このページでは、ひと昔前の農薬メーカーが作った資料を基に、主に葉菜類畑で問題となるチョウ目害虫(ハスモンヨトウ、オオタバコガ、シロイチモジヨトウ)についての生態と、防除するに当たってのポイント、お勧め農薬などについて紹介していきます。
目次
ハスモンヨトウの生態と防除のポイントについて
ハスモンヨトウは、ヨトウムシ類の仲間で、とても広食性の害虫です。
主な加害作物は、キャベツ、ナス、サトイモ、ヤマノイモ、だいず、サツマイモ、キク、シクラメン、カーネーション、白菜、大根、ネギ、ピーマン、ニンジン、トマト、イチゴなど。
これ以外の作物も食害します。
成虫の体長は15mm~20mm程度で、羽を広げると4㎝程度になります。
卵は卵塊で産み付ける習性が有り、孵化した幼虫は6齢まで脱皮を繰り返し、老齢幼虫になると4㎝程度の大きさになります。
卵塊から孵化した幼虫は、集団で食害し、若齢のうちはコナガのように葉裏から表皮を残すように食害します。
中齢以上になると幼虫はあちこちの株に散らばって、そこで葉脈や葉柄を残して爆食いします。
路地での越冬は難しいとされている害虫ですが、施設内では越冬する個体が多いと考えられています。
関東圏の場合、成虫は4月頃から発生が見られますが、春よりは夏から秋にかけての発生が多い害虫です。
路地の場合、年間5回前後の発生が有ります。
幼虫の齢期が進むと農薬が効きにくくなる為、できるだけ若齢の内に防除するよう心がけて下さい。
徹底して叩くタイミングは、若齢幼虫が集団で食害しているタイミングです。
圃場に入って成虫の飛来を確認したら、産卵されていると考えましょう。
卵から幼虫になるまでの期間は、おおむね4日間で、そこから3齢幼虫になるまでに約10日程度の日数を要します。
この間に徹底して防除しておくと、被害株を減らす事ができます。
殺成虫作用のある農薬や、殺卵作用のある農薬、脱皮の阻害または促進剤(IGR系統の薬)を活用して防除を行って下さい。
一般的にハスモンヨトウに効果があるとされる農薬を挙げておきます。
ただし、地域によっては感受性の低下(効きにくさ)が疑われる農薬もあります。
各都道府県で感受性の低下確認試験などを行っていますので、気になる方は県または農業普及センターなどへご相談下さい。
●アファーム乳剤
●アファームエクセラ顆粒水和剤
●トルネードエースDF
●ベネビアOD
●アクセルフロアブル
●アクセルキングフロアブル
●アディオン乳剤
●アニキ乳剤
●カウンター乳剤
●カスケード乳剤
●コテツフロアブル
●スピノエース顆粒水和剤
●ディアナSC
●ファルコンエースフロアブル
●フェニックス顆粒水和剤
●ヨーバルフロアブル
●フローバックDF
●プレバソンフロアブル
●マッチ乳剤
●ベリマークSC
●ミネクトデュオ粒剤
●ランネート45DF
●アタブロン乳剤
●ノーモルト乳剤
など(順不同)
農薬の登録内容は変更・抹消される事が有りますので、ご利用を検討される場合は、メーカーHP等で最新の登録内容を確認するようにしてください。
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オオタバコガの生態と防除のポイントについて
オオタバコガもヨトウムシ類と同じような広食害虫です。
キャベツや白菜、ブロッコリーなどのアブラナ科野菜、トマトやナス、ピーマンなどの果菜類、キクやカーネーション、シクラメンなどの花き類、その他にトウモロコシ、レタス、オクラなども食害対象となります。
作物体内に潜り込んで食害する為、キャベツや玉レタスなどの結球野菜や、トマト、ナス等を作られている地域では非常に問題視される害虫です。
幼苗期間には、ハイマダラノメイガ(シンクイ虫)のように作物の新芽部分を食害される事もあります。
成虫は卵を1つずつ、あちこちの株に産み付ける習性が有ります。
孵化した幼虫は、同じ部分を連続して食害せずにあちこち食い散らかす為、幼虫の発生密度が低かったとしても被害は大きくなる傾向が有ります。
関東圏の場合、越冬した蛹が5月頃から成虫となり発生します。
発生ピークは春よりは秋口以降となりますが、おおむね8月~10月にかけての発生が多く、年間で4回程度の発生すると言われています。
オオタバコガは、中齢幼虫になると作物体内へ食い込む為、結球野菜や果菜類の中に食い込んでしまうと薬剤防除が非常に困難になります。
ですので、作物体内に入る前までの若齢の内に叩いておく事が重要です。
オオタバコガは、ヨトウムシ類に効果のある農薬を使う事で十分なカバーができます。
散布タイミングを逃さないよう注意しましょう。
シロイチモジヨトウの生態と防除のポイントについて
シロイチモジヨトウは、他のヨトウムシ類と同様に広食性の害虫です。
ユリ科、マメ科、アブラナ科、ウリ科、ナス科、キク科、アオイ科、シソ科、セリ科、アカザ科、ヤマノイモ科、イチゴ、花き類、テンサイ、ワタなど、多くの作物を食害します。
海外ではテンサイやワタの重要害虫として名高いですが、国内ではネギなどのユリ科野菜を好んで食害する害虫として認知されています。
また、トルコギキョウなどの花き類の問題害虫としても有名です。
シロイチモジヨトウは、老齢になるほど農薬防除が難しくなる傾向が有る為、若齢の内に叩いておく事が重要となる害虫です。
成虫の体長は12mm程度、羽を広げると30mm程度になります。
日中は葉裏や雑草地に潜み、夜になると活動します。
雌成虫は、地上10㎝以下の作物の低部位や生育ステージの若い作物に好んで産卵する習性が有ります。
1匹の雌成虫は、数十~数百粒の卵塊を数回に分けて、1頭当たり700~1000粒ほど産卵します。
卵塊は、灰白~黄白色の毛で覆われているのが特長です。
シロイチモジヨトウは、気温15℃を越えると発生が見られるようになり、25℃下での幼虫期間は17日程度とされています。
幼虫は5齢を経て土中で蛹となり、9日程度で羽化します。
老齢幼虫になると、30mm程度まで大きくなります。
シロイチモジヨトウは休眠しない為、冬場であっても温度条件が見合う施設内などでは発生する事があります。
幼虫はハスモンヨトウと同じように、若齢(1齢)幼虫は、孵化後集団で食害し、薄皮一枚を残したようなかすり状の食害をします。
露地の場合、春先の発生も見られる害虫ですが、最も多く発生するシーズンは、8月以降です。
ヨトウガと異なり、若齢幼虫はシャクトリ状には歩きません。
よく見間違われる害虫幼虫にタマナギンウワバがいますが、タマナギンウワバはシャクトリ状に歩くため、区別する事が可能です。
シロイチモジヨトウの防除ポイントはおおむね以下のような内容になります。
シロイチモジヨトウの幼虫は、収穫後の残渣も餌として摂取し成長し続ける為、激発圃場区の残渣処理はできるだけ早く行うようにして下さい。
土中にいる蛹は、バスアミド微粒剤やディトラペックス油剤などの土壌処理剤を用いる事で駆除する事が可能ですし、圃場を丁寧に耕うんする事でも蛹の数を減らす作用が期待できます。
ハウス内は、アザミウマ類を含めた防虫ネットを張り、外からの侵入を防ぐようにして下さい。
そして圃場確認をよく行い、卵塊を見つけ次第取り除くように心がけてやると、被害の拡大を防ぐ事もできます。
フェロモン剤を用いて交信撹乱を行うといった方法も有り、それを行うと交尾の妨げになる為、密度を抑える効果があります。
これらの対策の他に、散布または潅注処理での農薬防除という方法があります。
シロイチモジヨトウは、暖かい時期だと作物内部に食い込む習性がありますので、被害の拡大が起こる前に徹底して防除を行うようにしましょう。
県によっては、ジアミド系薬剤のように薬剤抵抗性が出てしまっているような薬剤もありますので、関心のある方は、お近くの農業普及センター等に問い合わせてみて下さい。
以下、シロイチモジヨトウに登録のある主要薬剤を挙げておきます。
作用は速攻的で残効は1週間未満の薬剤
アニキ乳剤、アファーム乳剤、スピノエース顆粒水和剤、ディアナSC、グレーシア乳剤など。
食害停止作用は早いが害虫が死ぬまでは遅効的、残効が2週間程度ある薬剤
アクセルフロアブル、トルネードエースDF、コテツフロアブルなど。
残効が有り、大型チョウ目に強いとされる薬剤
ベリマークSC、ベネビアOD、プレバソンフロアブル、フェニックス顆粒水和剤など。
IGR系統薬剤もしくはIGR系統薬剤との混合剤
アファームエクセラ顆粒水和剤(アファーム+マッチ)、カスケード乳剤、マッチ乳剤、アタブロン乳剤、マトリックフロアブルなど。
BT剤関係
ゼンターリ顆粒水和剤、デルフィン顆粒水和剤など。
特に若齢幼虫向けな薬剤
ハチハチ乳剤、プレオフロアブル、ランネート45DFなど
薬剤抵抗性が問題となっている地域にはマッチしない製剤もあると思います。
発生数が多い場合は1つの薬剤に頼らず、速攻+遅効もしくはIGR系など、複数の薬剤を組み合わせた対策も検討が必要です。
ネギのシロイチモジヨトウについては、別の記事でも紹介していますので、ご興味がありましたらご覧ください。
ねぎ・シロイチモジヨトウの生態と防除対策について(お勧めの農薬情報)
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まとめ
今回の記事では、ハスモンヨトウ・オオタバコガ・シロイチモジヨトウの生態と防除のポイント、農薬情報などについて紹介させて頂きました。
どの害虫も食欲旺盛で、放置してしまうと農作物に深刻なダメージを与えます。
防除のポイントとしては、できるだけ圃場をよく観察し、卵塊で産卵する個体については、卵塊を見つけ次第取り除くようにして下さい。
そして、若齢幼虫の内に徹底して防除しておく事が重要です。
地域によっては薬剤抵抗性が出てしまっている所もありますので、農業普及センターや農水省のHPなどから情報収集を行って下さい。
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