今回はキャベツの黒斑細菌病についての生態と防除対策について紹介していきます。
登録農薬についても紹介していますので、目次からご利用ください。
目次
キャベツ黒斑細菌病の生態について
キャベツ黒斑細菌病は、名前の通り細菌性の病害です。
アブラナ科の黒斑細菌病は、「Pseudomonas syringae pv. maculicola(シュードモナス シリンゲ 病原型 マクリコーラ(Psm))」と「P. cannabina pv. alisalensis(シュードモナス カンナビナ 病原型 アリサレンシス(Pcal)」という2つの細菌が確認されています。
各県の病害虫防除資料、種苗関係のHP、農薬メーカー等の技術資料では、Pseudomonas syringaeが一般的で、Pcalについては後発の病原細菌となります。
黒斑細菌病は、コマツナ・キャベツ(グリーンボールを含む)・ブロッコリー・ダイコン・カリフラワーなど、アブラナ科作物に発生する病害です。
P. cannabinapv. alisalensisは、緑肥用エンバクにも病原性を有します。
キャベツ黒斑細菌病の発病適温は、25℃~30℃。
発病初期は、葉に水浸状の小斑点ができます。この小斑点は次第に拡大し、融合して不正形の壊死斑となります。
病斑の色は黒褐色や紫灰褐色で、周囲は明瞭。病斑が進むにつれ被害痕部分が破れやすくなります。
発生期間としてはロングスパンで、育苗期の苗時期から収穫期までの生育ステージで発生します。
厳寒期と盛夏以外の栽培期間中に発生します。
関東の場合、その年の気候によっても発生は異なりますが、4月中下旬~7月頃、9月中下旬~11月頃に発生が見られます。
病原菌の侵入経路は、気孔・水孔・傷口から感染します。
種子伝染もある病害です。
キャベツの場合、生育が順調な株に対してはほとんど被害は出ませんが、生育が衰えると発生しやすくなります。
降雨などによって細菌が伝搬するので、雨がマメにふるような年は発生が多くなる傾向が有ります。
病原菌は作物残渣とともに土壌中で越冬する為、翌年も病害は発生します。
一部の緑肥・えん麦にも感染する為、病害が出てしまった圃場の場合は、作付後の緑肥施用には注意が必用です。
黒斑細菌病の発病例
キャベツ黒斑細菌病の防除対策について
■育苗期間中の対策
①育苗トレイを消毒する。
播種育苗の前に、使用済のトレイや外に放置していたようなトレイ使う際は、必ず消毒しましょう。
病源菌がトレイに残っている場合があり、そこから感染源になる事があります。
消毒剤は様々ですが、代表的な薬剤ですとイチバン、ケミクロンG、ハイスターAG等といった消毒資材が有ります。
家庭菜園で育苗本数も少ないので専門の育苗トレイ等の資材を使わないという場合は、食器洗い用の洗剤で代用しても良いです。
②黒斑細菌病に対して感受性が低い品種や病気にかかりにくい品種を選定する。
商品カタログだけでは読み取れない部分もありますので、種苗店やメーカーHP(商品詳細)等から自分の地域に適した品種を選定しましょう。
③自家採取の種など、汚染のおそれのある種子は使用しない。どうしても使用しなければならない場合は消毒する。
手軽にできる方法としては、50℃の温湯に10分間浸漬するといった方法があります。
④培土・覆土などは市販品を利用し、自家用品は使わない。
この病害は育苗期間中も発生しますので、未消毒の自家用土は使わないようにしましょう。
⑤育苗期間中の病害虫防除を行う。
病原菌の侵入経路は、気孔・水孔・傷口です。
育苗期間中の病害の発生原因は、微小害虫による食害も影響を受けます。
病原菌の侵入に繋がる為、育苗期間中は病気の予防だけでなく害虫の発生にも注意しましょう。
■定植準備、定植後からの対策
①アブラナ科野菜の連作を避けましょう。
黒斑細菌病は、多くのアブラナ科野菜に寄生します。
病源菌は越冬しますので、アブラナ科を連作していると圃場の菌密度が落ちないといった弊害に繋がりますので、特に病害が出てしまった圃場については、圃場を休ませるかアブラナ科以外の作物を作付けする等の対策をとって下さい。
アブラナ科野菜を同じ所で連作していると根こぶ病等を併発するリスクも高くなります。
②圃場の排水状況に注意しましょう。
降雨による水たまり被害の出やすい圃場を含め、排水に難がある圃場の場合は、作物の根痛みを生じるリスクが高く、生育に影響が出る場合が有ります。
圃場を変えられないような場合は、排水溝を掘ったり、うねを高くするなどの対策をとって下さい。
降雨前後に酸素剤を用いるといった方法も有効です。
③窒素肥料の過剰施用や肥料切れに注意して下さい。
窒素過多は、作物が軟弱に育ちやすくなりますので、他の病害を引き起こす原因にもなります。
一方で、肥料切れになると生育が衰えて病害侵入リスクが高くなります。
バランスは難しいですが、葉色や伸び具合等、生育の様子に注意しながら対応して下さい。
④農薬等による病害虫防除を予防主体で行って下さい。
本圃に移ると、乾燥や降雨、暴風、害虫の食害によって作物が傷むリスクが増します。
予防を主体としたローテーション防除を行うようにしましょう。
先にも挙げましたが、降雨前後は、酸素資材の処理等も有効です。
■収穫後の対策
病害が出てしまった場合は、できるだけ被害残渣を圃場外に持ち出して処分するようにして下さい。
土壌処理殺菌剤による消毒や、菌体資材や腐植資材の投入による圃場改善に努めましょう。
緑肥作物を入れる場合は、感染リスクのない品種を選択するようにして下さい。
長野県農業関係試験場のHPにおいて、アブラナ科野菜の黒斑細菌病防除指針(ver2)が紹介されています。非常に参考になると思いますので、関心がありましたらそちらもチェックしてみて下さい。
キャベツ黒斑細菌病の登録農薬などについて
■キャベツの黒斑細菌病登録を持つ主要殺菌剤
●アクティガード顆粒水和剤(メーカーHP)
●オリゼメート顆粒水和剤(JA品目 メーカーHP)
●アグリマイシンー100水和剤(抗生物質剤:ストレプトマイシン+オキシテトラサイクリン(散布剤)メーカーHP)
●カスミンボルドー水和剤(JA品 メーカーHP)・カッパーシン水和剤(カスガマイシン+銅水和剤(散布剤))
●カセット水和剤((JA品 メーカーHP)オキソリニック酸+カスガマイシン(散布剤))
●スターナ水和剤(オキソリニック酸(散布剤)メーカーHP)
●マスターピース水和剤(微生物剤:シュードモナスロデシア(散布剤)メーカーHP)
黒斑細菌病登録のある薬剤としては非常に少ないです。
アクティガードについては2020年~、地域限定販売となっています。
アグリマイシンについても温度や生育状況によって色抜け(黄化症状)が出ます。
■キャベツに登録があり、黒斑細菌病に対しても予防効果のある殺菌剤
●ソタールWDG(スターナ+リゾレックス メーカーHP)
●ドキリンフロアブル(有機銅 メーカーHP)
●ナレート水和剤(スターナ+有機銅 メーカーHP)
●バリダシン液剤5(抗生物質 メーカーHP)
●ヨネポン水和剤(有機銅 メーカーHP)
登録病害は別となりますが、スターナ成分を含者や銅剤関係は予防的に用いるのが有効です。
バリダシンについては、シュードモナス属菌に対する増殖・発病抑制効果もありますので、予防的にローテーションに組み込むと良いでしょう。
■野菜類登録の殺菌剤も上手に活用する
●ゼットボルドー水和剤(無機銅剤 メーカーHP)→黒斑細菌病登録有り。
●コサイド3000水和剤(無機銅剤 メーカーHP)
●クプロシールド(無機銅剤 メーカーHP)
無機銅剤や有機銅剤は、発病前からの予防散布が重要です。
薬害リスクもありますので、結球始期からの使用は避けるようにしましょう。
■その他の微生物資材として
●ベジキーパー水和剤(シュードモナスフルオレッセンス)
キャベツについては黒腐病登録となっていますが、はくさいで黒斑細菌病の登録を持っておりましたが、製造元の都合でメーカー終売となりました。
この農薬は化学農薬で先に雑菌をたたいてから体系防除で使用する薬剤となりますが、椅子取りゲームの要領で雑菌の侵入を抑制するので、収穫間際に使う事での棚持ち効果の向上も期待できる農薬でした。
中身は同一品ではありませんが、予防的な要素で近い物ですとマスターピース辺りが該当します。
まとめ
今回はキャベツの黒斑細菌病について紹介してみました。
キャベツ中心の紹介でしたが、はくさい等についても防除対策としては同じような感じです。
薬剤選定についてもほとんど差がありません。
黒斑細菌病の厄介な所は、発病期間が長いという事です。
収穫間際に発病してしまった場合、著しく作物相場が落ちます。
黒斑細菌病の本圃での重点防除時期は、定植してからおおむね1カ月程度です。
後半は出ないというわけではありませんが、初期予防が重要な病害となります。
先手での予防を行うようにして下さい。
化学農薬に頼りたくないという方は、とにかく株自体、株の生育を健全に保つ事を心がけて下さい。
窒素過多はNGですが、肥料欠乏でも病害が発生しやすくなりますので、液肥によるコントロールも良いでしょう。
コストは多少張りますが、要所で微生物殺菌剤を使用するといった方法も有効です。
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お世話になっております。
今年から嬬恋村でキャベツ生産を始めたものです。
非常によくまとまっていて、すごく勉強になります。
これからも更新楽しみにしております。
コメントありがとうございます。
不定期更新で恐縮ですが今後もアップしていきますので宜しくお願い致します。