10a・散布
収穫前日まで・使用回数4回以内

■ねぎ
さび病
4000~8000倍・使用量100~300L/10a・散布
収穫前日まで・使用回数4回以内
白絹病
4000~8000倍・使用量100~300L/10a・株元散布
収穫前日まで・使用回数4回以内

■豆類(種実、ただし、らっかせいを除く)
菌核病・灰色かび病
4000倍・使用量100~300L/10a・散布
収穫前日まで・使用回数4回以内

■豆類(未成熟)
菌核病・灰色かび病
4000倍・使用量100~300L/10a・散布
収穫前日まで・使用回数4回以内

■きく
白さび病
4000~8000倍・使用量100~300L/10a・散布
発病初期・使用回数3回以内

■麦類
雪腐小粒菌核病
2000~4000倍・使用量60~150L/10a・散布
根雪前・使用回数2回以内
赤さび病
4000~8000倍・使用量60~150L/10a・散布
7日前まで・使用回数2回以内
総使用回数4回以内(根雪前は2回以内、根雪後は2回以内)

■ばれいしょ
黒あざ病
400倍・植付前・1回以内・種いも瞬間浸漬

■てんさい
根腐病
800~1600倍・使用量1L/ペーパーポット1冊(3L/㎡)
定植前・1回・灌注
根腐病・葉腐病
4000~8000倍・使用量100~300L/10a
収穫7日前まで・4回以内
総使用回数5回以内(灌注は1回以内、散布は4回以内)


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カナメフロアブルの特徴、得意な病害について

カナメフロアブルは幅広い病害に対し、優れた防除効果と優れた予防効果、治療効果を有します。

中でも担子菌である(リゾクトニア病害、白絹病、さび病、赤星病等)やリンゴの黒星病等に対して高い防除効果を示します。

スペクトラムとしては、灰色かび病、菌核病、リンゴの褐斑病、うどこ病に対しても高い効果を有します。

但し、卵菌類である「べと病」や「疫病」に対しては効果が有りません。
炭疽病菌に対しても△傾向です。


浸達性と浸透移行性、耐雨性があります。

一般的な付着性の展着剤を用いた試験では、葉内移行性が確認されています。
また、リンゴの黒星病に対する試験では、薬液散布3時間後に50mmの降雨処理をしても90%以上の防除効果を出している事例が有ります。

多くの作物で収穫前日まで使える為、ハンドリングの良い薬剤です。

葉菜類よりは果樹作物が登録の主体となっていますが、前日登録というのは使い勝手が良いと思います。
タンク容量にもよりますが、4000倍使用の場合、500Lタンクに1本で済む為、計量も楽です。
ネギを主体に栽培されている方などは使い勝手が良いかもしれません。



果樹の病害にカナメフロアブルを押せるポイントについて

作物別におすすめポイントをピックアップしてみましょう。


■りんごのターゲットは黒星病、赤星病、モニリア病、うどんこ病

DMI剤(農薬の成分に「~ゾール」と付くEBI系統の薬剤)やQoI剤(ストロビルリン系薬剤)に耐性をもってしまった黒星病の対策剤としてお勧めできます。

他社のSDHI剤と比べると、黒星病に対する基礎効力や治療効果が高く、赤星病の同時防除も行えるという点で、他のSDHI剤と差別化ができます。


■なしのターゲットは赤星病と黒星病

りんごと同様に、黒星病+赤星病の同時防除薬剤としてお勧めできます。
なしの黒星病は超重要病害の1つですので、防除効果の高い薬剤はローテーションには必ず必要になると思います。
黒星病は発病させてしまったらアウトなので、予防を主体にローテーションに組み込むと良いでしょう。


■ぶどうのターゲットは黒とう病、さび病、灰色かび病

これらの病害に対しても基礎活性は高い薬剤ですので、ローテーションの1剤としてお勧めできます。
ぶどうも病害を出してしまうと商品価値を落としてしまう為、予防主体にローテーションを組むと良いでしょう。


■もものターゲットは灰星病、黒星病

先に挙げた作物と同じように同時防除ができる薬剤ですので、ローテーションの1剤としてお勧めできます。


葉菜等の病害にカナメフロアブルを押せるポイントについて

作物別におすすめポイントをピックアップしてみましょう。


■ネギのターゲットはさび病、白絹病

さび病と白絹病はネギの重要病害です。
これら2つの病害は、カナメフロアブルの基礎活性が高い病害となりますので、ローテーション防除にお勧めできます。

特に白絹病は、アフェットFLが1L/㎡の株元潅注登録(1反=10aは1000㎡になる為、薬液は1000L必用)なのに対し、カナメフロアブルは100~300L/10aの水量の株元散布登録となっています。
カナメフロアブルの試験データによると、アフェットFLよりも少ない散布液量でも効果は同等以上で性能も高い薬剤となっています。

ちなみに近年ネギの黒腐菌核病等で注目されている同じSDHI剤のパレード20FLは、黒腐菌核病、黒斑病、さび病、葉枯病、小菌核腐敗病の登録はありますが、2020年3月現在、白絹病の登録はありません。
パレードの場合、水量300L散布が基本となります。
カナメについては水量の指定はありませんが、白絹病は地際に生じる病害なので、少ない水量よりは多い方が無難でしょう。


■たまねぎのターゲットは灰色かび病と灰色腐敗病

他のSDHI剤でのローテーションもお勧めですが、
ロブラールとの比較試験で優っている事例も多く、効果も安定しています。
予防的なローテーション散布を行っておく事で発病リスクを下げるのに貢献できるでしょう。


■きくのターゲットは白さび病

きくの白さび病は、耐性菌が発生しやすいという問題と、QoI剤の感受性低下が問題視されてきている為、さび病に対する効果の高い薬剤は代替えとしてお勧めできます。
発病後の処理よりは、4000倍での予防散布でのローテーション散布がお勧めです。
但し、SDHI剤も耐性菌リスクが無いというわけではないので、ローテーション防除は必ず行うようにして下さい。



有用昆虫に対する影響有無について

具体的な影響は現場で普及されてくると変わる場合も有りますが、以下の有用昆虫に対してはメーカーの登録申請用データだと響無しと判断されているようです。

セイヨウミツバチ(成虫) 急性接触毒性 → 影響無し

セイヨウミツバチ(成虫) 急性経口毒性 → 影響無し

蚕(4齢) 急性経口毒性残留試験 → 中毒症状無し
ただし繭軽量化傾向・処理3日後以降の桑葉給餌で影響無し。
注意事項として「桑葉にかかった場合は3日間は給餌しない」と記載。

タイリクヒメハナカメムシ(成虫) 急性毒性 → 影響無し

チャバラアブラコバチ(成虫) 急性毒性 → 影響無し

ミヤコカブリダニ(成虫) 急性毒性 → 影響無し

スワルスキーカブリダニ(成虫) 急性毒性 → 影響無し

リモニカスカブリダニ(成虫) 急性毒性 → 影響無し

チリカブリダニ(成虫) 急性毒性 → 影響無し

オンシツツヤコバチ(成虫) 急性毒性 → 影響無し

マメコバチ(成虫) 急性毒性・急性接触毒性 → 影響無し



カナメフロアブルの今後の作物拡大・病害拡大予定は?

現在の登録では果樹主体といったイメージが強く、りんごやなしなどを作付けしているエリアにおいては非常に期待値の高い薬剤となっていますが、葉菜類地域においては今のところそこまで期待値の高い薬剤ではありません。

ねぎ登録は有っても葉菜類を作付けしている生産者の方からすると他の作物登録が無い為、使い勝手の悪い剤というイメージが強いと思います。

ねぎのさび病も出る年と出ない年がある為、アミスター20FLやメジャーフロアブルのようなストロビルリン系薬剤のようにべと病まで登録を持っていれば使い勝手が良いけれど、さび病だけでは在庫にしておいてもなぁ…という方もいらっしゃるのではないか?と思います。

住友化学㈱としても、この部分は視野に入っているようです。

ねぎについては、他のSDHI剤と同様に、黒腐菌核病の適用拡大は視野に入っているようです。
また、レタス等の他の作物も適用拡大しなければ他のSDHI剤に負けてしまうという考えもある為、近々では無いにせよ、他の葉菜類への適用拡大も十分あり得ると考えられます。

まだ発売したばかりですので、もう少し様子を見ていきましょう。



まとめ

ということで、今回は新規殺菌剤のカナメフロアブルについて紹介しました。

SDHI剤の中でも「担子菌類」や黒星病に強いという所が強みな商材で、近年の薬剤には珍しい「劇物登録薬剤」となっています。

予防+治療+浸達性+浸透移行性+耐雨性のある近年発売されたSDHI剤としては、オルフィンフロアブルパレード20FLに次いでカナメフロアブルで3剤目となります。

個人的な好みですが、浸達性、移行性、耐雨性のある薬剤は防除ロスを防ぐのに貢献するので好きです。

予防+治療とありますが、基本的には予防散布が鉄則です。

そのあたりを加味して使っていただければとても良い薬だと思います。


混用事例については、新規商材という事もあり、事例が少ないのが現状です。
技術資料などには混用事例が乗ってくると思われますが、あずきの事例で一部の無機銅剤との混用において微小褐点が見られた例があるようですが、落葉等はなく実使用上の問題は無いという事例を含みます。

3混、4混、5混したいというのが生産現場の意見だと思いますが、混用実績(混用薬剤・混用の実例数)の少ない薬剤ですので、果樹に用いる場合は特に慎重に扱って頂きたいところです。


ハンドリングの良さという部分については、一般的なメーカーの戦略として、葉菜類と果樹とで薬を分けて出すケースが多い中で、カナメフロアブルは1剤で幅広くカバーできる薬となっています。
販売する側からすると良し悪しがあると思いますが、生産者目線だと登録は少ないより多いに越したことはないので良しとしておきましょう。


現場ウケしそうな部分としては黒星病と赤星病の両方で高い効果が期待できそうなので、特に果樹場面では重宝されそうな感じも有りますが、ネギの使用場面やキクの使用場面も十分使いどころがあるのではないか?と思います。
麦の赤さび病も重要病害の1つですので、あまりコストはかけたくないという意見も多いと思いますが、本当に困っているところであれば活用してみて下さい。

SDHI剤の中ではある程度「病気特化型タイプ」な薬だと思いますので、特定の病害に対するポイント防除で活用頂ければ良いのではないかな?と思います。

防除ローテーションの参考にして頂ければ幸いです。


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