アグリポイント ~農業現場の病害虫・栽培問題対策室~

いちごのアブラムシ防除薬剤について

過去記事では天敵農薬(コレマンアブラバチ)の話を取り上げましたが、このページでは、いちごのアブラムシ対策として、主に登録農薬などについて紹介しようと思います。

家庭菜園や減農薬栽培を含め、できるだけ農薬に頼りたくないという方も多いかと思いますが、アブラムシはハダニと同様に多発させてしまうと生育や収穫量にも影響が出てしまいますので防除が必要な害虫です。

今回はいちごのアブラムシに使える農薬にスポットを当てて紹介してみようと思います。



いちごのアブラムシ被害の一例

農薬紹介の前に、まずはいちごのアブラムシ被害について紹介していきます。

防虫ネットをしっかり張っている温室ハウスの中で作付けしていてもいつの間にか多発してしまう事があるアブラムシ。

アブラムシ自体は人間の目でも確認できる大きさになりますので、注意深く観察すれば初期の内に発見し対処する事ができますが、アブラムシの発生をそのまま放置してしまうと、葉裏や花芽、茎など、あっという間に広がってしまいます。

アブラムシは植物の樹液を吸汁する為、あまり発生が多くなると生育抑制を起こしたり、最悪の場合は枯死を引き起こしたりする要因にもなります。

果菜類などではアブラムシを媒介としたウイルス病害もあったりします。

アブラムシ自体は小さな虫ですが収穫量や品質にも影響する為、意外と厄介な害虫です。


いちごのアブラムシ被害にはいくつかありますが、圃場で見られる代表的な症状は甘露(かんろ)です。

アブラムシは植物の樹液を吸汁する事で、甘露(かんろ)という塘を含んだベタベタとした液体を出します(甘露=排泄物です)。

甘露による被害はいちごに限ったものではなく、例えば庭木の葉や、カンキツ果樹の葉等でも見る事ができます。

この甘露は砂糖水のような物なので、程度が低い時にすぐに洗い流せればそんなに問題になる事は無いのですが、時間が経過しまうと固着して汚れの原因となり、散水してもなかなか綺麗にはなりません。

また、甘露の厄介な所は、すす病菌等が付着して増殖する事で、葉が汚れて光合成にも影響が出たりします。

いちごの栽培上(専業の場合)、給水は基本的に潅水設備(溶液設備等)を用いて行われていると思いますので、甘露を洗い流すのは困難です。

家庭菜園等ではジョウロ等で頭から散水してしまう方も多いかと思いますが、アブラムシを駆除しないと甘露の被害は増えていきますし、株が病気に侵されているような場合ですと、水を与える事で菌が拡散し被害株を増やしてしまう原因にもなります。

また、果実がある場合には傷みに繋がったりしますので、農薬等の散布以外においては、株の上から水をまくという事はなるべく避けたいところです。


甘露の被害葉は、葉かきをする事で直接的に取り除くという対処もできますが、被害葉の数が多いと葉かきができる限度も出てきますので、やはり甘露被害は出したくないところです。


アブラムシによる甘露被害例↓

画像だと濡れたような部分は朝つゆのように見えますが、実際はべたべたした液体が付着しています。


アブラムシが多発しているような状況だとこのような葉っぱが所々で目につきます。
※↓白い物は落下した花びら等。



甘露によりテカテカとした被害葉↓ 触るとベタベタします。
テカテカしていると普通に濡れているのとは見た目も違うのでわかりやすいです。



甘露が出ている株の周りはアブラムシが多発している事が多いです。
葉裏を見るとアブラムシがびっしり繁殖しています。

↑個体が1~2mmの小さい物は「ワタアブラムシ」等になります。
ワタアブラムシはいちごに付きやすいアブラムシです。
ワタアブラムシであれば天敵昆虫のコレマンアブラバチが寄生できます。
発生前~低密度のタイミングであれば天敵昆虫の導入はお勧めです。


甘露やアブラムシの死骸にすすが発生した状態↓

甘露が出ている葉は、放置していると汚れていきます。
農薬散布や葉かき等の対処が必要になります。


花芽の中にもアブラムシは発生します。

アザミウマもそうですが、花芽に虫が寄生するのは良くないです。
害虫が寄生して悪さをすると奇形果(いびつな形)になったり、品質が落ちる原因になります。


茎についたヒゲナガアブラムシ↓

先に挙げたワタアブラムシ等と比較してみると明らかに個体が大きいのがわかります。

個体サイズが3mm程度の大きいアブラムシはヒゲナガアブラムシです。
天敵昆虫のコレマンアブラバチが寄生できないアブラムシになります。
個体の大きいヒゲナガアブラムシの場合は、ギフアブラバチやチャバラアブラコバチという寄生蜂を用いる事もできます。
また、天敵昆虫にはアブラムシを直接捕食するテントウムシを用いた物も有ります。

農薬は使いたくないという場合には、これらの天敵を上手に活用すると良いでしょう。
但し、天敵昆虫を導入する前にアブラムシの発生が多いようであれば化学農薬で一度密度を落とした方が良いです。



もう1つ、アブラムシが多発すると厄介な問題が出てくる場合が有ります。

アブラムシと言えば「蟻(アリ)」です…


アブラムシは甘露を蟻(アリ)に与える事で、アブラムシ自身の天敵であるテントウムシから身を守ろうとします。
アブラムシと蟻の共存関係は昔からよく見聞きする話ですね。

蟻は、いちごが植わっている土に巣をつくる事が有ります。
これによって果実の加害だけでなく、クラウン周りが荒らされて生育に影響が出るといった事が有ります。

更に訪花昆虫を導入している場合、巣箱に悪影響を及ぼしてしまう事もあります。


こういった副次的な被害を起こさない為にもアブラムシの早期防除対策は重要になってくるわけです。



いちごに登録の有るアブラムシ農薬について

さて、ここからは「いちごのアブラムシ」に登録を持っている殺虫剤について紹介していきます。
農薬の登録内容は不定期に変わる事がよくありますので、実際に使用をする場合は、一度登録内容の詳細を確認する事をお勧めします。
以下は、2023年現在の農薬登録内容より紹介しています。

商品名からメーカーさんのHPをご参照下さい。


アクタラ粒剤5(I:4A ネオニコチノイド系)
 アブラムシ類登録
 定植時植穴処理
 ※ハチの安全導入日数はミツバチで30日以降。
  マルハナバチで21日以降(定植時植穴処理)。

アドマイヤー1粒剤( I:4A ネオニコチノイド系)
 アブラムシ類登録
 育苗期後半:株元散布
 定植時:植穴土壌混和
 ※ミツバチに対して影響有り。
 
アルバリン粒剤(I:4A ネオニコチノイド系)
 ワタアブラムシ登録
 定植時:植穴土壌混和
 ※ミツバチに対して影響有り。

ダントツ粒剤(I:4A ネオニコチノイド系)
 アブラムシ類登録
 定植時:植穴処理土壌混和
 ※ミツバチ・マルハナバチに影響有り。

ベストガード粒剤(I:4A ネオニコチノイド系)
 アブラムシ類登録
 定植時:植穴処理土壌混和
 ※ミツバチ・マルハナバチに影響有り。

ベリマークSC( I:28 ジアミド系)
 アブラムシ類登録
 育苗期後半~定植当日:灌注

モスピラン粒剤(I:4A ネオニコチノイド系)
 アブラムシ類登録
 定植時:株元散布・植穴土壌混和
 生育期(定植30日後まで)但しマルチ被覆直前まで:株元散布

モベントフロアブル(I:23 環状ケトエノール系)
 アブラムシ類登録
 育苗期後半~定植当日:灌注
 ※マルハナバチに影響有り。


アーデント水和剤( I:3(A) ピレスロイド系)
 アブラムシ類登録  散布
 ※ミツバチに対して影響有り。

アグロスリン乳剤(I:3(A) ピレスロイド系)
 アブラムシ類登録  散布
 ※ミツバチに対して影響有り。

アディオン乳剤(I:3(A) ピレスロイド系)
 アブラムシ類登録  散布
 ※ミツバチに対して影響有り。

ウララDF(I:29 ピリジンカルボキサミド系)
 アブラムシ類登録  散布
 ※アブラムシの吸汁を阻害する作用が有ります。
  最終的にアブラムシを餓死させます。

エコピタ液剤(JA品目 気門封鎖剤)
 アブラムシ類登録  散布

オレート液剤(気門封鎖剤)
 アブラムシ類登録  散布
 ※高温時の散布は薬害リスク有り。

コルト顆粒水和剤( I:9(B) 昆虫行動制御剤(IBR剤))
 アブラムシ類登録  散布
 ※ミツバチに対して影響があります。

サフオイル乳剤(気門封鎖剤)
 アブラムシ類登録  散布
 ※展着剤の可溶が必用になりますが相性有り。

サンマイトフロアブル( I:21(A))
 ワタアブラムシ登録  散布
 ※メインはハダニ剤です。
 ※ミツバチに対して影響があります。

サンヨール(F:M01 有機銅剤)
 アブラムシ類登録  散布
 ※展着作用と気門封鎖作用が有ります。
 ※他作物でナメクジ類にも登録が有ります。
 ※いちごに対する注意事項有り。要確認。

シーマージェット(I:21(A) ピラゾール系・ I:1(A)カーバメート系)
 アブラムシ類登録  燻煙
 ※ハダニ・うどんこ病に対しても効果が有ります。
 ※定植直後、幼苗、軟弱徒長苗は薬害リスク有り。
 ※高温時の使用は薬害リスク有り。

スミチオン乳剤(I:1(B) 有機リン系)
 アブラムシ類登録  散布
 ※ミツバチに対して影響有り。

チェス顆粒水和剤(I:9(B) ピリジンアゾメチン系)
 アブラムシ類登録  散布
 ※吸汁を阻害する作用が有ります。
 ※ハチ・天敵に影響の少ない殺虫剤です。

トランスフォームフロアブル(I:4C スルホキシイミン系)
 アブラムシ類登録  散布
 ※ミツバチに対して影響有り。

ハチハチフロアブル( I:21(A) フェノキシベンジルアミド系)
 アブラムシ類登録  散布
 ※ミツバチ・マルハナバチに影響有り。

バリアード顆粒水和剤(I:4A ネオニコチノイド系)
 アブラムシ類登録  散布
 ※ハチ類に影響の少ない殺虫剤です。

ピラニカEW(I:21(A) ピラゾール系)
 アブラムシ類登録(メインはハダニ剤)  散布
 ※ミツバチ・マルハナバチに対して影響が少ない。

ベストガード水溶剤( I:4A ネオニコチノイド系)
 アブラムシ類登録  散布

ベネビアOD(I:28 ジアミド系)
 アブラムシ類登録  散布
 ※マルハナバチや天敵昆虫に安全性が高い。

マブリックジェット(I:3(A) ピレスロイド系)
 アブラムシ類登録  燻煙
 ※定植直後、幼苗、軟弱徒長苗は薬害リスク有り。
 ※高温時の使用は薬害リスク有り。

マラソン乳剤(I:1(B) 有機リン系)
 アブラムシ類登録  散布
 ※ミツバチに対して影響有り。

モスピランジェット(I:4A ネオニコチノイド系)
 アブラムシ類登録  燻煙処理
 ※定植直後、幼苗、軟弱徒長苗は薬害リスク有り。
 ※高温時の使用は薬害リスク有り。

モスピラン粒剤(I:4A ネオニコチノイド系)
 アブラムシ類登録
 生育期(定植30日後まで)但しマルチ被覆直前まで:株元散布
 ※ミツバチ・マルハナバチに対して影響が少ない。

モスピラン顆粒水溶剤(I:4A ネオニコチノイド系)
 アブラムシ類登録

モベントフロアブル(I:23 環状ケトエノール系)
 アブラムシ類登録  散布

ロディー乳剤(I:3(A) ピレスロイド系)
 アブラムシ類登録  散布
 ※ハダニ類に対して効果有り。
 ※ミツバチに対して影響有り。


その他、アブラムシ登録では無いですが、いちご登録のある農薬で、他の作物でアブラムシの登録を取っている農薬も有ります↓↓↓

ヨーバルフロアブル(I:28 ジアミド系)
 チョウ目害虫に対する登録  散布
  ※ミツバチに対して影響有り。
  ※アブラムシを含む防除の場合は2500倍処理がお勧め。

テルスタージェット( I:3(A) ピレスロイド系)
 ハダニ類に対する登録 燻煙処理
 ※ミツバチに対して影響有り。
 ※定植直後、幼苗、軟弱徒長苗は薬害リスク有り。
 ※高温時の使用は薬害リスク有り。

ランネート45DF( I:1(A) カーバメイト系)
 登録はセンチュウとコガネムシ類幼虫に対して。
 散布と灌注の両方の登録が有るが使う時期に注意。
 ※ミツバチに対して影響有り。
 ※他作物でナメクジ類に対しても登録有り。
 ※ハウス内での処理は非常に危険なので登録内容を必ず守る。



ネオニコチノイド系、有機リン系、ピレスロイド系、カーバメート系に該当する農薬は、殺虫スペクトラムが幅広く、微小害虫に対しても得意とする傾向がありますが、ハチ等の訪花昆虫や天敵農薬(生物農薬)といった益虫に対してもダメージを与えてしまいます。
コントロール目的で使用するには良いのですが、そうではない場合、ハチや天敵昆虫を導入するメリットが無くなってしまう為、使用する場合はタイミング等に注意して下さい。

上記に挙げた農薬で「ミツバチに影響有り」という表記がありますが、農薬の注意事項項目を抜粋したものになります。
表記が無いだけで「マルハナバチや天敵昆虫・益虫」に対して影響が有る物も多々ありますので、訪花昆虫や天敵農薬(天敵昆虫)に対する農薬の影響日数等はよく確認するようにして下さい。




その他のアブラムシに使える農薬について

いちごの登録薬剤ではありませんが、「野菜類登録」の農薬もいちごに使用する事ができます。

野菜類登録の農薬でも「アブラムシ」に登録を取っている農薬も有ります。

注意事項も有りますので使い慣れていない場合はいきなり全面散布はせずに小規模区画で試してから使用する事をお勧めします。


ムシラップ液剤(気門封鎖剤)
 ※ハダニ、コナジラミ類、うどんこ病にも適用有り。
 ※直接散布の場合、ミツバチ・マルハナバチに影響が出る場合有り。
 ※いちごの品種によっては果実に薬害を起こすリスク有り。
 ※スカッシュ(展着剤)と同様の成分を使用した気門封鎖剤です。
 ※収穫前日まで使えて使用回数制限が有りません。

展着剤成分を用いてるという事も有りますが、ムシラップは名前の通り虫をラッピングする効果に優れる気門封鎖剤です。
ハダニの卵には効果は有りませんが、成虫に対するラッピング効果は非常に高い薬剤です。
デメリットとしては、気門封鎖剤になりますので、虫に直接かからないと効果を発揮してくれませんし、残効が短いのも特徴です。

幼苗期や高温時等、一般的に薬害が起こりやすい条件下での使用は向きません。
また、いちごの品種によっては薬害を生じる恐れが有りますので注意が必要です。
丸和さんの製品ページQ&Aに、果皮が柔らかい品種(章姫)で、冬期~春期の薬液が乾きにくい時期において、完全着色期(完熟期)に果皮に障害が出た事例がありますという記載が有ります。

農薬との相性にも注意が必要になります。
キノン系(例:デラン)、キノキサリン系(例:モレスタン・パルミノ)、ストロビルリン系(例:アミスター・メジャー)、アニリド系薬剤との同時施用は、薬害を生じるリスクが有るとされています。



フーモン(気門封鎖剤・展着剤)
 ※ハダニ類、アブラムシ類、コナジラミ類、うどんこ病に適用有り。
 ※展着剤としても使用できる。
 ※収穫前日まで使う事ができて散布回数に制限が無い。

フーモンは他の気門封鎖剤と比較すると比較的温度条件による薬害リスクは低い印象が有りますが、日本化薬さんの製品Q&Aに、「作物の幼苗期や軟弱徒長苗、高温時など一般に薬害が生じやすい条件での使用は避けてください。ナス果実に薬害が生じた事例がございます。」という表記が有りますので、一応注意が必要です。
また、ストロビルリン系薬剤との同時施用や近接散布は薬害リスクが有るとされています。
これ自体が展着剤としての特徴がありますので、展着剤の混用も推奨していません(防除効果が劣る為との理由)。

ハダニやコナジラミの卵に対しての効果は期待できませんが、アブラムシを含めた幼虫・成虫に対して防除効果が有ります。
但し、他の気門封鎖剤と同様に残効が短いといった特徴があるので、害虫の増殖期や圃場外からの飛び込みが多い時期には、5〜7日間隔の連続散布で使用するか、他剤とのローテーション散布での使用が推奨されています。


粘着くん液剤(気門封鎖剤)
 ※化学殺虫成分を含まない農薬。
 ※大型の天敵昆虫や訪花昆虫に影響がほとんど無い。
 ※展着剤の可溶は必要無し。
 ※収穫前日まで使う事ができて散布回数の制限も有りません。

有効成分にデンプンの一種を用いている安全性の高い農薬になります。
害虫に対する効果は気門封鎖になりますが、薬剤抵抗性を発達させるリスクが低く、既に薬剤抵抗性が出てしまっている微小害虫に対しても直接当たれば速効的に作用するメリットが有ります。

主な登録病害虫は、アブラムシ類、ハダニ類、コナジラミ類、うどんこ病です。
うどんこ病に対しては予防主体となるので、うどんこ病が多発している場合は専門薬の処方が必用になります。

デメリットとしては、気門封鎖剤になりますので、他の薬剤同様に散布液が直接虫にかからないと効果がありません(移行性や浸透性、浸達性は有りません)。
その為、散布ムラが出ないよう丁寧に薬剤散布する必要が有ります。
残効についても他の気門封鎖剤と同様に短いので、害虫の増殖期や圃場外からの飛び込みが多い時期には散布間隔を短くするか、他の農薬とのローテーション散布が必要となります。
虫の多発時期は室温も高温になってくる為、薬剤散布タイミングに注意が必要です。

粘着くん液剤を使う上での注意点としては、ボルドー液を散布した後に粘着くんを散布すると薬害を生じる場合が有りますので、このような場合の使用は避けて下さい。
また、軟弱徒長苗等への使用や、高温時の散布で薬害を起こす場合が有ります。
散布タイミングや温度条件等には注意が必要です。

気門封鎖剤については過去記事でも紹介しています。



天敵昆虫や訪花昆虫に対する影響日数・農薬混用等の参考サイト(まとめ)

天敵昆虫(生物農薬)や訪花昆虫に対する農薬の影響については、メーカーさんのHPや一部の都道府県で防除指針や目安表を提供してくれています。
そういった物がひとつ参考になると思います。

天敵昆虫(生物農薬)・訪花昆虫は使用する環境によって影響の出方が変わる場合が有りますし、普通に水を散水するだけでも死んでしまう事もありますので、農薬に対する影響日数はあくまで目安程度と考えるのが無難です。

農薬における直接的な影響日数だけでなく、残効性の有無によっても使いにくい物が有りますので、天敵昆虫や訪花昆虫について目安表記の無い薬剤については、メーカーさんのサポートに直接お問合せするのが良いと思います。

よく失敗してしまう例として、「粒剤」と「散布剤」とで影響日数が異なる農薬もありますので注意が必要です。



以下、天敵の影響日数等を確認するのに参考になる情報ページをいくつかまとめてみました。

例えばアリスタさんとアグリセクトさんとで目安日数を見比べてみると、薬剤によって影響日数が異なる物が有ります。
迷ってしまう場合は、表記が厳しい方を優先した方がより安全に使用できるのでお勧めです。


アリスタさんのHP上では農薬の影響表が公開されています。

アグリセクトさんのHP上にも天敵生物に対する影響目安表が公開されています。
この他にもマルハナバチに対する影響目安表も公開されています。

都道府県の病害虫防除所等が公開している情報としては、静岡県の病害虫防除所さんがHP上でR4年度版ミツバチ・マルハナバチに対する影響日数を公開しています。

愛媛県では県のR5年版病害虫防除指針を発行しており、16ページ以降に天敵の影響表が公開されています。


他にも色々とインターネット上では紹介記事を目にしますが、メーカーさんや公共機関が絡むような情報を参考にするのが望ましいです。

薬剤の全てが網羅されているわけではありませんので、自分が使いたい薬剤が決まっているのであれば、一番はメーカーさんのサポートに確認するのが良いでしょう。


農薬等の混用散布については、メーカーさん等が提供している混用事例をもとに使用を検討してみると良いと思います。
ただし、農薬の混用使用においては、メーカーさん自体は積極的な推奨していませんので、自己責任での使用となります。
農薬同士の混用は化学反応性の問題も出てきますので、混用における天敵農薬や訪花昆虫に対する影響日数も適用されないと考えておくのが無難です。


メーカーさん等でとっている混用事例は、「物理的に混ぜる事ができた(固まったりしなかった等)+散布時に薬害が見られなかった」というデータが主体になっていると思いますが、色々な条件下で混用試験を行っているわけでは無く、事例数自体も多いわけでは無いので、絶対の物ではありません。

ですので、混用事例があっても参考程度とし、いきなり全面で散布せずに小規模区画での試用を行うのが無難となります…

いちごにおける農薬の混用事例については、例えば日本曹達(株)さんで自社製品の混用事例を公開していたり、全農さんで各主要メーカー商品の事例をまとめた物を公開していたりします。
いずれもインターネット上で確認できる情報です。

日本曹達㈱さん自社混用事例集ページ
全農さん いちごの混用事例表 2022年9月(殺菌+殺虫・殺ダニ)
全農さん いちごの混用事例表 2022年9月(殺虫・殺ダニ+殺虫・殺ダニ)
全農さん いちごの混用事例表 2022年9月(殺菌+殺菌)

こういったページが一応参考になるかと思います。



どうしても化学農薬に頼りたくないという場合

生物農薬を除くと、例えば以下のような物が有ります。

ベリーニームV
ニームケーキ
ニームペレット


いわゆるニーム資材です。

ベリーニームやニームケーキ、ニームペレット等は、インドセダンという木の種子に含まれるアザディラクチンという成分が主となる資材で、「化学農薬・殺虫剤」というくくりではありません。

日本国内では、厚生労働省の「ポジティブリスト制度」において、「ニームオイル」と有効成分「アザディラクチン」は人の健康を損なうおそれのない物質として、ポジティブリスト対象外と指定されています。

そんなニーム(アザディラクチン)ですが、不快害虫対策として農業場面でも使われています。

色々な販社(輸入業者等)が有り内容物や成分値等も様々ですので、あまり安物に手を出す事はお勧めしません。
少なからずサポート体制やクレーム対応を行っている販社を選んで購入・使用される事をお勧めします。


ニーム(アザディラクチン)の効果としては、主として忌避的な効果が有りますが、それ以外にも孵化抑制・食害抑制、脱皮阻害的な作用等もあり、害虫の子孫繁栄に対しても影響を与えます(効果は害虫によって異なります)。
散布して使うベリーニームの場合、オイルによる気門封鎖的な作用も有ります。

既に害虫が出ている場合、化学農薬と同等以上の効果を得る事は難しいですが、ニーム製剤を使う事で効果を発揮できる不快害虫であれば、発生前~低密度の状態であれば、使用メリットを実感できるかもしれません。

独特な臭いは有りますが、化学農薬は使いたくないというような方であれば、このような資材を上手に活用するという手もお勧めです。


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