今回は、シンジェンタジャパン㈱より2020年2月に発売したオロンディスウルトラSCという殺菌剤についてレビューしていこうと思います。
さすが外資系メーカーの商品だけあって覚えずらい横文字農薬ですが、効果はなかなか期待できそうなスペックとなっています。
さっそくレビューしていこうと思います。
目次
オロンディスウルトラSCについて
オロンディスウルトラSCは、オキサチアピプロリンとマンジプロパミドとの混合剤です。
規格は250mlで作物に対する希釈倍数は2000倍となっています。
オキサチアピプロリンは、既にメーカー廃盤となっているゾーベックエニケードという商品の有効成分で、マンジプロパミドは、レーバスフロアブルの有効成分となります。
含有量としては、オキサチアピプロリンが2.7%
マンジプロパミドが23.0%です。
レーバスフロアブル単剤の成分量はが23.3%で希釈倍数は作物や登録内容にもよりますが、おおむね2000倍となりますので、オロンディスはレーバスの成分が9割以上入った商材となります。
一方で、ゾーベックエニケードの成分量としては、7割程度といった所です。
ゾーベックエニケード(単剤)は耐性菌が付く前に混合剤にシフトした為、既に廃盤となっておりますが、べと病に対する予防・治療効果には定評がありました。
2020年1月時現在、ゾーベックエニケードの有効成分を含む混合剤は、オロンディスウルトラSCの他に、コルテバ(ダウ)のゾーベックエンカンティアとゾーベックエニベルの3剤型となります。
ゾーベックエニケードの成分を含む薬剤としては、今の所、オロンディスウルトラSCが一番含有量が多い薬剤となっています。
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登録ラベル・留意事項について
2020年現在、適用病害虫の範囲と使用方法については、以下の通りです。
■登録作物・収穫前日数・適用病害(発売時ラベル)
キャベツ(7日前)、はくさい(7日前)、レタス(7日前)、ねぎ(7日前)、たまねぎ(前日)トマト(前日)
トマトのみ疫病登録となっており、他作物はべと病登録となっています。
■希釈倍数
2000倍
■希釈水量
100~300L/10a
■使用回数
2回以内
葉物野菜に関しては、ゾーベックエニケードが前日登録だったのに対し、オロンディスは7日前登録となっています。
しかしながら、ゾーベックエニケードには無かったキャベツとネギで使えるというのは強みです。
留意事項としては、耐性菌対策としてオキサチアピプロリン剤を連続散布しない事、育苗期間中は使用しない事、オキサチアピプロリンの総使用回数は年間6回以内とする事といった点が掲げられています。
育苗期間中は使用しないという留意事項は、耐性菌管理の観点によるもので、薬害注意点とは異なります。
殺菌剤は耐性菌がついてしまうと散布する意味がなくなってしまいますので、使用の際はとにかく連続散布は避けて系統の異なる薬剤とのローテーション散布が鉄則です。
この辺りの登録内容については、メーカーサイドのスタンスで変わる可能性も有りますので、お使いになる際は最新の登録内容をご確認下さい。
シンジェンタジャパン㈱、オロンディスウルトラSC メーカーさん紹介ページ
オロンディスウルトラSCの有効成分、マンジプロパミドの作用について
オロンディスウルトラSCの有効成分は、それぞれ作用性が異なります。
まずレーバスフロアブルの成分であるマンジプロパミドについてですが、葉表から葉裏に抜ける浸達性作用があります。
散布された有効成分は素早くワックス層に吸着し、葉裏まで浸透します。
吸収性が早い為、散布1時間後の雨に強いというのが売込ポイントです。
基本的にレーバスフロアブル(マンジプロパミド)は治療剤という位置付けではなく、予防剤としての位置付けの強い殺菌剤ですが、耐雨性があるというのは殺菌剤としては非常に良い点です。
病原菌の生活環におけるアタックポイントとしては、
・分生子柄形成
・分生子(遊走のう)の直接発芽
・植物侵入と感染
という3つの部分に作用します。
オロンディスウルトラSCの有効成分、オキサチアピプロリンの作用について
続いてゾーベックエニケードの有効成分であるオキサチアピプロリンについてですが、散布された部分から上方に移行する(求頂的移行性)作用を有します。
病原菌の生活環におけるアタックポイントとしては、
レーバス(マンジプロパミド)のアタックポイントである
・分生子柄形成
・分生子(遊走のう)の直接発芽
・植物侵入と感染
という3つの部分の他に、
・分生子の飛散
・分生子(胞子のう)
・遊走子形成
・遊走子の放出
という4つのポイントについてもカバーします。
ゾーベックエニケードの成分とレーバスフロアブルの成分、2つの有効成分が合わさる事で病原菌の生活環(感染・拡大するポイント)を徹底して抑える事ができます。
特に、ゾーベックエニケードの成分であるオキサチアピプロリンは、卵菌類の胞子形成、胞子発芽、初期感染に対する活性が高い成分となっています。
オロンディスウルトラSCの使いどころは?
オキサチアピプロリンの移行性についてメーカーが情報開示している内容によると、アゾキシストロビン(アミスター)やメフェノキサム(リドミルG)と比べると、移行はゆっくりで量が少ないといった特徴があります。
これはあくまで点滴処理した葉をRIイメージングで見た場合の評価なので、実際は展着剤を用いながら作物全面に散布する事を考えると、そこまで悲観的な内容ではありません。
むしろ激しい移行性が無いだけ作物体には安全という見方もできますし、アミスターやリドミル等と比べて混用についてもうるさくないのでは?と判断する事ができます。
また、冒頭紹介したように、この剤にはレーバスの浸達性効果も含まれていますので、予防効果としては一級品です。
これはあくまで私の考えですが、葉菜類の場合、育苗中はピシウム腐敗病等にも注意が必用となりますので、総合的に予防するのであれば、初期段階はリドミル成分とTPNを含入するフォリオゴールド当たりで様子を見て、それ以降にオロンディスでカバーする流れが良いかな?と考えます。
べと病が出やすい気候条件の際に、予防効果を高める意味合いでポイント散布するのも悪くないでしょう。
また、ゾーベック成分であるオキサチアピプロリンは、滴下した部分からの上方移行性となりますので、生育期中に用いる場合は、株全体にかかるように散布するようにしてください。
浸達性のある薬剤ですが、葉裏まで丁寧に散布すると散布ムラも減る為、より防除効果が上がります。
べと病や疫病防除は、病斑が広がる前の予防的な防除が重要です。
低温多湿条件になりやすい春先や晩秋などの露地栽培は、特にべと病や疫病が発生しやすくなる為、この時期のオロンディスの活用は重宝するでしょう。
耐性菌を出さない意味合いで育苗期中の使用は避けるよう促されていますが、製剤自体は育苗期中の子葉期や幼苗期でも使う事ができます。
まとめ
今回はオロンディスウルトラSCについてレビューをさせて頂きました。
べと病・疫病に対する専門薬である為、欲を言えば他の病害(例えば「さび病」とか)にも適用があればな…というのが正直なところではありますが、生産現場で使う事ができる「予防+治療効果」のある薬剤が増えるというのはとても良い事だと思います。
記中にもかきましたが、ゾーベックエニケードはキャベツやネギなどで使いたいという要望が高い薬剤だっただけに、この商材は魅力的でしょう。
ゾーベックの主成分量が7割程度とはなりますが、病害発生の初期防除作くらいは十分期待できると思います。
展着剤や他の殺菌剤との混用については今の所NGは無さそうな感じではありますが、発売後の情報開示を待つことにしましょう。
農薬の登録内容は変わる場合が有りますので、使用を検討される場合は、メーカーHP等で最新の登録内容を確認するようにしてください。
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