水田の斑点米カメムシ類に注意しましょう。カメムシ防除農薬についても紹介します。

関東の平地の例ですが、7月中下旬になってくると、水田によっては稲穂が上がってきます。

この頃に注意が必要なのが斑点米カメムシです。

↓カメムシ被害籾
稲 斑点米

関東平地の場合、一概には言えない部分ではありますが、近年の温暖化による害虫の前倒し発生、ヒメトビウンカ防除(縞葉枯病(しまはがれびょう)対策)に重点を置いた空中散布、米価安や資材高騰等の影響等、色々な要因が有るとは思うのですが、本田のカメムシ防除は比較的疎かになっているような感じが見受けられます。
特に野菜主体の地域においてはこの影響は高いような気がします…

果樹場もそうですが、年々カメムシ類による被害が多くなっているような印象を受けます。

水稲斑点米カメムシと果樹カメムシ類については、毎年のように農林水産省や各県の病害虫防除指針、発生予察情報等で注意喚起が出ていますね。

果樹カメムシ類の多発生は水田の斑点米カメムシ類の発生にリンクする事が多い印象があります。
稲斑点米カメムシ類の予察注意報は定期的に更新している地域も有りますのでインターネット等で確認頂けると目安になるかと思われます。



代表的な斑点米カメムシ類の種類について押さえておきましょう。

昆虫には地域性も有りますが、主に関東でよく見聞きするカメムシ類のポイントだけ押さえておきます。


水田における代表的なカメムシはいくつかありますが、大型種の代表格はクモヘリカメムシ、ホソハリカメムシ、イネカメムシ、ミナミアオカメムシです。
インターネットで検索すると画像が色々出てくると思いますので、関心のある方はチェックしてみて下さい。


クモヘリカメムシは、体長約15~17mm程度。
東北南部や関東以西の山間部などで発生しています。
籾(もみ)の加害が大きい厄介な大型カメムシです。

ホソハリカメムシは、体長約8.5~11mm程度。
クモヘリカメムシより小さいですが、イネを加害するカメムシの中では大型種になります。
主に本州以南に分布していると言われてお、被害は関東以西に多いとされています。

イネカメムシは、体長約12~13mm。
イネカッショクカメムシとも呼ばれますが、本州以南の各地で発生が多い大型種です。

ミナミアオカメムシは、体長約12~16mm程度。
本州、四国、九州と幅広い分布をしており、多食性のカメムシです。


それより小さい個体種としては、アカヒゲホソミドリカスミカメやアカスジカスミカメといった個体が体表的です。

アカヒゲホソミドリカスミカメは、体長約6mm程度。
日本全国で発生しているカメムシで、出穂~乳熟期に吸穂します。

アカスジカスミカメは、体長約5~7mm程度。
北陸、関東以北を中心に発生が多いカメムシです。


斑点米カメムシ類の発生は地域性があり、上記以外の斑点米カメムシ(トゲシラホシカメムシ 、オオトゲシラホシカメムシ、コバネヒョウタンナガカメムシ、イネクロカメムシ等のカメムシ)もいます。


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水田本圃の斑点米カメムシ対策でまずやるべき事は、畦畔の雑草対策です。

斑点米カメムシ類は、個体にもよりますが、水田近くの雑木林や、水田畦畔の雑草(スズメノカタビラ、スズメノテッポウ、カズノコグサ、ハルジオン、メヒシバ、エノコログサ、チガヤ、クローバー、スギナ等)から飛来してきます。

畦畔雑草においては、特にイネ科雑草を好みます。


斑点米カメムシ類対策の耕種的防除対策としては、除草作業によってイネ科雑草の出穂を抑える事が大切です。


イネ科雑草の穂は、斑点米カメムシ類が集まる要因となります。

関東各県で推奨している除草のタイミングとしては、おおむね水稲出穂の2~3週間前に1度処理しておき、水稲出穂期頃(草刈りや除草剤散布で処理したイネ科雑草が再び出穂する前)のタイミングに追いかけで除草処理するといった2回の除草作業を行う事で、イネ科雑草の出穂を長期間抑制できるだけでなく、斑点米カメムシ類の水田への飛込(侵入)を低減させる事ができるとされています。


天候やお仕事等の都合で2回の除草処理を行えない場合は、遅くても水稲出穂期の10日前までには除草をしておくと良いでしょう。

出穂期直前の除草は、斑点米カメムシ類の水田への侵入を助長し被害を増加させる要因となりますので、出穂期の10日前頃までには除草作業を完了しておくようにして下さい。




斑点米カメムシ類の農薬防除のポイントについて

農薬を利用した斑点米カメムシ類の「幼虫」を対象とした防除適期は、出穂10~15 日後頃(乳熟期)が良いと言われています。
乳熟期以降、カメムシ類の幼虫密度が高いと斑点米の被害が増える傾向にありますので、この時期の幼虫密度を抑える事が重要です。

成虫」を対象とした防除適期は穂揃期頃になります。
穂揃期に成虫を確認した場合は早めに防除を行って下さい。


カメムシ類の幼虫や成虫の区別がわからん!!という場合は、薬剤選定と散布ポイントだけ抑えておくと良いでしょう。

具体的には、出穂期~穂揃期頃に斑点米カメムシ類を圃場で発見した場合、「液剤農薬」を利用する場合は乳熟期初期(出穂期7日~10日頃)まで、「粒剤農薬」を利用する場合は、出穂期~出穂期7日後頃までに薬剤防除を行うようにしましょう。

粒剤による散布や委託空中散布等で一度消毒したとしても、カメムシ類の発生が見られる場合は、7日~10日の間隔で1、2回追加防除を行うようにして下さい。
収穫が遅い水田の場合、8月中旬以降でも成虫が周辺から飛来してきて被害を受ける事が多々有ります。


穂が上がってきた水田圃場。
遠くから見ると青々としていて綺麗な印象を受けますが…
稲 斑点米圃場

無対策圃場の場合、近付いて稲を良く見てみるとカメムシの被害痕が目立ちます。
稲 斑点米②



斑点米カメムシ類防除で使える農薬について

水稲殺虫殺菌剤等は、JAのみでしか扱えない専門商品もありますが、こちらでは代表的な薬剤をいくつかピックアップしてみようと思います。

農薬の登録内容は不定期に登録の変更や登録の抹消が起こる場合が有りますので、ご利用になる際は、最新の登録内容を確認してから使うようにして下さい。
以下の登録内容は簡略表記ですので、各病害虫の詳細登録内容は個別にチェックするようにして下さい。
以下は2020年7月現在の登録薬剤です。


●MR.ジョーカーEW
登録害虫:イナゴ類・ウンカ類・カメムシ類・コブノメイガ・ツマグロヨコバイ・フタオビコヤガ
IRAC:3(A)
→現在、ジョーカーシリーズは廃盤となっています。

●アルバリン粒剤
登録害虫:イネドロオイムシ・イネミズゾウムシ・ウンカ類・ツマグロヨコバイ・ニカメイチュウ
IRAC:4A

●アルバリン顆粒水溶剤
登録害虫:ウンカ類・カメムシ類・ツマグロヨコバイ
IRAC:4A

●イモチエースキラップ粒剤
登録病害虫:いもち病・ウンカ類・カメムシ類・変色米(アルタナリア菌・カーブラリア菌)・穂枯れ(ごま葉枯病菌)・紋枯病
IRAC:2(B)/FRAC:11

●エクシードフロアブル
登録害虫:イナゴ類・ウンカ類・カメムシ類・ツマグロヨコバイ
IRAC:4C

●エルサン乳剤
登録害虫:イネドロオイムシ・イネハモグリバエ・イネヒメハモグリバエ・カメムシ類・サンカメイチュウ第3世代・ツマグロヨコバイ・ニカメイチュウ第1世代・ニカメイチュウ第2世代・ヒメトビウンカ・フタオビコヤガ
IRAC:1(B)

●キラップジョーカーフロアブル
登録害虫:イナゴ類・ウンカ類・カメムシ類・コブノメイガ・ツマグロヨコバイ・フタオビコヤガ
IRAC:2(B)・3(A)
→現在、ジョーカーシリーズは廃盤となっています。

●キラップフロアブル
登録害虫:イナゴ類・イネドロオイムシ・ウンカ類・カメムシ類
IRAC:2(B)

●キラップ粒剤
登録害虫:ウンカ類・カメムシ類
IRAC:2(B)

●スタークルメイト液剤10
登録害虫:ウンカ類・カメムシ類・ツマグロヨコバイ
IRAC:4A

●スミチオン乳剤
登録害虫:アブラムシ類・アワヨトウ・イネシンガレセンチュウ・イネツトムシ・イネドロオイムシ・イネハモグリバエ・イネヒメハモグリバエ・カメムシ類・サンカメイチュウ第3世代・ニカメイチュウ・ニカメイチュウ第1世代・ニカメイチュウ第2世代・ヒメトビウンカ・フタオビコヤガ
IRAC:1(B)

●ダントツ水溶剤
登録害虫:イネアザミウマ・イネドロオイムシ・ウンカ類・カメムシ類・ツマグロヨコバイ
IRAC:4A

●ダントツ粒剤
登録害虫:ウンカ類・カメムシ類・ツマグロヨコバイ・ニカメイチュウ
IRAC:4A

●トレボンEW
登録害虫:イナゴ類・イネドロオイムシ・イネミズゾウムシ・ウンカ類・カメムシ類・コブノメイガ・ツマグロヨコバイ
IRAC:3(A)

●トレボンMC
登録害虫:イナゴ類・イネドロオイムシ・ウンカ類・カメムシ類・コブノメイガ・ツマグロヨコバイ
IRAC:3(A)

●トレボン乳剤
登録害虫:イナゴ類・イネドロオイムシ・イネミズゾウムシ・ウンカ類・カメムシ類・コブノメイガ・ツマグロヨコバイ
IRAC:3(A)

●フジワンラップ粒剤
登録病害虫:いもち病・ウンカ類・カメムシ類・ニカメイチュウ・稲こうじ病
IRAC:2(B)/FRAC:6

●ブラシンキラップフロアブル
登録病害虫:いもち病・ウンカ類・カメムシ類
IRAC:2(B)/FRAC:U14・16.1

●ブラシンジョーカーフロアブル
登録病害虫:いもち病・ごま葉枯病・もみ枯細菌病・ウンカ類・カメムシ類・コブノメイガ・ツマグロヨコバイ・稲こうじ病・ 内穎褐変病・変色米(アルタナリア菌・(エピコッカム菌・カーブラリア菌)・穂枯れ(ごま葉枯病菌)
IRAC:3(A)/FRAC:U14・16.1

●ブラシンダントツフロアブル
登録病害虫:いもち病・ごま葉枯病・イナゴ類・ウンカ類・カメムシ類・ツマグロヨコバイ・穂枯れ(ごま葉枯病菌)
IRAC:4A/FRAC:U14・16.1

●ベストガード水溶剤
登録害虫:ウンカ類・カメムシ類・ツマグロヨコバイ
IRAC:4A

●ベストガード粒剤
登録害虫:ウンカ類・カメムシ類・ツマグロヨコバイ
IRAC:4A

●アミスターアクタラSC(JA品目)
登録病害虫:いもち病・ウンカ類・カメムシ類・ツマグロヨコバイ・紋枯病
IRAC:4A/FRAC:11

●アミスタートレボンSE(JA品目)
登録病害虫:いもち病・ウンカ類・カメムシ類・ツマグロヨコバイ・紋枯病
IRAC:3(A)/FRAC:11


混合剤やJA品目、粉剤農薬等を含めると上記以外の薬剤も有ります。
斑点米カメムシ類登録のある薬剤(液剤・粒剤)を中心にピックアップしている為、その他の薬剤は一部割愛していますが、曇天や降雨が続くような年は、いもち病の発生にも注意が必要です。
関東平地で7月頃に葉いもち病が見られるような年は、穂いもち病への移行に注意が必要です。

また、本格的な夏場を迎え気温が上昇してくると、いもち病から紋枯病へと病害がシフトしていきます。

いもち病と紋枯病の両方をカバーできる商材は、一般商店向けの薬剤では限られてしまいますが、ブラシンバリダゾルモンカットラブサイド20フロアブルといった薬剤もありますので、状況に合わせて薬剤を選択してみて下さい。


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まとめ

今回は水田の問題害虫、斑点米カメムシ類にフォーカスを当てて、水田カメムシ類に対する種類や水田畦畔の除草対策時期(耕種的防除方法)、対応農薬について紹介しました。

斑点米カメムシ類の種類や活用されている農薬については地域性があると思います。
薬剤の効果不足の話をたまに伺いますが、多くは散布タイミングがずれている事が原因です。
取りこぼしや再発生はつきものですので、被害が多い圃場についてはある程度コストがかかってしまう現状があります。

米価は野菜のような相場の跳ね上がりがほとんど期待できない作物です。
業者等の古米のストック状況によって相場ダウンも否めません。

取れ高がおおむね予測できてしまう為、極力投資は避けたいという作物になっていると思います。

とはいえ、斑点米が多ければ米価等級は下がりますし、色選機を使ってはじいたとしても、出せる米量が減ってしまいますので結果的に減収になってしまいます。

ウンカ類に重点を置くか、カメムシ類に重点を置くか、チョウ目害虫に重点を置くか、病害に重点を置くか………
全部できれば言う事なしですが、コストや作業性を考えると実際はできて1つか2つでしょう。

それによって防除の軸が変わってくると思いますが、昨今の天候事情などを考えると、よほどの事が無い限りカメムシ被害は減らないと思われますので、水田圃場をよく観察して防除を検討して頂ければと思います。



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“水田の斑点米カメムシ類に注意しましょう。カメムシ防除農薬についても紹介します。” への2件の返信

  1. 水稲も、ウンカ対策、カメムシ対策など害虫対策が大変です。
    我が家の水田も、このページの最初にあるようなカメムシと思われような被害を受けています。7月末にスタークル豆粒剤を散布したのですが、被害を「ゼロ」にすることは難しいようです。
    ただ、田んぼには表層剥離、アオミドロが発生していたため、薬剤の拡散には不安が残ります。
    アオミドロ対策もやらねばと思っています。
    カメくんの姿は、殆ど目えませんが、トレボンでも散布しようか思っています。
    よいページに巡り合えました。

    • 芹澤様
      コメント頂きましてありがとうございます。

      コロナ渦、外食産業等の影響で米相場も厳しい中、水稲を栽培されている生産者の方々には作付け頂いて感謝致します。

      何も生育害となる障害が無ければ良いのですが日本の環境下では病害虫対策が悩みどころですよね。
      おそらくスタークルを使っているからカメムシもある程度抑えられているというのも有ると思いますが、カメムシ対策については水田に森林や雑草地近すぎるという場合は別として、やはり畦畔雑草の対策・タイミングが重要となります。
      後追いの散布は大変だと思いますが良いお米を作って頂ければ幸いです。

      アオミドロについては初期除草剤の使用が効果的です。
      モゲトン成分を含む製品やジメタメトリン成分を含む製剤で処理をしておくと一発除草剤を使う頃にはある程度綺麗な状態をキープできます。
      初中期一発剤の中にはピラクロニルといった成分等、アオミドロや表層はく離を抑制するような成分も有ります。
      体系で処理しておくと恐らくアオミドロの類で困る割合は減るのではないかと思います。

      今さら聞けないモゲトン剤の特徴と使い方。藻類発生についての原因・基礎知識について

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