少し肌寒くなってきたなと感じ始めるころに、ジワリジワリと増えてくる菌核病。
このページでは、レタスの菌核病とはどんな病気なのか?についてと、防除するための農薬情報等について記載していきます。
目次
レタスの菌核病とはこんな病気です。
レタス菌核病は、スクレロテイニア スクレロテイオラムという糸状菌(カビ)によって発生する病害です。
晩秋から春先にかけて、少し肌寒いと感じる温度帯で発病しやすい病気です。
一般的には、病原菌の発育温度は、15~20℃で、25℃以上では発病が抑制されます。
夜間の温度が下がってくる晩秋など、平均気温が発育温度まで下がってくると増えだします。
菌核病の症状としては、外葉の軸基部分が水で染みたような状態となり、次第に褐色に軟化腐敗します。
最終的には白いカビが出はじめ、ネズミの糞のような形をした複数の黒い菌核を作ります。
気温もさることながら、多湿条件になると発生が助長される為、雨の多い年には注意が必要です。
関東の平地、露地栽培では、その年の気候にもよりますが、早い時期だと9月下旬頃から発生します。
ビニールハウス栽培やトンネル栽培では10月頃から春先まで発生します。
レタス菌核病の耕種的防除方法について
≪対策①≫
圃場をよく観察し、健全に見えない株(発病株)をできるだけ早く見つけて下さい。
発見したら抜き取って畑の外へ持ち出して処分しましょう。
≪対策②≫
収穫後の残渣(不良品の取り残しや切り取った外葉等)、通常はそのまま放置してロータリーでうなり込んでしまうと思いますが、可能な限り外に持ち出して処分して下さい。
菌核病の菌は土中に残り次作の発生原因になりますので、そのままにしない事が大切です。
≪対策③≫
多湿条件になると発生が助長される病気なので、生育中は、ハウスやトンネル内が過湿にならないように換気に注意しましょう。
≪対策④≫
キャベツや白菜など、アブラナ科野菜との連作は避けましょう。
アブラナ科野菜も菌核病が発生します。
≪対策⑤≫
雨による土の跳ね上げによって菌が飛散しますので、マルチ栽培を行って下さい。
≪対策⑥≫
次年度への対策としては、圃場を水田化するか、夏場の高温時期に20日以上水を張り続けるといった対策方法もあります。
レタス菌核病の農薬防除の注意点
レタスの菌核病についての登録農薬のご紹介の前に、農薬処理するにあたっての注意点についてご紹介しておきます。
農薬防除の大前提として、農薬散布を行う場合は、予防主体で防除を行って下さい。
病害に有効な農薬を使っても、病害の進展(広がり)は止める事はできても発病した株は元には戻りません。発病させない為の予防散布が重要です!
結球期頃になってくると、どうしても葉の内側であったり地際の部分には農薬がかかりにくくなります。
結球期以降の農薬防除は必要ですが、予防散布のウエイトは、結球前までに徹底しておく事が重要です。
レタス菌核病の登録農薬を、農薬分類グループに分けでご紹介します。
ここでは農薬のグループ分類別にご紹介していきます。
これまで「〇〇系統」と呼ばれ区別されてきた農薬分類ですが、近年はそういった分類分けからだいぶ変化しまして、殺虫剤はIRAC(アイラック)、殺菌剤はFRAC(エフラック)といったくくりでまとめられ、英数文字でグループ分けされるようになりました。
例えば、近年流行りのSDHI剤(アフェットやパレード等)は、FRACの「7グループ」というような形で分類されています。
大きな分類分けですので、それぞれの薬が持つ作用特性についてはチェックが必要となりますが、この分類を目安にローテーション防除を行う事が出来ます。
分類コードが被らないように農薬を選んで散布する事で、効果的な防除ができますし、耐性菌対策にもなりますので、ぜひ活用してみて下さい。
以下、代表的な薬剤とグループについて↓↓↓
≪F:7グループ≫
アフェットフロアブル、オルフィンフロアブル、カンタスDF、ケンジャフロアブル、ネクスターフロアブル、パレード20フロアブル。
SDHI剤と呼ばれるグループで、カンタスDFが初期型、アフェット、オルフィン、ネクスター、ケンジャ、パレードなどが後期型となります。
※2019年現在、ネクスターは非結球レタス・リーフレタスの登録が有りません。オルフィンフロアブルについては、レタスとリーフレタスの登録あります。
それ以外の品目は、レタスと非結球レタスの登録を持っています。
現在、葉物野菜で使われている定番は、レタス菌核病では定番のアフェットや、2019年に登録拡大して通常の散布以外にセル苗灌注もできるようになったパレード、殺センチュウ剤(ビーラム・ネマクリーン)の成分であるオルフィンあたりが多いように思います。
この中でもパレードとオルフィンについては、浸達作用( 葉表から葉裏に成分が抜ける作用 )と移行性作用(植物体内に成分が回る作用)といった2つの作用を有する事から、個人的にはお勧めできる薬剤です。
F:7グループを含む混合剤としては、アフェットとダコニール(F:M5)の混合剤であるベジセイバー(フロアブル)や、カンタスとピラクロストロビンというストロビルリン系薬剤(F:11)との混合剤であるシグナムWDGなどがあります。
≪F:11グループ≫
QoI剤とも呼ばれる、ストロビルリン系薬剤のグループです。
アミスター20FL、スクレアフロアブル、ファンタジスタ顆粒水和剤、メジャーフロアブルなどがあります。
これらの農薬は、浸達性と移行性の両方の作用を有します。
混合剤のシグナムWDGも生産現場ではよく使われる薬剤です。
アミスターとメジャーについては、べと病などにも効果が有って、登録病害の幅が広いといった特徴があります。
反面、使い方を誤ると薬害を起こしてしまうリスクもある為、取扱う際には注意が必用です。
スクレア、ファンタジスタについては、べと病への効果はありませんが、薬害発生リスクについては比較的安全性の高い薬とされています。
スクレアについては、他のストロビルリン系薬剤とは少し毛色が違っていて、菌核病の専門薬になります。
ファンジスタについては、べと病への効果はありませんが、菌核病や灰色かび病等にも効果があります。
≪ストロビルリン系薬剤を使用する際の共通注意点≫
全ての薬剤ではありませんが、下記の内容に注意しておけば薬害リスクは軽減できます。
※浸透を高めるような展着剤の併用を避ける。
薬害を助長する事がある為、基本的には避けるようにしましょう。
※幼苗期、定植直後、老化した作物への散布を避ける。
※高温時の散布を避ける。散布後すぐ高温になりそうな状況での散布を避ける。
※薬剤散布した作物ができるだけ早く乾くよう配慮する。
いつまでも乾かない環境下だと薬害発生を助長します。
≪F:19グループ≫
抗生物質剤です。
ポリオキシンAL水溶剤、ポリオキシンAL水和剤。
水溶剤の方はレタスと非結球レタスに登録がありますが、水和剤についてはレタス登録のみです。
抗生物質剤というと、予防というよりは治療的なイメージを持たれがちですが、レタス菌核病については、先に挙げた薬剤から比べると効果が劣りますので、予防主体の薬となります。
≪F: 2グループ≫
ロブラール水和剤、スミレックス水和剤。
ロブラール水和剤は、レタスのみの登録となりますが、菌核病以外にすそ枯れ病や灰色かび病などにも登録を有します。
スミレックスについてもレタスにしか登録がありませんが、菌核病の他、灰色かび病に対しての登録も有します。
F:2グループの混合剤としては、ロブラールと有機銅(F:M1)を含有したロブドー水和剤や、スミレックスとゲッター水和剤等に含まれているジエトフェンカルブ(F:10)を含有したスミブレンド水和剤があります。
どちらも登録はレタスのみですが、混合されている成分によって病害登録の幅が広くなります。
≪F:1グループ≫
トップジンM水和剤、ベンレート水和剤。
昔からある薬で登録幅が広く、作物体内に成分が入る作用を有していますので、予防的に散布しておく事で病気の蔓延を防ぐ事ができます。
べと病などには効きませんが、菌核病以外の病害登録も持っています。
トップジンMはレタスと非結球レタスの登録を有しますが、ベンレートについてはレタスのみの登録です。
混合剤としては、ジエトフェンカルブ(F:10)との混合剤であるゲッター水和剤が有ります。 菌核病と灰色かび病の登録を持っていますが、レタスのみの登録です。
≪F:M7グループ≫
ベルクート水和剤。
レタスのみの登録です。収穫前日数が30日前という事で、あまり現場では使われていませんが、安全性が高く耐性菌対策にもなる為、予防的に用いられる農薬です。
まとめ
以上、レタスの菌核病についてと登録農薬についてご紹介しました。
色々と農薬について書きましたが、生産現場で多く使われている薬剤は、使い勝手の良さ等から、F:7グループとF:11グループに含まれる薬剤の利用率が高いのではないかと思います。
幸いな事に、レタス菌核病に対しては有効な殺菌剤が沢山ありますので、他の病害の防除とあわせて、結球期前までにしっかり予防散布を徹底しておくと、かなり発生を抑える事ができます。
耕種的防除とあわせて上手に対策を行ってみて下さい。
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