ここではネギの問題害虫であるチョウ目害虫、シロイチモジヨトウ(ヨトウムシ類)について書いていきます。
シロイチモジヨトウはネギの重要害虫の1つで、作物内に食い込んで食害する為、成長が進むと農薬防除が難しい厄介な害虫です。
消毒が抜けてしまうとアザミウマやハモグリバエ同様、防除が困難になる場合が有りますので、定期的な防除を行う事が大切です。
目次
シロイチモジヨトウについて
シロイチモジヨトウとは、ヨトウムシ類の仲間でです。
主にネギを加害する害虫として有名ですが、ネギを含むユリ科作物の他に、マメ科、アブラナ科、ウリ科、ナス科、キク科、アオイ科、シソ科、せり科、アカザ科、アマノイモ科、イチゴ、スイートコーン、カーネーション、ガーベラ、キク、グラジオラス、スターチス、トルコギキョウ、カスミソウ、ケイトウ、テンサイ、ワタなど、加害作物は多岐にわたります。
成虫の体長は約12mm程度。
昼間は葉裏や雑草のある所に隠れていて、夜になると活動を始めます。
雌成虫は葉裏に数十個~数百個の卵を塊で産み付けます(卵塊といいます)。
1日の雌が産む卵の数はおおむね1000個くらいと言われており、生育ステージの若い物や、作物の低部位に産卵する習性があります。
卵塊は白っぽいワタに覆われているのが特徴的です。
シロイチモジヨトウの卵塊の毛は灰白~黄白色で、ハスモンヨトウの場合は黄土色という事で色分け判断する事ができます。
ネギに産み付けられた卵塊↓
シロイチモジヨトウはハスモンヨトウと同属なので食害の仕方も類似していますが、サイズはハスモンヨトウよりも小さく、シロイチモジヨトウという名前だけあって、幼虫の体の側面に白やピンク色っぽいラインのように見える模様があるのが特徴です。老齢幼虫になると体長は3㎝程度になります。
近年はキャベツやブロッコリー等のネギ以外の作物に対しての加害も見られます。
ネギの中は空洞になっていますので、食害しながらネギの内側に落っこちて、内側からガツガツ食害しているなんていう事もあります。
若齢幼虫の加害の仕方はコナガに似たような食害痕を作る事もあり、薄皮を残しながら食害します。
ネギの場合は内側から食害する事で、ハモグリバエに加害されたような感じで、外側から見た時に白っぽく枯れるような被害が生じる事があります。
気温が高い時期は、幼虫の動作も活発で食欲旺盛です。
このようなタイミングだと小さい幼齢の内からネギの内部に入り込んで食害し、その中で成長します。
こうなると薬剤防除は非常に困難です。
↓ヨトウムシ類のネギ内部食害の様子
10月下旬以降の比較的涼しい時期は、中に食い込まず表面だけを食害する事もあります。
シロイチモジヨトウの発生温度
シロイチモジヨトウの発生が始まる温度は15度程度です。
気温が25℃くらいの時の幼虫期間は17日程度とされています。
幼虫の成長段階は5齢まであり、5齢を過ぎると土の中で蛹になります。
25度では9日程度で羽化します。
施設栽培では周年発生しますが、露地では夏場の高温期に多発する傾向があります。
また、降雨量の少ない寡雨(かう)時には発生が多くなる傾向があります。
シロイチモジヨトウは農薬防除が難しい
シロイチモジヨトウは卵塊から孵化すると、卵塊のあった葉を集団で食害し、成長に伴って分散していきます。
成長に伴って食害量も増える為、被害が拡大します。
シロイチモジヨトウは、狭い隙間に潜り込んだり、葉の内部から加害する習性がある為、薬剤がかかりにくい上、薬剤抵抗性も発達しており防除が難しい害虫です。
各県、地域によっては主力薬剤に抵抗性を持ってしまっているケースもありますので注意が必要です。
県によっては薬剤感受性検査などを行っておりますので、興味のある方は、お住いの県または地域にある農業普及センターなどに問い合わせをしてみて下さい。
例えば香川県などでは、関東圏ではまだまだ防除効果の高いジアミド系薬剤が、薬剤抵抗性を持たれてしまって防除効果が落ちてしまっているというケースもあります。
シロイチモジヨトウの防除方法について
基本的な防除対策としては、とにかく圃場をよく確認して早期発見する事です。
専業の方の場合、多数の株の中から卵塊を見つけ出すのは容易ではありませんが、理想を言えば、卵塊や孵化直後の1~2齢幼虫の集団を見つけ次第、その場でつぶすか取り除いて圃場外で処分して下さい。
それが難しい場合は、チョウ目害虫の成虫が飛び出す頃から徹底して薬剤防除をする事です。
成虫の飛来は卵を産み付けにくる目安となります。
↓ヨトウムシ類が卵塊から孵化して散らばっていく様子(キャベツの例)
初期の内に叩ければ、他の株に広がるリスクを下げる事が出来ます。
幼虫が作物体内に食い込んでしまうと農薬での防除は非常に困難です。
シロイチモジヨトウは老齢幼虫でも3㎝未満の個体が多い為、他のヨトウムシ類の中齢幼虫等と見誤る事があります。
有る程度大きくなった幼虫に薬剤散布をしても、たたききれない場合が有ります。
作物体内や隙間など、薬液が届きにくい場所に入ってしまう事も多く、非常に厄介です。
老齢幼虫になると薬剤効果も低下する為、若齢幼虫までの内に徹底して防除して下さい。
その際は、1つの薬剤系統に頼らず、複数の薬剤系統を併用する事が重要です。
散布のやり方についても、サッと終わらせる事はせず、しっかり水量を落とす事が重用です。
株全体に薬液がかかるようにしましょう。
移行性が乏しい薬剤を使う場合、散布ムラによる食害や食い込みにつながる場合があります。
機能性展着剤等も上手に活用する事が大切です。
シロイチモジヨトウに効果のある農薬について
以下は、一般的にシロイチモジヨトウに効果があるとされている農薬です。
ブロフレアSC
アニキ乳剤
ディアナSC
ベネビアOD
ヨーバルフロアブル
グレーシア乳剤
トルネードエースDF(ファイントリムDF(関東以外))
カスケード乳剤
コテツフロアブル
デルフィン顆粒水和剤
ノーモルト乳剤
アクセルフロアブル
フェニックス顆粒水和剤
プレオフロアブル
などの薬剤があります。
但し、冒頭挙げたように各県や地域によっては薬剤抵抗性が見られる物も有りますので、「心配だ…」という方は、お住まいの地域が管轄となる農業普及センターや県の農業推進事業窓口等にお問い合わせをしてみて下さい。
県やメーカーで感受性試験を行っているようであれば、その地域で有効な薬剤を見出すことができますので、ローテーション散布に組み込みやすくなります。
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薬剤抵抗性を持たれてしまう原因について
薬剤抵抗性を持たれてしまう原因としては、様々な要因がありますが、自然界の中にはある種の成分に対して体制を持ち合わせている個体が存在します。
それらの血統が増えてしまうと、おのずと抵抗性害虫が増えてしまう…という流れになります。
農薬の散布ムラ等により、害虫が中途半端に害虫が延命してしまって、それらの子孫が増えてしまう事なども原因です。
薬剤抵抗性の持ちやすさは、害虫によっても左右されますし、抵抗性のある薬剤を地域的にしばらく使わなかったりすると、抵抗性が薄れてまた効果が復活するというケースもあります。
国内の薬剤抵抗性害虫は、気候条件の変化による分布であったり、物流や季節風によって生息範囲が広がるケースが多々あります。
一般的に言われるのは、特定の系統の農薬ばかりを散布してしまっている事などが原因とされています。
やはり防除する際は、アタックポイントの異なる薬剤を上手に活用し、ローテーション散布する事が重要です。
また、他県の薬剤抵抗性の話題はかなり重要ですので、現在薬剤抵抗性の出ていない地域においても注意が必要です。
まとめ
ネギ栽培において、シロイチモンジヨトウは、作物体内に入り込む前に徹底して防除する必要があります。
圃場を見て回って、蛾の成虫が飛んでいたり、ネギを見た時に卵塊を発見した時には、注意が必要です。
卵塊がネギに付いているのを発見した時には、その場でつぶすか取り除くようにしましょう。
農薬散布の際は、シロイチモジヨトウに限定されるものではありませんが、ノーモルト、リーフガード、マッチ等の殺卵作用のある薬剤を混用散布するのも有効です。
ただし、薬剤抵抗性がついてしまっている物も各県によっては存在しますので、県の病害虫防除所等・普及センター等の情報を定期的にチェックするようにするのがお勧めです。
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